第十七回
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昨夜、「マガジン9条」のとってもユル~イ編集会議(のようなもの)がありました。会議というより、その後の食事会(というより飲み会)が目的みたいなものですが。
みんなボランティアですから、仕事が終わったころにボチボチ集まってきます。「今日は集まりが悪いなあ」なんて言っていたら、いつの間にか10人になっていました。
その中に、初参加のゲストがおひとり。実はこの方、事務所の水回りの工事に来てくれていた水道工事屋さん。
「部屋の中のポスターなんかを見ていたら、あ、ここがあの『マガジン9条』か。知ってる知ってる、覗いたことがある…」ということになったらしいのです。
それで、この日は特別参加。
みんなと一緒に憲法について語ったり、自分のお仕事のことを話したり、かつてやっていたというバンド活動の思い出を披露してくれたりと、大盛り上がりでした。
この方、Aさんといいますが、話しているうちにAさんがスタッフのOと同じ中学校の同窓生だったことが判明。そこでまた、生ビールで何度目かの乾杯。いやはや、少し飲みすぎたかな…。
ときには、こんなハプニングも楽しい。
特別参加は、大歓迎です。
しばらく片付けていなかったので、机の上が悲惨な状況になっていました。
資料は散乱。読みかけの本が見つからない。老眼鏡はどこだ。大事なメモが行方不明。プリンターのインク切れ。おまけにPCが反乱を起こして思い通りに動かない。
オオ、ゴッドォ!状態です。
そこで一念発起。30分ほどかけて、机上整頓大作戦。(でも、これをやると、あとでまた「あれがない、これはどこ行った」が始まるんだよなあ)。
埋もれた資料や本、雑誌の中から、あれっ、というものも出てきます。新聞雑誌の山の中から発掘された以下の記事も、貴重なものでした。
蓮池透さん(「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」元事務局長)のインタビューです。
「週刊金曜日」9月19日号で、少し古い記事だけれど、とても重要なことを示唆してくれるものでした。抜粋します。
<私は右でも左でもありません。とにかく拉致被害者の救出が第一だと考えています。(一九九七年の家族会結成)当時はよく分からなかったのですが、応援してくださったのは右寄りの方が多かったみたいですね。今になって考えてみると、被害者がかわいそうだとか、人情や家族愛を前面に出しながら、彼らの目的である北朝鮮の体制打倒に相当利用されていたのではないかと感じています。>
<(北朝鮮が拉致を認めたときに)あまりにも日本の世論が「北朝鮮憎い」「やっちまえ」「つぶしちまえ」と盛り上がりすぎ、憎しみを込めたナショナリズムが構築されてしまった。私もその一翼を担ったのかもしれませんが…。
日朝の過去の話をすると、すぐイデオロギーの世界になるので好きではありません。が、北朝鮮が主張するように、日本が(戦争中に)朝鮮半島から何万人も拉致したのがもし事実であれば、きちんと「落とし前」をつければいい。何もしないで六〇年以上経っているのは日本政府の過去への怠慢です。日本政府のそうした態度が(北朝鮮による)拉致を引き起こした、と言う人がいても仕方ないと感じます。私としてはその立場を全面肯定できませんが…。>
<どうなれば解決なのかが分からなくなっています。拉致被害者には、政府認定者と(北朝鮮による拉致の可能性を排除できない)特定失踪者がいますよね。首相になる前の安倍さんは「解決には、ハードルが何段階もある」と話していました。まずは(当時まだ平壌にいた)拉致被害者の子どもたちの帰国。それから国交正常化交渉の中で、亡くなったと北朝鮮が言う人たちの話を詰める。それから特定失踪者の話に移る。
私も順を追ってやっていかないとダメだと思います。それがいつのまにか「(特定失踪者を含め)四〇〇人まとめて取り返せ」などと声高に主張する人が増えました。>
<安倍さんが言った「全員生存を前提にする」「平壌宣言にのっとり国交正常化を目指す」が分かりませんでした。矛盾してますよね。北朝鮮が言った「五人生存、八人死亡」を日本政府が呑み込んだから平壌宣言に調印したはずなんです。生きていることが前提なら、平壌宣言の履行は中断しないといけない。「全員生存が前提」というのは結構ですが、帰国させるための行動が見えません。>
<横田(滋・早紀江)夫妻もお年ですし、孫のウンギョン(ヘギョン)さんに逢いに行ったらいいと思います。あれだけ意志の固い方ですから懐柔されることはありえないし、逢うことでいろいろな情報も入ってきます。>
<早期に解散総選挙を行って国政を安定させ、被害者救済のために気迫気概を持って取り組んでいただきたいですね。>
(聞き手・佐高信)
何も付け加えることなどないでしょう。ほんとうに、この方が言われるとおりだと思います。
早く解散総選挙を行い、安定した政権を作って北朝鮮と真摯に交渉することが、まどろっこしいかもしれませんが、結局はいちばんの近道なのではないでしょうか。
ここで問題です。
次の言葉を発した方は、どなたでしょうか?
