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2011-09-07up

松本哉ののびのび大作戦

第50回:中国に行ってきた! そしてついに9月11日、「原発やめろデモ!!!!!」が再来!!

 みなさん、またしてもご無沙汰です。何だっていうと、ちょっと中国に行ってきました。
 最近、デモばっかりやってるせいか、いよいよもって本業のリサイクル屋が傾いてきたので、店のことを熱心にやっているわけだが、いざ店に集中してくるとこれまたいろんなことに興味がわいてくる。まず、うちの店はリサイクルショップなんだが、単に冷蔵庫や洗濯機を売ってるだけではなく、誰が何のために作ったのかよくわからない謎のものを置いたりもするので、お客さんが面白がって毎日見にきてくれたりもしていた。デモなんかをやりまくると傾いてくる理由は、この辺のインチキグッズの仕入れが滞り、無難なものばかりが店先に並んでくるようになってくるから。うーん、これはいかんね!
 …ってときに! 友達から、どうやら中国の上海の奥地には、世界一の規模を誇る雑貨の超巨大市場が存在するという。う~ん、これは一度視察にいっておかねばならない! ということで、友達からその話を聞いた1週間後、勢いあまって上海に向かってしまった!!!!!!

 さて、その市場は義烏という小さな町なんだが、一切下調べをしてなかったので、どうやっていけばいいのかもよくわからない。とりあえず、上海駅に行けば何とかなるかと、駅に行って見た。で、例によって切符売り場は長蛇の列。うわっ、面倒くせえなー、と思ってもどうしようもないのでとりあえず並ぶ。一昔前までなら、なんだか大騒ぎしながら全員が割り込んでくる(つまり列が扇状になっている)ので、普通に並んでいたら一向に進まない。で、こっちも対抗して割り込みまくってなんとか券を買うというシステム(?)。で、運が悪いと突然人民解放軍がやってきて並んでないやつらをぶん殴りまくり始める! で、みんな一目散に逃げ散って、その直後、これまでの大騒動がウソのように無駄口もたたかずにビシーッと綺麗に並び、整然と並ぶ。で、人民解放軍が満足げに帰っていくとまた大騒動の扇状の列に戻る…! これ、買う時は大変だけど、マヌケすぎて最高。うーん、世の中にはこういう秩序ってのもあるんだなぁ。
 ところが、さすが上海。今はみんな並んでいて割り込む人も結構少ない。なんだ、面白くない。
 ただ、自動券売機じゃないのでキップを買うのはちょっと一苦労。日本語はもちろん英語も通じないので中国語で買わなきゃいけない。しかも、会話に詰まったら「はいもうダメダメ。お前面倒くさい」ってなって次の人に割り込まれて並びなおしになりかねない。こういうときは語学力より押しの強さが肝心だ。とりあえず、カタコトで頑張るんだが、「今夜、義烏まで」というと「ない」といって追い返そうとする。「じゃ、明日でも何時でもいい」といっても「ないない」と、“早くどっかいけ”って言う顔をする。そんなわけねえだろ、いつならあるんだよ、と粘ってると「上海南駅から出るんだよ」だって。早く言えよ、まったく!

コンビニでお菓子を買ったら、中身はこれ。このパッケージは反則だ!

 大急ぎで南駅まで駆けつけたんだが、ぎりぎりで義烏行きの終電が終わっていた。クソッ! と思っていたら、あやしいおばちゃんが「義烏行きはまだある。こっちへ来い」という。行ってみると近くに闇営業のマイクロバスがたくさん停まっていて、値段は電車よりちょっとだけ高いぐらい。で、おばちゃんが「チップを10元(130円ぐらい)くれ」という、「だめだ、高い!」というと「じゃあ5元(約75円)」という。面倒だから5元をあげる。で、いろんなやつらを乗せまくっているが、値段交渉とかは完全にそれぞれでやるので、不安になって他の乗客にいくらで乗ったか聞いてみたら、ほぼ同じぐらいだった。よし、大丈夫か。で、ふと駅を見てみると、さっきのおばちゃんたち、電車がまだある人に対しても、切符を買おうとする前に立ちはだかって妨害し、「電車はもうなくなった!」と大ウソをついたりして闇バスにのせて小遣いを稼ごうとしている。う~ん、一人で中国に来るのは10年ぶりぐらいだから、なにがボッタクリかの感覚が鈍りまくっている。これはいかん! 早く慣れて勘を取り戻さないと!
 そして、出発しようとすると、別のバスの運転手がやってきて、「おい、ちょっと待て!」と、我々の車を止める。なんだか、若くてやたらと気性の荒そうな兄ちゃんだ。これは怖い。で、なんだかよくわからないがうちらの車のオッサンと怒鳴り合いが始まり、しまいには遠くの方で叫びながら掴み合いとかになっている。やばいやばい。早く出発してくれないかねえ…。そして、気性の荒い兄ちゃんと運転手が、こっちの車に来て「おい、お前とお前はあっちの車に乗れ」みたいなことをいい始める。なるほど、客の取り合いか。しかし、あの兄ちゃんの車には乗りたくないから、もう空気のようにこっそりと疲れて寝てるフリなんかをしてごまかす。で、またしばらくケンカした後、お互いに納得したのか金のやり取りとかをして(←なんの金なんだ!)、二人ともニッコリ一件落着。なんとか指名も免れ、その粗暴な兄ちゃんを駅に置いて一足先にオッサンカーで出発。まったくもう!

