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雨宮処凛がゆく!(053)

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あまみや・かりん北海道生まれ。愛国パンクバンド「維新赤誠塾」ボーカルなどを経て作家に。自伝『生き地獄天国』(太田出版)のほか、『悪の枢軸を訪ねて』(幻冬舎)、『EXIT』(新潮社)、『すごい生き方』(サンクチュアリ出版)、『バンギャル ア ゴーゴー』(講談社)、『生きさせろ!〜難民化する若者たち〜』(太田出版)など、著書多数。現在は新自由主義の中、生活も職も心も不安定さに晒される人々(プレカリアート)の問題に取り組み、取材、執筆、運動中。非正規雇用を考えるアソシエーション「PAFF」会員、フリーター全般労働組合賛助会員、フリーター問題を考えるNPO「POSSE」会員、心身障害者パフォーマンス集団「こわれ者の祭典」名誉会長、ニート・ひきこもり・不登校のための「小説アカデミー」顧問。「週刊金曜日」「BIG ISSUE」「群像」にてコラム連載。雨宮処凛公式サイトhttp://www3.tokai.or.jp/amamiya/

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怒濤のゴールデン・メーデー・ウィーク!!
出会いと別れとデモと戦争。の巻

札幌のカッコよすぎる真のパンクスさんたちと。

 嗚呼、まだ素晴らしい日々の余韻に浸っている。本当に、本当に、ありがとう。本当に、本当に楽しかった。4月29日から5月5日にかけての怒濤の日々だ。私は1人で勝手にインディーズ系メーデー全国ツアー中。そして5月4、5日は幕張メッセで「9条世界会議」!

 さて、なぜ勝手にインディーズ系メーデーの「全国ツアー」をしていたのか。それは「自由と生存のメーデー」の実行委員の人々との会話がきっかけだ。去年まで、インディーズ系メーデーは福岡や松本など、日本でも数カ所しか開催されていなかった。それが横の繋がりを持ち始め、日本各地で同じような人々が同じようなことに怒って「生きさせろ!」とばかりに立ち上がっていることを知った。これはきっと、全国にもっともっと沢山の「怒れる人々」がいるに違いない。もしどこかでそんな人が立ち上がり、声を上げたら、みんなで押し寄せて勝手に応援に行こう、そう誓っていたのだ。普通の「労働者」というくくりではすくいあげられない人々のための、そこからこぼれ落ちてしまう人々のためのメーデー。で、今年のメーデー準備の段階で、全国各地から「自分の地元で新手のメーデーをする」という声が届き始めた。全国14カ所からだ。これは勝手に応援に行くしかない!

 そう決めた私は全国ツアーを決定。同時に「自由と生存のメーデー」の実行委員会でも「全国キャラバン隊」が結成され、全国のメーデーを回ることとなった。この時点で、みんな誰が誰だかさっぱりわからない。ほとんどの人が会ったこともない人たちで、「自由と生存のメーデー」の存在を知り、連絡をくれた人たちだ。こんな形でプレカリアートは「増殖」し「連結」する。そうして私のまるで「出会い系」のようなツアーが始まった。ちなみになんと、ヨーロッパのプレカリアートメーデーとも連携を取り、イタリア・ミラノとドイツ・ベルリンのメーデーにもこの界隈の人々が「派遣」された。世界レベルの「連結」だ(ちなみに派遣された1人はドイツのデモで混乱に巻き込まれ、数日間行方不明になり、帰国後のメーデー開催自体が危ぶまれていたものの無事帰国)。

札幌初のサウンドデモ!

 そして4月29日、ツアー初日のメーデーは札幌の「自由と生存の連帯メーデー」!
 大通り公園から午後3時、デモ隊が出発!
 北海道初のサウンドデモだ。参加した人々は地元のパンクスさん、障害を持つ当事者の人々、フリーター、派遣社員、正社員など立場も世代も超えて、一見すると何の集まりだかさっぱりわからないが、声を揃えて叫ぶのは「生きさせろ! 」。繁華街をゆくサウンドデモは札幌の人々を驚かせ、デモ隊の人々は踊り、歌う。デモ後は感動的な「世界メーデーのための札幌宣言」が採択され、その後は遅くまで交流会が開かれたのだった。初めて出会う人々と初めての場所でサウンドデモをし、交流する。なぜか全然初対面の感じがしないのが不思議だ。

