さて、ここで問題です。世論調査で、国民が現在、もっとも関心のある政治課題だとするのはいったい何でしょうか?
もちろん、小泉首相と自民党執行部の方々は、この質問には誰一人として正解を出せません(答えを十分に知っているにもかかわらず、知らんぷりしているだけですが)。
答えは、(1)年金・介護・医療保険 (2)景気回復対策 (3)増税問題(税制改革) (4)郵政民営化問題 の順番です。どの世論調査を見ても、郵政民営化問題は、関心度がたかだか10%前後なのです。
しかし、小泉さんは「郵政民営化が唯一絶対の争点だ」と絶叫し「こんなことができないようで、改革なんかできっこない!」と髪振り乱す。
そして、かつては自らが「造反議員」だった武部幹事長は、美しいまでに態度を変え、「これは『国民投票』である」と言い立てます。しかしこの方たち、「国民投票」の意味が判っているのでしょうか?
もし、「国民投票で国民の意志を問いたい」というのなら、まず関心度の最も高い(1)の年金問題で行うべきでしょう。「郵政問題」はやっと4番目の国民投票にしかなりませんよね。
こう言えば「しかし、年金問題は参議院で否決されたわけじゃない」という屁理屈を持ち出すでしょう、屁理屈好きの小泉さんですからね(8
月29日の党首討論では、またも得意の「人生いろいろ」論を持ち出して、チョー屁理屈のわけ判らんチンぶりを発揮していました)。
でもそりゃあ、当たり前。だって年金法案なんて、本会議にかけられていないのだから、可決も否決もありゃしない。さっさと年金問題を議論して法案化しない自分がいけないだけでしょ!
こんな判りきったことでも、小泉さん流にまくしたてれば、メディアはなんとなくそれに乗ってしまう。コワイっ!
だいたい、国民投票をやるのであれば、それは選挙にしてはいけない。なぜなら、一つの項目だけで賛否を問うのがここで言う「国民投票」であり、国の在り方全体に及ぶ民意を問うのが「選挙」であるはずだからです。国民は、「郵政問題」には賛否を示しても、そのほかのことまで小泉さんに一任するわけじゃない。それを強引に郵政問題に一本化して、ムリヤリほかのこともひっくるめての猫ダマシ選挙。やりたいのなら、一つずつ何度でも国民投票をやればいい。スイスなどにみられるように、欧米各国は単一問題での国民投票を何度も実施しているといいます。そのたびごとに総選挙をするなんて、聞いたことはありません。
国民がそれほど関心も興味も持っていない「郵政民営化」を唯一の旗印のこの小泉ジャイアン解散、どう考えても筋が通らないのです。
日本には「国民投票法」がないから実施はできない、という御用学者もいます。しかし、例えば原発問題、産廃施設問題、市町村合併問題などで、地方では幾多の「住民投票」が行われ、それなりの成果を挙げてきたじゃありませんか。それは、その時々に住民が条例を作るように地方議会に働きかけたりした結果でしょう。それなら、国会も少しは地方を見習って、その問題ごとに特例法を作って大好きな「国民投票」をやってみたらいかがですか?
自分たちの思惑と違う結果が出ることを恐れて、議員さんたち、そんなことは考えもしなかったでしょう。だから、今回急に「国民投票」だと言うことに、何の不思議も感じないのです。不勉強きわまりない!
繰り返します。「選挙」と「国民投票」は、根本的に違うものなのです。朝日新聞も、本当はそれをツッコミ人が引用した記事の解説欄などで指摘するべきだったはずです。
もっとも「記事捏造事件」発覚で、それどころじゃないんでしょうが。
しかし、最後にこれだけは言っておかなければなりません。 「憲法改定」についての国民投票は、「日本国憲法 第9章・改正 第96条」に以下のように規定されています。
第96条 この憲法の改正は、各議院の総定数の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
ここに書かれた「特別の国民投票」と、今回の小泉自民党が喚き散らしている「国民投票」とは、言葉は似ていてもまったく別物である、ということはこれでお判りでしょう。
国の在り方そのものを定めた基本法である憲法と、個々の事案・法案とは、決して一緒に論じられません。
自民党がやたらと「国民投票」と言い出したのは、もしかしたら、憲法改定を視野に入れて、「国民投票」に国民を馴らしておいてしまおう、というイカサマ策略なのかもしれません。その意味からも、自民公明の唱える「国民投票論」にうかつに乗ってしまってはならないのです。
郵政民営化なんかより、もっと大事なことがいっぱいあるんだあーっ!
と叫んでおきます。
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