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フリーランスライター 畠山理仁の「永田町記者会見日記」~首相官邸への道~【第9回】

畠山理仁●はたけやま みちよし/1973年愛知県生まれ。早稲田大学在学中の1993年より週刊誌を中心に取材活動開始。1998年、フリーランスライターとして独立。興味テーマは政治家と選挙。米国大統領選、ロシア大統領選、台湾総統選など世界の選挙も取材。大手メディアが取り上げない独立系候補の活動を紹介した『日本インディーズ候補列伝』(大川豊著・扶桑社刊)では取材・構成を担当した。 昨年9月18日、記者クラブ加盟社以外にも開放された外務大臣記者会見で、フリーの記者として日本で初めて質問。今年1月22日には、東京地検からの事情聴取直後に開かれた小沢一郎・民主党幹事長の記者会見を、iPhoneを使ってゲリラ的にインターネットで生中継し注目される。twitterでは、 @hatakezo で日々発信中。

2010年3月31日@hatakezoのTwitter

「Web連載『首相官邸への道』の存続を問うreply募集、我ながら名案だと悦に入っていたが、そもそも連載を読んでいない人の意見は聞けない!『究極の手前味噌!』と自分を叱る。原口大臣( @kharaguchi )、ごめんなさい、なう。」
(フリーランスライター・畠山理仁)

 私は前号の最後に「この連載の存続に関する皆さんの意見をTwitter上で聞きたい」と書いた。
 幸いなことに、多くの皆さんから「まだまだ完全にオープンとは言えない。続けるべきだ」「単純に楽しい。もっと読みたい」などなど、連載の存続を後押しする意見をいただいた。本当にありがたいことだ。
 だが、好意的な意見ばかりを読んでいるうちに気がついた。そもそもこの連載を「つまらない」と思っている人は読んでもいないから意見が来るはずがない(笑)。「究極の手前味噌」だと深く反省した。
 もう一つ、私が「究極の手前味噌!」と書いたのには理由がある。
 これに先立つ3月29日、私はTwitter上で原口一博総務大臣( @kharaguchi )に対し、「明日の原口一博総務相の閣議後会見は9:40頃から参議院内第41委員会室前。フリー記者も参加できる会見は今のところ予定なし。記者会見の開放状況評価、総務相会見はA〜Eのうち何ランク?もしAなら『究極の手前味噌』と笑いながら怒ります。」と挑戦的な言葉を投げかけていたからだ。
 でも、実際は違った。原口大臣は30日、国会内での会見を終えた後、フリー記者も参加できる総務省会見室で2度目の会見を開いたのだ。私は自戒の意味を込めてこの言葉を使い、原口大臣に謝罪した。
 これまで記者会見のオープン化や記者クラブの話題は、一般国民には馴染みが薄かった。「業界の内輪話」ととらえられることがほとんどだった。逆に言えば、この連載を辛抱強く読んで激励の言葉を下さる読者がいるということは、これまで記者クラブメディアが報じてこなかった「裏話」に興味を抱く人が増えてきたということだろう。
 その点では、記者クラブの壁の向こう側をのぞける場所までたどり着いた私が連載を続けていくことにも、少しは意味があるような気がする。
 そんなわけで、自らの恥ずかしい過ちも、謝罪に至る過程までも、全てをフルオープン。そんな感じでこの連載を続けたいと思います。
 手前味噌であることは重々承知しています。どうかお付き合いを。

2010年4月1日@内閣府会議室

「本当はすべての国民のみなさんと質疑応答ができれば、それがベストだと思います」
(枝野幸男行政刷新担当大臣)

 この日の会見では、フリージャーナリストの岩上安身さん( @iwakamiyasumi )が「記者会見をオープンにしていくことの意義」について改めて枝野大臣に聞いた。それに対する大臣の答えがこれ。
 枝野大臣は続けて「1億3千万のみなさんとできるはずがないわけなので、ジャーナリズムに関わっているみなさんから、そのかわりに質問していただいている」とも答えた。
 この答えでもわかると思う。記者会見とは、決して会見に参加できる記者クラブの記者やフリージャーナリストたちのためのものではない。「すべての国民のためのもの」なのだ。
 これまで記者クラブメディアだけに独占されていた情報が、記者会見のオープン化によってすべて国民の目にさらされる時代が来た。
 インターネットでの記者会見生中継は、国民がリアルタイムで政治家の生の言葉に触れることを可能にした。また、フリーランスの記者達がTwitterやUstreamなどのツールを活用し、ユーザーからの意見をリアルタイムに反映してすぐに質問をするといった状況も生まれている。
 どこの誰がどんな質問をしたのか。政治家、あるいはその後ろにいる官僚はどう答えたのか。それらすべてが「ダダ漏れ」される。もちろんそこでは国民の「騙されないための目」も試される。この健全な緊張関係は、日本の民主主義にとって決してマイナスではないと思う。
 だいたい、いままでみんな納税者なのに、選挙の投票率低すぎたよね?
 これまでは「投票のための判断材料がなかった」と言えたかもしれない。でも、これからはそんな言い訳は通用しませんぞ。