義烏の町にはアップルストアが100軒ぐらい並んでいた! これはすごい!

 で、走り始めてみると、これがまた速い速い!!!! 高速道路をほぼクラクションを鳴らし続けながら、超高速!!! アクセル全快で、常に車線変更し続けながらトラックや乗用車をビュンビュン抜きまくるし、明らかに中国マフィアの車みたいなのにもまったくビビらず煽りまくるわブーブー鳴らす。いやー、やめてくれ~。オッサンは温厚そうだと思ったのに! 顔と行動が違うぞ! ダマされた!
 さて、車内では日本のようにみんな静かにしていない。ああだこうだとすぐザワザワする。まあ、あまりこういう怪しいところでは外人とバレたくなかったんだが、中国語が完全にカタコトなので、当然、すぐバレる。「なんだ、おまえ日本から来たのか~」って話になる。たいていそうだが、珍しいもんだから、大喜びでニコニコしていろんなことを聞いてくる。ちなみに、「福島はいま大変ですよ~」とか振ってみても「なにが?」だって。ダメだ、中国でこの話題は。ただ、運ちゃん、超高速で走ってるクセにやたらと後ろを向きながら話してくるので、非常に危険だ!!! たまに、乗客一同「うわぁ~!!」とか言って運ちゃんも慌てて急ブレーキ!! そらみろ! でも、さすが中国4000年の歴史! その直後に、またみんな何事もなかったかのように寝たり話したりし始めるし、運ちゃんも後ろ向いて「それでそれで」と続きが始まる。だめだ、こりゃ。

書評『科学と発明』(偕成社・1952年)中身は読んでないけど、表紙がやばい。こんな科学を誇らしげに自慢するな!!

 で、そんなこんなでものすごい速さで無休で走りぬき、途中の都市まで来てなぜか高速を降りる。そして一般道を走り、かなり怪しい高速の下の真っ暗な工事現場へ!! そして、遠くから見るとそこには20人ほどの不審な人だかりが! あっ、殺される! 助けてー、高円寺に帰りたいよ~! と思ったら、どうやらそこは闇の乗り換え場。「○×行きの人はここで乗換えになるよ」という。結構システマチックにやってるんだな。うーん、すごいすごい! で、そこに到着すると、さっきの粗暴な兄ちゃんが手を振って待っている。おい! 何でお前が先にいるんだよ! で、着いたらそいつと運転手交代。やられた、こいつの運転はイヤだ。と、ドサクサにまぎれて降りようとしたら、運ちゃんに見つかり「いや、おまえは俺と一緒に義烏だ」。チクショー! っていうか、仲間だったのかよ! なんだか、全部がアベコベだよ、まったく! 粗暴な兄ちゃんはゴキゲンに歌を歌いながらとんでもないスピードで走り、そんなことで、電車よりはるかに速く義烏に到着した。
 中国の話はこの辺まで。「インチキ市場の話じゃねえじゃねえか!」と思うかもしれないが、インチキすぎてキリがなくなるので、まあその話はまた今度。
 しかし、久々の中国だけど、このイカサマ感は相変わらずで面白い。もちろん、市場などに行っても謎の商品が並んでたりするし、メシを食っても乗り物に乗っても町を歩いても、全体がえらいことになってる。でも、よくよく考えたら、それは完全に日本の社会を基準に考えたときの話。いい悪い、好き嫌い、向き不向きは人それぞれだと思うけど、向こうでは完全にそれが常識的な社会。

市場の警備員。二人とも完全に熟睡していた!!

 そういえば大学に入ってすぐ、初めて海外に行ったのがまさに中国で、このインチキの塊みたいなオーラに完全にやられてしまい、それまで日本の常識のみで生きてきた価値観が全部吹き飛んだような気がした。それで、東南アジアに行ってみたり、ロシアとかモンゴルに行って見たりすると、それはそれでまた全部ノリが違う。こりゃ、いよいよ常識ってものは世の中にはないな、と思ったのを覚えている。
 外国もそうだとは思うが、今の日本社会は完全に腐った予定調和が広がりまくっており、たとえば原発だってそんなところからのうのうと生き延びてきてる。ましてや大事故後にまだ原発があって、それを復活させようなんていうトボけた話が出てくるぐらいすごいことになっている。そんな金持ち連中の更なる金もうけのための予定調和なんて、海外からみたらこんな非常識な話はないよ。
 そんなくだらない連中のために、日本の社会がムチャクチャになったらたまったもんじゃない。

