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週間つぶやき日記

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8月1日(金)くもり

アメリカの夢まだ醒めず アメとムチ

 アメリカ地名委員会が、竹島(韓国名・独島)についての記述を、クルクルと変えている。

 俺のモンだ、いやこっちの領土だ、と日韓がその帰属をめぐって争っているこの島を、アメリカ地名委員会は、これまで「韓国領」と明記していたのだが、日本の文科省が新学習指導要領の中学社会科の解説書に取り上げたことに配慮したのか、「主権未指定」つまり、どの国に属しているか決定していない、との記述に変えた。
 むろん、これには韓国側が大反発。アメリカへ厳重抗議した。すると今度は、「現時点で変更する明確な理由はなかった」という、なんとも間抜けな理由で、「竹島(独島)は韓国領」との記述に戻してしまった。
 この裏には、ブッシュ大統領の強い意向があったという。

 8月5日には、ブッシュ大統領は訪韓を予定している。これは7月上旬の予定だったのだが、例の米国産牛肉の輸入に対する韓国民の大抗議集会に配慮して、延期されていたもの。
 だからこそ、今回の訪韓には慎重になった。任期残りわずかになったブッシュ大統領にとって、達成できそうな最後の外交課題は、北朝鮮との国交回復だろう。これを成功させるには、どうしても韓国の協力が必要である。
 そこでブッシュ大統領は、日本と韓国を天秤にかけた。結果、彼は日本よりも韓国を選んだ、というわけだ。
 もはや、ブッシュ大統領の頭の中には、日本など存在しないのだろう。北朝鮮のテロ支援国家指定解除についても、アメリカはほとんど日本の意向など無視している。それでも日本政府は、アメリカに追随し続ける。

<(この米地名委員会の記述変更について)町村官房長官は7月31日の記者会見で「米政府の一機関のやることに、あれこれ過度に反応することはない」と述べ、直ちに米政府に記述の変更などを求めたりせず、事態を静観する考えを示した。(後略)>
(朝日新聞7月31日夕刊)

 “米政府の一機関”とは何たる言い草。ブッシュ大統領がライス国務長官に見直しを図るよう強く指示した結果だったことは、すでに各報道で明らかになっているのに、こうシラを切る。大統領とは、単なる米政府の一機関に過ぎないというのか。
 もし本気で、竹島が日本領だと世界に向けて主張したいのならば、日本政府は、すぐにもブッシュ大統領に猛抗議をしなければならなかったはずではないか。
 実際、韓国はそれを行った。だからブッシュ大統領が動き、地名委員会も即座に記述を変更したのだ。
 アメリカには抗議ひとつせず、日本国内向けにのみ、教科書を使ってナショナリズムを煽るようなことをする。
 とにかく、アメリカの言いなりになっていれば、子分でいれば、なんとかやっていける。それが日本の保守政治家の、60年にも及ぶDNAの綿々たる継承現象なのか。

 沖縄・普天間基地の辺野古移転でも、日本政府は地元の願いを無視してアメリカの要望に添おうとする。莫大な“思いやり予算”を、老人医療費などの福祉費を(防衛費すら)削らざるをえない状況の中でも、減額せずにアメリカに献上する。

 アメとムチの政策で、ついには米軍座間基地のある神奈川県座間市を、政府(防衛省)は、金の力で屈服させた。
 座間市は、これまで米陸軍第1軍団司令部が移転してくることに反対してきた。そのため、“在日米軍施設受け入れの見返りに支給される米軍再編交付金”を、全国の対象39自治体のうち、唯一座間市だけが支給されていなかったのである。
 言うことを聞かないと、金はやらない。言いなりになれば、金をやる。政治手法としては、最も汚い手だ。
 ついに、座間市はアメの甘さに降伏し、その受け入れ準備のための協議会設置に同意したのだ。そこで防衛省は、7月30日に交付金支給を決めた、というわけだ。

 これほどアメリカのために尽くしながら、肝心のところでは袖にされる。もうそろそろ、“アメリカの夢”から醒めてもよさそうな時期だと思うのだが。

8月2日(土)くもりのちはれ

改造に こんな人たち 忘れまい

 優柔不断を絵に描いたような福田康夫首相も、ついに自民党の役員人事、内閣改造に踏み切った。というより、あまりの不人気に、改造でもしなければ、この内閣はもうもたない、と決断せざるを得なくなったというわけ。
 で、やってはみたものの、ほとんど代わりばえのしない顔ぶれ。相変わらずの派閥均衡、各派の親分を総動員、形ばかりの挙党体制という感じである。
 それにしても、各派の親分をかき集めた結果がこれか。親分たちも、ほんとうに小粒になってしまったものだ。