2010年4月6日@文部科学省会見室

「文部科学省の記者室(322.65平方メートル)と会見室(110平方メートル)の賃料は、年間9千436万4028円。このコストについて大臣のご見解をうかがえればと思います」
(フリーランスライター・畠山理仁)

※Ustreamで中継しました。録画映像はこちらで視聴できます。

 昨年9月の政権交代後、私は何度か川端達夫文部科学大臣の記者会見への参加を申込み、断られてきた。大臣や役所に断られたのではない。会見の主催者である記者クラブが私の参加を認めなかったのだ。
 実は川端大臣は就任後まもなく、記者クラブに対して「クラブ以外にもオープンにしてほしい」と申し入れをしている。ところがクラブ側は「クラブ以外の記者を参加させるかどうかはクラブ幹事社が判断する。従来通りの運用で行う」とその要求を突っぱねてきた。
 それでも今回、私が参加を申し込んだのには理由がある。3月30日に総務省が公表した「記者会見の開放状況調査」で、文部科学省が「A」(フリーの記者も一定の手続きを経て参加でき、質問権もある)とされた14府省庁の中に入っていたからだ。
 私はこの結果に疑問を持った。建前上は「A」でも、実際には幹事社の了解が得られなかったり、国会内での会見にはフリーランスの記者が事実上参加できない実態がある。「幹事社の了解」だってクラブ側のさじ加減一つ。これで本当にオープンと言えるだろうか?
 この点については、調査を命じた原口一博総務相も私が記者会見でした質問に対し、「同じAでも濃淡がある」と認めている。つまり「A=すべてのメディアに対して開かれている」という意味ではない。
 ところが今回、私が改めて記者クラブに参加申請をしたところ、驚くほど簡単に許可された。総理会見がオープンになった影響だろうか?
 せっかくなので、私は記者クラブの記者が絶対に聞かない質問をした。実際の質問でも引用元を明らかにしたが、上記の数字は雑誌『SAPIO』誌上で、ジャーナリストの上杉隆さん、佐々木奎一さんらが試算したものだ。それに対する川端大臣の答えは次の通り。
「正直申し上げて、コストというよりも、御協力をいただいていることに対して便宜供与を提供しているものだと思っています。値段が高い安いということはあまり意識したことはございません。記者会見も我々としてはどうあるべきかという議論の中で、一応、届けをいただいて来ていただいていいというところまでで、それ以降のことに関してはまだ検討中。今の話も含めて課題だとは思っております」
 ちなみに今月の記者クラブの幹事社は読売新聞。参加を認めてくれて、ありがとうございました。

2010年4月6日@環境省庁議室

「クラブのみなさんがいらっしゃいますので、なかなかそこは説明しづらいんですが…」
(小沢鋭仁環境大臣)

※Ustreamで中継しました。録画映像はこちらで視聴できます。(その1その2

 4月6日、ようやく環境省でもフリーランスの記者が参加できる記者会見が開かれた。この会見の主催は大臣。名称は「一般会見」だ。
 小沢鋭仁環境大臣は昨年9月、記者クラブを対象にした記者会見で「会見のオープン化」をクラブ側に呼びかけていた。また、秘書官に金融庁・亀井静香大臣のオープンな会見を視察させるなど、この日のために着々と準備を進めてきた。オープン化には前向きな大臣だといえる。
 この日の会見には、これとは別に週二回の会見にも参加しているクラブ記者たちも参加(フリーランス11名、記者クラブ13名)。その中で私は「なぜ会見のオープン化に半年も時間がかかったのか。クラブ側とどのようなやりとりがあったのか」と大臣に説明を求めた。大臣には申し訳ないが、仕方がない。
 大臣は上記の言葉の後にこう続けた。
「私もクラブ幹事のみなさんと議論もさせていただきました。しかし、現状のクラブの運営が相当オープンであるというお話で、それだったらそれで私もいいのではないかと、ずっと、そうも思っておりました。マスコミ報道等でさらにオープンにという要望がありましたので、じゃあ、私も自分の判断でやらしていただいたほうがいいのかなあと」
(参考:産経新聞【閣僚記者会見「開放」進む ネットから大臣へ“ヤジ”、変化に伴う混乱も】)。
 大臣がハッキリ言わなかったので言う。実は私は環境省の記者クラブ幹事社と何度も連絡を取ってきた。明確に参加を断られたこともあれば、「もともとオープンなんですが、参加基準を今、クラブ各社で調整中。それが固まるまではもう少し参加を待っていただきたい」とやんわり断られたりもした。事実上、参加できない状態が続いていたのだ。
 もっとも、記者クラブの記者にも言い分がある。「大臣が“オープン化”の概念を詳しく説明してくれなかった。それではこちらも答えようがない」。
 いずれにせよ、一つ情報へのアクセスの扉が開いたことには間違いない。当たり前の国へ、また一歩前進。

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「記者会見は、全ての国民のためのもの」
この当たり前のことについて、
主権者である私たちが、もっと自覚して、
オープン化されつつある大臣記者会見を楽しみ、利用し、
関心を持ち続けること、が健全な民主主義の一歩だと思う。
そのためにも、畠山さん、これからもよろしくお願いします!

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