<わたくし○○○○、この度、国権の最高機関による指名、かしこくも、御名御璽をいただき、第××代内閣総理大臣に就任いたしました。>
この言葉、まるで戦前の総理大臣指名受諾演説のようですよね。○○○○のところに、田中義一とか岡田啓介、米内光政、東條英機といった軍人首相の名前を入れ、××の箇所に26とか40を当てはめても、まったく違和感がありません。それほどに、旧い戦前の臭いがします。
むろん、みなさんご存知のように、これは麻生太郎第92代内閣総理大臣が、2008年(!)9月29日の臨時国会冒頭での所信表明演説で述べた言葉です。決して1940年の国会演説ではありません。
麻生氏は意識してこのような表現を用いたのでしょうが、戦後生まれの人間には、実に不気味な感じがしたのです。
麻生氏は、1940年(昭和15年)9月2日生まれですから、現在68歳。つまり、あの敗戦時(1945年8月)にはまだ5歳にもなっていなかったわけです。
その方がなぜこんな表現をしたのでしょう。4歳のころの記憶が、心のうちに深く刷り込まれていたとでもいうのでしょうか。
それとも、麻生学校(太郎氏のために麻生財閥が作った特別な学校だという)で受けたという教育が、そんな戦前回帰的なものだったからなのでしょうか。
“戦後レジームからの脱却”を唱えて戦前回帰思想を鮮明にしながら、無残な退陣をせざるを得なかった仲良しの安倍晋三元首相への、同じ考えを持つ友人としてのオマージュでしょうか。
いずれにしろ、とても現代の国会の冒頭演説としてふさわしいものだとは思えないのです。
現代において、“御名御璽”という言葉を、国権の最高機関たる国会の場で、総理大臣たる者が就任の決意ともいうべき所信表明演説の中で口にするとは、聞いていた人たちもそうとうに驚いたらしい。多くのメディアも疑問を呈しました。
例えば、毎日新聞の社説(9月30日)は、次のように述べています。
<首相の立場は戦前の明治憲法下とは明らかに違う。これについてどう考えているのか。もっと詳しく歴史的な認識を聞きたいところだ。>
私も、毎日社説のこの部分には深く同意します。
「創氏改名は朝鮮民族が望んだこと」「日本人は単一民族」「差別発言」「核保有に関する議論」等々、数々の歴史認識に関わる問題発言を繰り返してきた麻生太郎氏です。
その彼が持っている「歴史認識」を、国会の場できっちりとブレない形で表明する必要があるのではないでしょうか。
さて、麻生首相、「解散時期は、私が決めます」と胸を張っていますが、どうも解散時期を決めかねている様子。
中山国交相の暴言辞任、河村官房長官ら多くの閣僚に次々と発生する事務所費や献金疑惑、笹川尭自民党総務会長の女性差別発言。予算委員会を開いたのはいいけれど、野党側の追求質問にほとんど具体的に答えることなく、はぐらかすだけの閣僚や首相の答弁の繰り返し。
これらの状況を、有権者はかなり厳しい目で見ています。事実、内閣支持率はジリジリと下がり続けていて、確かに解散に二の足を踏まざるを得ないような数字が並びます。
麻生首相が「こうなれば、せっかく掴んだ総理大臣の椅子なのだから、1日でも長く座り続けたい」と側近にもらしたという噂も信憑性を帯びてくるというものです。麻生首相にとって、もはや個人的栄誉ぐらいしか、すがるものがなくなった、ということなのかもしれません。
アメリカでは、一度否決された金融安定化法案がようやく下院を通過したというのに、市場はそれをまったく評価していません。10月6日、法案成立直後の米市場株価は大暴落。1万ドルの大台をあっさり割り込んでしまいました。
当然、それは日本にも波及しました。7日には、一時的とはいえ、日経平均で4年半ぶりとなる1万円割れ(9916円)まで急落する場面もあったのです。そして、100年に1度という大恐慌の兆しは、ついに世界一周。あらゆる国の市場は大混乱に陥っています。
そんな状況を逆手にとって、こんな意見も出てきました。
「こんな時期に、解散するべきではない。まず経済不安を払拭する手を打つのが先決ではないか。だから、解散はなるべく先送りするべきだ」
中には「来年9月の任期満了まで、麻生内閣で頑張るべきだ」などという極論まで出始めました。
一見、もっともな意見みたいな気もします。しかし、私は大反対です。速やかに、解散総選挙を行うべきです。
この麻生内閣が、きちんとした経済政策を提示できているなら、これらの意見も説得力を持ちます。
けれど、「消えた年金」「1年限りの定額減税」「後期高齢者医療制度」「高止まりのガソリン価格」「汚染米」「格差の拡大」「非正規社員急増」「日雇い派遣労働」「官僚天下り問題」「三位一体改革の失敗による地方の疲弊」などなど、どれひとつとってもまともに機能している政策などないではありませんか。
むろん、それらすべてが麻生内閣の責任だと言うつもりはありません。とくに“小泉改革”などともてはやされた無責任な政策のツケが、いまの自民公明連立政権に重くのしかかっているのは事実です。
けれど、それらを是正しなければならない麻生政権が、いったい是正のためにどんな政策を打ち出しているのか。問題はそこにあるのです。何の有効な手も打ててはいない。
ならば、解散総選挙を通じて、危機を打開できる政策を持つ安定した政権を、早急に造るしか方法はないはずです。
選挙という洗礼を受けない内閣が、3代にもわたって続いていることが間違いなのです。
とにかく、一刻も早い総選挙を。
国民の暮らしを直撃する大不況は、すでに私たちの足もとを濡らし始めています。
繰り返します。
一刻も早く、総選挙を!
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