福岡フリーター/貧民メーデー出発直前。こいつらの前ではもはや私が地味・・・。

 そして5月1日は福岡「フリーター/貧民メーデー」!
 昼近くに空港に着くと、数日前東京を出発し、名古屋の「LOVE&ビンボー春祭り」、熊本の「KYメーデー」を回ってきた全国キャラバン「黄金の旅団」メンバーが福岡空港で待ってくれていた(しかも全員着ぐるみで・・・)。フリーターユニオン福岡主催のこのメーデーに参加するのは2回目だ。今回は「グローバル資本企業ドラム攻撃ツアー 雑音デモ行進!」。常々プレカリアート運動の最先端を突っ走ってると思っていた福岡だが、今回も凄かった。とにかく衣装が素晴らしいのだ。マクドナルドのドナルド、おなじみ「武装より女装」のドラァグクイーン、お猿やアヒル、ハムスター、ガイコツなどなどの着ぐるみ、柔道着などなど。そしてみんながマクドナルドやスタバのマークの上から「×」を書いたドラムを持ち、会場の公園まで行進する。手に手に太鼓を鳴らしながら、ピアニカの音楽に乗って。「貧民反乱」「惰民礼讃」の旗、「貧民の貧民による貧民のための政治」というプラカード、大きな猫パペット。そして公園で太鼓のリズムに合わせてみんなで叫ぶ。「フリーター万歳! ニート万歳! ヒキコモリ万歳! 非国民上等! 不安定上等! 面接やめろ! こき使うな! お前がお茶汲め! お前が掃除しろ! 時給を上げろ! 無限に上げろ! 路上解放! 路上で踊れ! 」。コールに合わせてみんなが踊り出す。そうしてとうとうデモに出発! と、公園から出ようとしたところで、物陰から100人くらいの警官が飛び出してきて、いきなり包囲された。で、公園から出してくれないのだ! なんで? ヘンなカッコしてるから? つか、それって言論・表現の自由への思いっきりな介入じゃん! メーデーだぞ! 叫んで、訴えて何が悪い!

弾圧されるドナルド。福岡って、道歩くだけでも許可制?

 公園出口で抗議するも、「道交法違反をするおそれがある」っていうフザけた理由で一向に埒があかない。「道交法違反をするおそれがある」って理由でデモ弾圧って、福岡県警には日本国憲法が通用しないのか?
 こういう「自由」に介入する動きに屈すると、トンデモなく息苦しい世の中になるに決まってる。
 福岡デモが弾圧された翌日には、岐阜に移動。「自由で気ままなメーデー」。地元の若者たちが集まり、鍋をつつきながらまったりと語る楽しいメーデーだった。岐阜青年ユニオンや「GHA(岐阜変態アソシエーション)」メンバーも参加し、それぞれの仕事の話をしては「それってカニコーじゃん! 」と突っ込み合う。ちなみに「それってカニコー」は、「それはまるで蟹工船のような奴隷労働ですね」というような意味だ。流行らそう。

 さて、その翌日、3日は昼に岐阜で講演を終えた後、新幹線で東京に移動。デモ出発ギリギリに大久保区民センターに到着すると、目の前には巨大パペット、旗、のぼり、プラカード、そしてもう最後まで見えないほどの人の山、山、山。デモ前の集会には550人以上が集まって、会場に入り切れなかったと誰かが興奮気味に伝えてくれる。なんだかみんな異様にテンションが高く、私が「よこせ! よこせ! 」と叫び出すと、全員が一斉に声を張り上げる。そうして午後6時、デモ出発!

東京「自由と生存のメーデー」、燃え尽きたぜ。

 一台目のサウンドカーではみんな踊り狂い、2台目の車の後ろで私たちが叫び続ける。ずっと立ち上がれなかった、声をあげることもできなかった、時には「自己責任」と自分を責め、自分を傷つけてきたかもしれない人々が、今、新宿の街を大群になって踊り、喚き、叫ぶ。やたらと反応のいい街頭の人々。出発から2時間後、550人だったデモ隊は、なんと1000人になっていた。解散場所はアルタ前!40年ぶりのアルタ前解散!

 ああ、あの感動をとても言葉では伝えられない。だけど確かにあの日、私たちはあの場所で、「自由と生存」を完全に自分たちのものにしていた。「自由」と「生存」を引き換えにすることなく。この日のデモの模様はこちらこちらで公式サイトにもいろいろ写真とかがあります。

 ああ、もう書くスペースがなくなってしまったので「9条世界会議」は次回に書こう。ただ、言っておくと、イラク帰還兵の人と話して、「貧困」と「戦争」の関連をつくづく感じさせられた。イラク戦争に行った現在26歳の彼は言った。「一番の徴兵制は貧困だ」と。だからこそ私たちは、「自由と生存のメーデー」でも「反戦」を大きく掲げた。

 さて、そんなメーデーツアーだが、実はまだ終わっていない。5月17、18日には大阪、長居公園にて「大輪祭り」が開催される。私も18日の「P8」に行く予定だ。17日の夜から行ってみんなと交流したいと思っている。どこかで会おう!

雨宮さんの興奮と感激がそのまま伝わってくるか今回のコラム、
いかがでしたか?まだまだ「連結」し「増殖」していきそうなこの動き、目が離せません。


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