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「マガ9学校 第1回」概要と参加者の声(基調講演)「日本国憲法9条と韓国徴兵制」伊藤真

2010-09-15up

「キム・ソンハさんに聞きました」(Q&A)

トークセッションの後、質疑応答の時間が設けられ、
会場からはたくさんの質問がよせられました。
当日は時間切れで答えられなかった質問について、後日、
キムさんが答えを書いてくれました。

Q1 日本人と韓国人が、これから「連帯」していくためには、どうすればいいと思いますか?

A1う…ん。私は国と国の間の「連帯」という概念はよく分かりませんが、国際的イシューに際して人々が集まる時、通訳などで手伝ったりしていると、それぞれの国の人たちが考えて言っていることに、わりと大きな差があることに気がつきます。国同士の連帯も重要でしょうが、個人的な感覚では、国を問わずに「個々の事例」からアプローチする方式がより有効だと考えています。今回来日したイ・ギルジュンさんも「とにかく日本の人と話をしてその反応を韓国でも伝えてみる」という発想で、「どういう結論が出るか」は考えませんでした。ソウルと東京は地理的に近いし、時差もない空間ですから、まずはこうした作業から始めればいいと思います。

Q2日本にはかつて、「学生運動」から「内ゲバ」へと進んでしまったために、その後の「市民の運動」が弱体化してしまった経緯があります。このようなことは韓国でもありますか? 

A270年代の日本の派閥闘争は有名な話で、韓国の友人たちにその話をすると「あまり理解できない」という反応が多いです。もちろん韓国でも「NL派」、「PD派」のような緊張関係があるといいますが、今回来てくれた安悪喜さんやイ・ギルジュンさんにたずねたら「日本はあまりにも平和だから」とか「イ・ミョンバクを輸入すればケンカをやめるだろう」などの笑い話もありました(もちろん「根拠あり」の笑い話です)。

 私の考えでは(韓国でも同様ですが)、日本社会には年齢や学歴なんかで発言力に上下関係を付けてしまう傾向があるように感じましたが、それは学生運動以前に、そういう日常的な問題を解決しなかったせいではないかと思っています。ただし韓国の市民運動の場合、その歴史は日本の植民地時代から軍事独裁政権を通して続いているものなので、日本より「運動の目標を設定しやすい」とは思いますが、他方社会を二元化してしまう危険性も持っています。つまり日本の学生運動の中で暴力的な手段が使われていた部分は否定的ですが、日本の場合はより多様性が存在したという印象を韓国では持っていますね。

Q3 この間の選挙で、イ・ミョンバク政権にノーをつきつけた人たちはどういう層が多かったと思いますか? 韓国軍は何人ぐらいいますか? 北朝鮮については、学校においてはどのように教育されているのですか?

A3一つめの質問の答えです。20〜40代の都市居住者が多かったのではないかと思います。韓国の選挙には「北朝鮮」や「地域感情」などのとても複雑な要因がたくさんあるのですが、これらの世代からより分かりやすく「保守」と「革新」に分かれる傾向があるように見えます。

 二つめの質問の答えです。正規軍は60万人くらいいると言われています。

 三つ目の質問の答えです。 北朝鮮に対する反共教育は90年代半ばになくなっていますが、このころ復活するという話も聞きます。私が小学生のころの記憶をみると2、3年生の時反共ポスターを作った記憶はありますが、卒業するころには「平和統一」などの教育に変わっていました。韓国では日本の日教組にも似ている「全教祖」という教師の組合があって、反共教育の廃止には彼らの働きかけの成果も大きかったと言われています。

Q4軍事教育は、いつまでどのような形で行われていましたか?

A4「教練」という科目が90年代まで高校で行われていましたが、私は初めてそれを受けてない世代です。小学生のころ高校のグラウンドがみえるところで住んでいましたが、棒とかをもっていわゆる軍事訓練をやっていて、女子の場合は看護の訓練などがあったらしいです。今それはカリキュラムとしては存在しませんが、最近復活するという話を安悪喜さんから聞いています。

 それから、カリキュラムにはありませんが、月曜の朝に行う「愛国朝会」とは軍隊っぽいですね。夏の愛国朝会には倒れる人間もしばしばいました。校長の話は長いし、つまんないし…。

Q5オリンピックでメダルをとった選手には、徴兵免除という話を聞きますが、そういったことや、それで免除になる人たちについて、どういう感情を持ちますか?

A5「メダルをとったら徴兵免除を下す」という発想には「皇帝から命を保障されるために戦った」ローマ時代の剣闘士を思い出します。本来はアマチュアの祭典であったオリンピックですが、国家間の自慢の場になってしまった気がします。特にアジアで「スポーツ選手は国家に属する」という意識が強いと思います。日本や韓国の選手たちにもかつてベトナム戦争への参戦を拒否したムハンマド・アリのような自由意志を持って動いてほしいですね。

 しかし注目できるところは、このところ出身地とは違う国の代表が、国際大会に出ることが増えているところです。この前の北京オリンピックでもオーストラリアや日本代表として参加した韓国出身の人々がいたり、またワールドカップでは日本生まれのチョン・テセ選手が北朝鮮代表として活躍したりするように、「一国ばかりに属しないで多様な形で国際大会に参加する」という傾向には感心しています。しかし未だかなり人を悩ませることであるようで、個人的に昔韓国人のスポーツ関係者から「(いい成績をとらないと)非国民扱いされるのが怖い」という相談をうけたこともあります。私の考えでは韓国の優秀な選手たちを大切にしてくれる場が広げられて、「徴兵で夢を縛られず」より多くの人々が活躍できるようになれば、それこそ反徴兵運動であると思います。

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