 それでも、今回の注目株は、麻生太郎氏の自民党幹事長への起用ということらしい。各メディアは「国民的人気のある麻生氏起用で、選挙を乗り切る構え」というような解説をしている。
 でも、ほんとうにそんなに“国民的人気”なるものがあるのだろうか。疑問だ。
 もっとも、麻生氏の超タカ派的政治信条は有名だし、そういう意味で、一部の人たちには人気があるのかもしれない。
 例えば、中川昭一元自民党政調会長とともに、「核武装論議はするべきである」と繰り返していたことは記憶に新しい。いちおうは「私は非核3原則には反対しないが」というエクスキューズつきだったが、それならばなぜ、あんなにも「核武装論議賛成」にこだわったのか、腑に落ちない。
 そのほか、「創氏改名は、朝鮮人自らのぞんだもの」とか「台湾は日本に占領されたお陰で立派な国になった」「アルツハイマーでも分かる」「ホームレスに対する差別発言」など、麻生氏の失言暴言は数多い。
 そしてもうひとつ、最近ではあまり公には語られていないが、次のような過去がある。これは『野中広務 差別と権力』(魚住昭著、講談社)に書かれている話だが、2001年3月、河野グループ(当時)の会合で、次のようなことがあったという。引用する。

<自民党代議士の証言によると、総裁選に立候補した元経企庁長官の麻生太郎は党大会の前日に開かれた大勇会(河野グループ)の会合で野中の名前を挙げながら、
「あんな部落出身者を日本の総理にはできないわなあ」
と言い放った。>
(文庫版 385ページ)
<(2003年9月の自民党総務会で)立ち上がった野中は、
「総務会長、この発言は、私の最後の発言と肝に銘じて申し上げます」
 と断って、山崎拓の女性スキャンダルに触れた後で、政調会長の麻生のほうに顔を向けた。
「総務大臣に予定されておる麻生政調会長。あなたは大勇会の会合で『野中のような部落出身者を日本の総理にはできないわなあ』とおっしゃった。そのことを、私は大勇会の三人のメンバーに確認しました。君のような人間がわが党の政策をやり、これから大臣ポストについていく。こんなことで人権啓発なんてできようはずがないんだ。私は絶対に許さん!」
 野中の激しい言葉に総務会の空気は凍りついた。麻生は何も答えず、顔を真っ赤にしてうつむいたままだった。>
(同 392ページ)

 これが事実とすれば、麻生氏はひどい差別主義者ということになる。吉田茂元首相の孫であり、麻生財閥の御曹司という毛並みのよさは政界屈指だけれど、それだけで素晴らしい人間であるというわけにはいかない。
 野中氏の指摘どおり、このような人間が大臣を経て自民党のナンバー2になり、やがては首相の座をねらおうとしている。
「私は絶対に許さん!」と叫んだ野中氏の心情に同意する。

<麻生氏、早速の「失言」か>
 (注・以下は8月4日の出来事ですが、同じ麻生氏についての話なので、ここに挿入しておきます)
麻生氏は、民主党について、「ほんとうに政権をとる気があるのか。ドイツでも、国民が1回やらせてみようと、ナチスを選んだことがあった」と、江田五月参院議長に語ったという。
 各紙によると、本人は「ナチスに例えたのではなく、きちんと民主党が審議に応じるのが大事、という意味で言ったのだ」と釈明したらしいが、どんな意味にせよ、ある政党に言及するときに、ナチスを持ち出すなど論外であろう。
 この人のメンタリティーが、垣間見える。

 もうひとり、新閣僚の中に気になる人物がいる。農林水産大臣になった太田誠一氏である。
 この太田氏の失言はあまりに有名だ。
 2003年5月、早稲田大学のイベント系サークル“スーパーフリー”が引き起こした集団レイプ事件をご記憶の方も多いだろう。いわゆる“スーフリ事件”では、そのサークル代表らメンバー5人が、女子大生を酔わせた上、集団でレイプしたとして逮捕。それだけではおさまらず、もっと大がかりな事件に発展し、最終的には14人が逮捕されるという大騒ぎになった。
 この事件発覚直後、太田氏は鹿児島市で行われたあるシンポジウムで、
 「レイプできるような若者はまだ元気があってよろしい」
と、ほとんど人間とは思えないような趣旨の発言をしたのである。これは、国内のみならず、外国メディアにも大きく取り上げられ、“日本の恥”を世界に晒すことになった。
 さすがにその影響は大きく、同年11月の第43回衆院選挙では、太田氏はあえなく落選。しかし、05年9月の総選挙では返り咲き。地元選挙民の“忘れっぽさ”に救われたわけだ。
 そういう人が閣僚になったのだが、その任命者はもちろん福田首相。実はこの話にはオチがある。太田氏失言問題が騒ぎになったときの官房長官が、福田康夫氏だった。
 「そういう格好しているほうが悪いんだ。男は黒豹なんだから。まるで誘ってくれというような格好をしている女性もいるからねえ」と、太田氏を擁護してみせたのが、実に、その福田官房長官だったのである。
 スーフリ失言コンビの復活劇。
 見たくないものを見せられてしまった。 

