マガジン9

憲法と社会問題を考えるオピニオンウェブマガジン。

「マガジン9」トップページへ雨宮処凛がゆく!:バックナンバーへ

2012-01-11up

雨宮処凛がゆく!

第216回

14、15日は「脱原発世界会議」へ!! の巻

年越しは経産省前のテントで「夜な夜な生テレビ」出演。寒かった・・・。湯浅誠さん、河添誠さんと。

 変革の1年が明けた。

 なぜ、「変革」なのか。

 いろいろなところで書いているが、昨年は何か「世界規模で様々な矛盾が白日のもとに晒された1年」だったと思うのだ。 

 アラブの春は中東の独裁政権という問題をあぶり出し、「WE ARE THE 99%」という言葉から始まったウォール街占拠は、現在の資本主義のあり方に真っ向から疑問を呈し、世界1000以上の都市に飛び火した。スペインでは「怒れる者たち」が立ち上がり、欧州債務危機の中、ギリシャやロンドンでも多くの人々が街頭に繰り出した。

 そうして東日本大震災に見舞われた日本では原発が爆発。「原発と共存すること」の残酷さと、「原発がある国」の脆弱性、そして様々な利権や原子力行政の機能不全が、これ以上ないほどの形で明らかになった。

 思い出してほしいのは、事故直後の対応だ。ヘリコプターから原発に水を投下するという「二階から目薬」のような作戦が実行されたり、デモ鎮圧のための放水車が登場するも放射線量が高くて手も足も出なかったり、汚染水の海洋流出を止めようと、おがくずや紙おむつの高分子ポリマーや水ガラスなど、とにかく手当たり次第なんでもブチ込んでみたり。

 事故の深刻さの前で、まるでコントのような「一発芸大会」的ゴタゴタが繰り返され、ことごとく失敗。東電や原子力安全・保安院、そして原発を推進してきた国会議員たち、また御用学者と言われる人たちの顔を見ながら、私は思った。この人たち、事故が起きた時のこととか、本気で何も考えてなかったんだ・・・と。心から、恐れた。

 何も考えていない人たちが、ものすごく危険なものを扱っている。しかも、人類の今後にかかわるほどの。単純に考えて、これほど恐ろしいことはない。その上、放射性廃棄物は何十万年経っても存在し続けるのだ。今、原発利権で利益を受けている人の誰一人として本気で責任をとらなくてもいいシステム。そんな事実が、白日のもとに晒されてもう10ヶ月。

 年末、政府は原発事故の「収束」を宣言した。

 時間が経つにつれ、報道も減っている。しかし、今も多くの人が避難生活を強いられ、先の見えない不安に喘いでいる。10ヶ月経ったといっても、避難している人、線量が高いことを気にしながら自らの地域にとどまり続けている人は、その生活が10ヶ月間、続いているのだ。避難生活が長引けば長引くほど「失うもの」はおそらく増え、そして線量が高い場所に居続ければ居続けるほど、様々な健康リスクも増えていく。「収束」どころか、被害はこうして今も拡大し続けているのだ。

夜な夜な生テレビ出演者のみんなと。

 昨年は、そんな「矛盾」に対して、この国でも多くの人が立ち上がった。怒りから、恐怖から、悲しみから、喪失感から、そして罪悪感や無力感から、多くの人が原発に対して声を上げ始めた。

 私たちの暮らしを支える電力の背景にあった大矛盾。その膿はまだ出尽くしてはいない。今も止まってはいない。しかし、それに対して声を上げ、行動する人たちが現れたのが昨年だ。

 ならば、今年は具体的に変革していく1年だと思うのだ。話し合い、知恵を出し合い、これからの世界を思い描き、それに向けて実際に動いていく1年。それはきっと大変だけど、ゾクゾクするほど楽しい取り組みでもあるはずだ。

 そんな2012年のはじめ、画期的なイベントが開催される。「脱原発世界会議」だ。

 世界各国から、様々な作家やアーティストや活動家、学者、国会議員などがこの会議のために日本にやってくる。もちろん、日本からも様々な人が参加する。

 海外メディアの取材を受ける機会が多い私は、そのたびにどれほどこの国が放射性物質を世界にまき散らす「加害の立場」にいるかということを痛感させられる。変えられるのは日本に住むあなたたちしかいないのに、どうして政府に「脱原発」とはっきり宣言させられないのか。時に同情的に、時に辛辣にそう問われる。この国の人々の多くは、直接的には海外の人々のそんな言葉に触れてはいない。だからこそ、まずは「今の日本が世界からどう見られているか」を知ってほしいのだ。

 最近、ある人にショックな話を聞いた。彼は中東のある国の女性と結婚しているのだが、彼の妻子は震災以降、母国に帰国。以来、彼は日本に残り、別居生活をしているものの、その国は日本から彼が送った荷物を一切受け入れないのだという。放射能を検査する機械がないため、日本からの荷物はすべて弾かれてしまうのだ。

 他の国がどうなのかは知らない。しかし、このエピソードひとつでも、この国がどれだけ「汚染の中にある」と思われているのか、よくわかる。

 そんな脱原発世界会議で、私は15日に「解体『がんばれニッポン』」と題し、小熊英二さん、鎌田慧さんと対談。また、同日、制服向上委員会のメンバーと「私たちの革命! アイドルだってデモに行く!」というタイトルでトーク。

 また、14日には「脱原発世界大行進」という名のデモが!!

 詳しくは「脱原発世界会議」「脱原発世界大行進」のサイトでチェックして欲しいが、とにかくこの2日間、集まり、様々な人に話を聞き、考えたいと思っている。

 ちなみに14日にはSUGIZOさんも出演。なんと私はSUGIZOさんのユニットのライブでMCをすることになり、いろいろな意味でそっちも楽しみで仕方ないのである。キャハ☆

ロフトプラスワン楽屋で。中下大樹さんと。

←前へ次へ→

たくさんのものが失われ、破壊された2011年。
ここで変わらなければ、いつ変わるのか。
今年を「変革の年」にできるかどうかは、私たち一人ひとりにかかっています。
いよいよ今週末の「脱原発世界会議」、こちらの記事もあわせてお読みくださ い。

ご意見・ご感想をお寄せください。

googleサイト内検索
カスタム検索
雨宮処凛さんプロフィール

あまみや・かりん1975年北海道生まれ。作家・活動家。2000年に自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版)でデビュー。若者の「生きづらさ」などについての著作を発表する一方、イラクや北朝鮮への渡航を重ねる。現在は新自由主義のもと、不安定さを強いられる人々「プレカリアート」問題に取り組み、取材、執筆、運動中。『反撃カルチャープレカリアートの豊かな世界』(角川文芸出版)、『雨宮処凛の「生存革命」日記』(集英社)、『プレカリアートの憂鬱』(講談社)など、著書多数。2007年に『生きさせろ! 難民化する若者たち』(太田出版)でJCJ賞(日本ジャーナリスト会議賞)を受賞。「反貧困ネットワーク」副代表、「週刊金曜日」編集委員、、フリーター全般労働組合組合員、「こわれ者の祭典」名誉会長、09年末より厚生労働省ナショナルミニマム研究会委員。オフィシャルブログ「雨宮処凛のどぶさらい日記」

「雨宮処凛がゆく!」
最新10title

バックナンバー一覧へ→