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 北朝鮮が7発の弾道ミサイルを発射した7月5日の数日前、読者のAさんから編集部にこんなご意見が寄せられました。

「以前テポドンが日本の上空を通過した時、私はまだ小学生であったと記憶しています。とても恐怖を感じました。
 憲法9条を改正しようと言う動きの根本的な原因の一つに、このような恐怖に対して、9条を持つ私達は無視するか、言葉だけの抗議をするしかないということがあると思います。『マガジン9条』は、北朝鮮がテポドン2号を発射準備している現在進行中の事実とどのように向き合うのか、期待しています」


 Aさんのご指摘の通り、9条を変えてはいけないと主張する側にはなんとなく、北朝鮮の「脅威」から目をそむけてしまう傾向がありました。
 しかし、現実の問題として、2度にわたってテポドンを発射し、拉致事件や不審船うろうろ事件をおこし、核保有国を表明している隣国に対して、これを「脅威」「不安」と感じないとしたら、それこそ不自然です。

 北朝鮮の「脅威」を正面から受けとめる。その「脅威」に対して、軍隊を持ったほうが安全なのか、持たないほうが安全なのかをはっきりさせる……Aさんに「期待」されるまでもなく、この態度決定は必要です。

 新聞報道によると、「北朝鮮はノドン(中距離弾道ミサイル)を約200発、スカッド(短距離弾道ミサイル)は約600発実戦配備している」と在韓米軍は分析しているそうです。

 ノドンもスカッドもトレーラーに積んで移動しながら発射するために、いつ、どこから発射するのか、予測はむずかしいと言われています。かりに予測できたとしても、ノドンやスカッドを100発くらい立てつづけに発射されたら、そのすべてを迎撃ミサイルで射ち落とせるはずはありません。
 そこで、「発射される前に敵ミサイル基地を攻撃してもいいことにしよう」という考え方が政府内に浮上しています。これが現実化したら、それこそ全面戦争になってしまいます。

 7月9日、今度はインドが弾道ミサイルの発射実験を行いました。中国の弾道ミサイルに対抗するための抑止力だそうです。

 抑止力を名目に、いまや、アジアの各国が弾道ミサイル配備に狂奔しています。当然、その次にくる状況はそれらの弾道ミサイルに核弾頭をつける競争でしょう。
 9条を変えて「普通の軍隊」を持つということは、このようなおそろしくも不毛なミサイル競争にわが国も参加していくということなのです。

 専守防衛の9条があるために、わが国は攻撃用ミサイルを所有していません。わが国には他国をミサイル攻撃する力はありません。
 軍事ジャーナリストの前田哲男さんは、この貴重な力(他国を攻撃できない力)を活用して、北朝鮮、中国、インド、韓国、ロシア、アメリカ(在日、在韓米軍)などの多国間で、ミサイル発射凍結条約が結ばれるように働きかけていく調停外交、平和外交こそが、わが国とアジア諸国の国民の安全を守るもっとも確かな手段であるとおっしゃっています(東京新聞・7月8日)。

 武力に頼らずにアジアの危機を解決しようと思ったら、この考え方しかありません。むろん、この合意はかんたんにはつくれないでしょう。しかし、このような外交努力以外に、どんな解決の道があるのでしょうか。げんにヨーロッパの各国は、EUという共同体をつくってミサイルの恐怖から解放されています。道は険しくても、歩むべき道は他に見つからないのです。

 以上が、私たち『マガジン9条』編集部の「北朝鮮のミサイル」に対する態度です。

 
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