8月3日(日)くもりのちはれ

あの世では 六つ子ニャロメと 花札

 昨日8月2日、赤塚不二夫さんが亡くなりました。

 実は私、ほんのわずかな期間でしたが、ある芸能誌の連載漫画の新米編集担当として、赤塚さんのところへお邪魔していた時期があったのです。
 連載は「歌謡漫画」というタイトルで、毎回ヒット曲の歌詞をパロディにしたギャグ漫画を掲載していたのです。
 その芸能誌は月刊誌でしたので、私は月に一度、打ち合わせにお邪魔するだけでしたので(原稿受け取りは、赤塚さんのアシスタントの方からでした)、ほとんどフジオ・プロに住み込んでいるような週刊誌の辣腕編集者(みんな年上で、けっこう怖そうでした)のみなさんの横で、小さくなっておりました。
 でも、いまや『釣りバカ日誌』の大作家・北見けんいちさんがアシスタントで、北見さんにずいぶんお世話になったことだけは、よく覚えています。

 あるとき、私は大失敗をしました。毎回4ページ連載なのですが、なんと2ページ目と3ページ目を入れ違えて掲載してしまったのです。雑誌が出来上がってきてから気がつきました。
マッサオッ!
  すぅーっと、血の気が退いていきました………。
すぐに、Y副編集長に報告。ふたりでお詫びのお酒を持って、新宿・下落合のフジオ・プロに出かけました。
 小さくなって下を向いているしかできない私に、赤塚さん、ニヤッと笑って 「僕の漫画、ページを間違えるほどつまんなかったかなあ」
 もう、穴があったら一生出てきたくなくなるような瞬間でした。編集者として、私は数々の失敗を重ねてきましたが、その中でも特筆すべき大失敗のひとつであります。
 でも、そのときも赤塚さんからは、ニヤリのほかは何の叱責もありませんでした。
 若い人には徹底的に優しい人だったと思います。

 フジオ・プロの応接室(?)で、車座になって花札やコイコイ、はてはチンチロリン、ポーカーやらのバクチ場を開帳している担当ベテラン編集者たちのために、自ら台所に立ち、大量のソーメンを茹でていた赤塚さんの姿が、いまでも目に浮かびます。
 当時の若者たちの叛乱にもシンパシーを持っていたようで、そんな運動にかなりのカンパをしていたとも聞きました。
 権力を、根っから嫌った人でもあったのです。

 心からの、ご冥福を。 

8月5日(火)くもりのち雨

物言えぬ職員会議が生む荒廃

 ご存知の方も多いでしょうが、東京都の都立学校では「職員会議での挙手や採決」が、都教育委員会の厳しい通達によって一切禁止されています。中にはこの通達を盾にとって、「職員会議は校長からの連絡の場。職員による議論や提案は一切認めない」と定めている学校もあるといいます。
 こんなことで、教育は成り立つのでしょうか。現場をあずかる教師たちが、現場で得た知見や知識を提案という形で表明できないとすれば、そこは単なる工場です。工場に押し込められた子どもたちの息苦しさが、最近の暴発する事件の一因となっているのではないでしょうか。

 そんな状況に、反旗をひるがえす方もいます。都立三鷹高校の土肥信雄校長です。
 この人についての記事が、朝日新聞多摩版(8月5日)に小さく載っていました。小さいけれど、重要な記事です。これをなぜ全国版に載せないのか、大いに不満ですが。

(話は変わるけれど、朝日新聞の高校野球記事にはウンザリです。もっと大事なことがあるだろっ! 地方予選から甲子園。この時期になったら、私は朝日新聞をしばらくお休みにしようと、真剣に考えています。ほかの新聞も取っているから別に困らないし)

 とりあえず、その記事の全文を転記しておきます。あなたはどう思いますか?

見出し
<職員会議の採決禁止
 都立三鷹高校長 公開討論を要望>
記事
<都立高校の職員会議で、挙手や採決を禁じた通知の撤回を求めている都立三鷹高校の土肥信雄校長が4日、都教委に対し、この問題をめぐる公開討論に応じるよう求める要望書を出した。「意見を述べ合い、都民にどちらが正しいか判断してもらいたい」としている。
 土肥校長は都庁で会見し、「意見が反映されないなら何をいっても意味がないと、職員会議で自由な討論がされないようになった」と、改めて都教委の通知を批判した。
 会見には土肥校長を支持する識者も同席。国際基督教大の藤田英典教授(教育学)は「校長にとって教職員の意向を知ることは必要で、採決をしてもやり方しだいで問題がない」。教育評論家の尾木直樹さんは「都教委のやり方は現場の英知を集めるべき職員会議にふさわしくない。教員志望の学生が東京を避けるようになっている」と語った。>

 東京では教員志望者が減っている、と尾木氏は指摘しています。志望者が減れば、当然、優秀な人材も減ります。
 ならば、東京の教育を破壊しているのは、東京都教育委員会だということになるではありませんか。

(鈴木 耕)
目覚めたら、戦争。

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