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教えて塾長!伊藤真の憲法Q&A

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いとう・まこと 1958年生まれ。81年東京大学在学中に司法試験合格。95年「伊藤真の司法試験塾」を開設。現在は塾長として、受験指導を幅広く展開するほか、各地の自治体・企業・市民団体などの研修・講演に奔走している。著書に『高校生からわかる日本国憲法の論点』(トランスビュー)、『中高生のための憲法教室』(岩波ジュニア新書)ほか多数。法学館憲法研究所所長。法学館のホームページはこちら。

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第1回「衆議院の選挙制度」

私たちの生活や、身の回りの出来事、新聞やテレビのニュースで話題になっていることなどを題材に、日本国憲法の視点から、今ある問題や疑問を考えていく新シリーズです。第1回のテーマは「衆議院選挙の選挙制度」。政治の混迷が続き、すぐにでも解散総選挙して民意を問うべき状況だと思いますが、選挙は未だ行なわれず・・・。しかし、いやでも今年の9月には任期満了となり、総選挙は行なわれます。ということで、編集部では、4つの素朴な疑問を塾長にぶつけてみました。

まず大前提として、日本国憲法前文と憲法第1条に書かれている「国民主権」の意味は、理念的には「政治の主人公は私たち国民である」ということ。主権者である国民が国政に参加し、民主政治を実現するためには、参政権は不可欠の基本的権利。その参政権には、選挙権、被選挙権、国民投票権などがありますが、中でも特に重要なのが、選挙権です。憲法は、間接民主主義を原則としているので、多くの国民にとって、政治に直接かかわることのできる数少ない機会が、選挙における投票活動になります。しかし、その理念からは、遠くはなれたところにあるのが、今の「選挙」に対してのイメージではないでしょうか? 政治不信が広がると、投票率が下がる、というのはその表れかもしれません。

Q1「衆議院議員選挙(総選挙)はいつ行なわれるの?」

A衆議院の総選挙は、任期(4年)が満了した時と内閣が解散権を行使したときに行なわれます。前の選挙の時に争点にならなかった国政上の重要問題が新たに生まれた時などには、国民の意志を問うのが民主主義に適します。憲法が衆議院の解散を認めているのは、その趣旨です。

憲法第45条)
衆議院議員の任期は、四年とする。但し、衆議院解散の場合には、その期間満了時に終了する。

Q2「解散は、本当に国民のために行なわれているの?」

A前回の「郵政解散」でもそうですが、解散は現実には民意を活かすために行使されるよりも、いつ解散したら選挙で与党が有利になるかという党利党略を重視して行なわれてきました。それが当たり前のようになってしまったせいか、今回もマスコミを含めて、党利党略に絡めた解散/選挙日程を批判していないことは、問題です。

Q3「衆議院の選挙区制は小選挙区制ですが、
小選挙区制の特徴は、憲法の理念や目的にあっていますか?」

A小選挙区制では、選挙区ごとに一人しか当選しませんから、少数派の声が国政に繁栄しにくくなります。例えば、仮にすべての選挙区で。A党が51%、B党が49%の得票率を得たとすると、すべての選挙区でA党の候補者が当選して、議席を独占することになります。B党を支持する有権者の49%の声は反映されません。

 その後、A党が政権を運営したものの国民から評価されず、次の選挙の際には、49%しか得票できなかったとしたら、たった2%がB党支持に回っただけで、政権がB党に交代する事になります。特定の政治グループが権力の座に居座ることは、権力の集中と乱用を招きますから、このように政権交代を起こしやすい小選挙区制は、憲法からもそれなりに評価できるものです。

 しかし、個人の尊重(憲法13条)の理念からは、すべての人が政治的価値においても尊重されるべきですから、社会の多様な意見をそのまま国政に反映させることが望まれます。それができない小選挙区制は、問題があります。

 ただ、現在、日本で取入れられている小選挙区制は、単純な小選挙区制ではなく、小選挙区/比例代表並立制です。ギリギリであれば、落選しても復活当選できます。また、単独で比例代表として立候補できます。それらの点では、少数政党にも配慮されています。

Q4「参議院と衆議院では、投票方法がなぜ異なるのですか?」

A 連邦制をとらない国における二院制は、権力を分散して暴走を防ぐ権力分立の要請だけでなく、民意を多角的に反映させることに存在意義があります。小選挙区制の衆議院と異なり、参議院は大選挙区制(定数2人以上)といえるところも多く、少数派政党も議席を得やすくなっています。比例区も衆議院のようなブロックがなく全国での得票に比例するため、比較的、少数派政党にも議席が配分されやすくなっています。こうして衆議院とは異なったかたちで民意を反映させ、参議院に独自性を発揮させることが憲法上も期待されているのです。

 こうしてみると衆参の「ねじれ現象」はむしろ、参議院が多角的な民意を反映した結果だとみることができます。

これまでも選挙については、「伊藤真のけんぽう手習い塾」第四十二回「統一地方選挙」
第四十九回「参議院通常選挙」でも取り上げてきましたので、そちらもご覧ください。
さて、これからこのコラムでは、様々な問題や疑問について、塾長に質問をしていきます。
読者のみなさんからの質問もどしどしお寄せください。お待ちしています!
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