 と、そんなことを思っているときに、またしても「原発やめろデモ!!!!!」が帰ってくる!!!!!! 今度はなんと新宿! 今回はなんだかやたらと盛り上がるような気配を見せており、出演者もサウンドカーも、いろんなパフォーマンスなども、なんだかすごいことになってきている。その辺は「9.11新宿・原発やめろデモ!!!!!」のサイトを見てみればわかると思う。
 さらには、翌週の19日にも反原発の巨大デモをはじめ、数ヶ所でデモが行われる! もう、こうなったら毎週毎週とんでもない大規模デモが巻き起こるぐらいにするしかないね!! なんだか、野田みたいな中途半端なやつが出てきて、ドサクサに紛れて原発動かしかねない感じだが、そうは問屋がおろさないってところを、知らしめておくしかないね!!!!! 「いらないものはいらねえ」という、ごく当たり前の話をぶちかましてしまおう!!!!! 
 さあ、忙しくなってきた!!!!!!!!!

おまけ

 さて、中国から帰ってきて、デモも近くなってきたある晩のこと。その日もまたいつものように一人で店番をしていた…。夜9時半を回った頃、店の奥の部屋から突然「ジー、ジー!!!」という音がしてきて、なんだなんだと思ってたら「ボーン!!」と音がして暗闇の中からピカっと閃光が!! なんだと思って駆けつけてみると、奥の部屋の照明がつかない。ありゃ、これショートしたかな?…と思っていると、なんとその部屋の一番奥のところが光ってるではないか。よく見るとなんと壁の隙間の中が燃えている! そして、煙もボワッと出てくる! ギャー!!!!!! 火事だー! 火事だー!!!!
 こりゃ、一大事だとまず119番! で、すぐ商店街をウロウロしてる奴らに「ちょっと消火器持ってきてくれ」と頼んだら、なんだか近所から消火器が集まってくる。すごいすごい。さすが商店街、人が歩いてるっていい。やっぱり地域コミュニティは大事だね。…なんてこと言ってる場合じゃない! 危ない危ない! 死ぬ!!! とりあえず店の二階に住んでる人にも避難してもらったりしてたら、早くも消防車が! はやい! えらい! すごい! まいりました!!! みんな、大きくなったら消防士さんになろう!
 ただ、その頃には火は自然と鎮火してるっぽくて、とりあえず事なきを得た。どうやら、もともと据え付けの棚の裏側の配線がショートしていたみたいで、消防の人がその据え付け棚をバリっと剥がしてみると、その中のコード部分を中心に真っ黒に! いやー、棚とか壁に燃え移ってたら一巻の終わりだった。う~ん、まさに間一髪!
 このとき! 40年前のカダフィ大佐のごとく颯爽と登場したのが、またしても東京電力社員! いよっ、正義の味方! 待ってました大統領! いや、しまった! 
 的確に配線を調べてくれて、「いやー、ここの線とこっちがダメですね。こっちのほうは問題ないから大丈夫ですよ」などと、的確なアドバイス! 築40年以上は軽く経っている建物で、どうやら簡易的に配線していたところが劣化していたとのこと。一方、店の外では、デモの中心人物でもある、素人の乱の山下陽光や音楽ライターの二木信なんかもちょうど近くにいて、マヌケな顔をして心配そうにしている。しかも、二木信のほうは頭がイガグリ頭だし、山下陽光はどこから持ってきたのか腐りかけて底が抜けそうな、噴射したら余計危なそうな消火器を片手に持っている。これは、完全に下町の公園で紙芝居を見損ねた光景だ。そこを調査とアドバイスを終えた東電社員が「じゃ、気をつけてくださいね」と、去っていった。ありがとう、東京電力! 命の恩人!! しまった、ちょっと前のカミナリに続いて、また借りができた!
 しかし、地震、カミナリ、火事と、ひととおり食らってるけど、どうなってんだこれ! 完全にネタみたいだけどネタじゃないのが恐ろしい話だ!!

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またしても体を張った(?)オチをつけてくれている松本さんですが、
それはさておき9.11デモ、まもなくです!
「いらないものはいらない」、当たり前の声をあげるために、
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松本哉さんプロフィール

まつもと・はじめ「素人の乱」5号店店主。1974年東京生まれ。1994年に法政大学入学後、「法政の貧乏くささを守る会」を結成し、学費値上げやキャンパス再開発への反対運動として、キャンパスの一角にコタツを出しての「鍋集会」などのパフォーマンスを展開。2005年、東京・高円寺にリサイクルショップ「素人の乱」をオープン。「おれの自転車を返せデモ」「PSE法反対デモ」「家賃をタダにしろデモ」などの運動を展開してきた。2007年には杉並区議選に出馬した。著書に『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)、『貧乏人大反乱』(アスペクト)、編著に『素人の乱』(河出書房新社)。「素人の乱」公式ホームページ

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