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その15
今週のネタはこちら↓
●最近の各紙から
とにかく「憲法改正」したい方たちがやたら幅をきかせる、ちょっとホラーな夏が来そうです。そのための動き、始まっていますが・・・。
論点 憲法
改正への国民投票法案
「成立が急務」 自・民・公が一致
(読売新聞6月5日朝刊)
<略>憲法改正のための国民投票について憲法は96条で、「過半数の賛成を必要とする」と規定しているだけだ。だれが、どんな形で投票するのか、具体的な手続きを定めた法律はない。<略>
 衆院憲法調査会の論議では、この手続き法の不備は「国会の怠慢」との反省もあり、論点の一つとなった。自民、公明両党は昨年末、民主党は今年春、それぞれ独自の国民投票法案をまとめた。両案の主な相違点は、投票権者の年齢やメディア規制の是非などである。
 投票権者について、与党案は20歳以上だが、民主党案は18歳以上だ。 与党案は投票予想の公表禁止、虚偽報道の禁止などの報道規制を盛り込んでいる。民主党案は、報道の自由は「特に保障されなければならない」とし、規制には反対している。<略>
発議要件「総議員の3分の2」
自民 解決に懐疑的見方も
(読売新聞・同)
<略>改正案の成案を得るための最大のハードルは、「憲法改正は各議院の総議員の3分の2以上の賛成で国会が発議する」との憲法96条の規定だ。<略>
 この「3分の2以上」の壁が高すぎるとして、自民党新憲法起草委員会の小委員会要綱は国会の発議要件を「3分の2以上」から「過半数」に緩和するとした。<略> だが衆院憲法調査会の議論では「国会の2分の1以上の賛成で発議できれば、政権が交代するたびに改正が発議され、国民投票で否決されることも起こり得る。代議制に対する信頼まで損ないかねない」(民主党の枝野幸男氏)といった反論も与野党から相次いだ。
  公明党も「規定は妥当との意見が大勢」(論点解説)と、96条維持の立場をとっている。
欧州国民投票「ノン」目撃
「二の舞い怖い」
中山衆院調査会長 改憲へ教訓
(東京新聞6月9日朝刊)
 欧州憲法の批准を拒否したフランス、オランダ両国の国民投票に、中山太郎衆院憲法調査会長が衝撃を受けている。
  中山氏は保岡興治自民党憲法調査会長とともに、先月28日から今月3日まで両国を訪問。<略>
  両氏はフランスで、エッフェル塔周辺地域であるパリ15区の投票所を視察し、同区長とともに開票状況をテレビで見守った。しかし、シラク大統領の敗北宣言を聞くことになり、「直接民主制のすさまじさを見せつけられた」(保岡氏)。<略>
  この結果について、中山氏は8日の記者会見で、「われわれが経験したことのない民主主義の形。はっきり言って怖い。(議会の多数を占めていると)思い込んでしまったら、シラクの二の舞いになる」と感想を吐露。「憲法改正では焦点を絞り、どういう国をつくるかイメージしやすくすることが重要だ」と教訓を語った。<略>
憲法改正の国民投票法案
今国会提出見送り 与党方針
(読売新聞6月9日朝刊)
<略>同法案については、衆院憲法調査会の自民、民主、公明3党の幹事らが中心となって、今国会への提出を目指していた。しかし、同法案を審議するため、現在の衆参両院憲法調査会を衣替えする「ポスト調査会」の設置が遅れていることから、法案提出も急ぐ必要はないと判断したものだ。中山氏は「受け皿(のポスト調査会)がいつ出来るかによるが、今国会提出にこだわらない」と述べ、保岡氏も「今国会提出は無理であり、無理することはない」と語った。
<略>同法案の今後の取り扱いについて、中山、保岡両氏は、9月にも与野党合同で海外の国民投票の実態調査を行った上で、民主、公明両党と詰めの協議を行い、次期国会に提出したいとの考えを示した。
 当然のことながら、いくら愛国心を憲法の条文に入れたくても、親をうやまえだの家庭を大事にしろだのとお節介を書き込もうとしても、近隣諸国と仲良くするよりも強い日本を鼓舞するような元気いっぱいの文章を押し付けたくても、まあ、そう簡単にはいきません。国民投票ってヤツで、「憲法改定賛成」が過半数を得なければ、憲法は変えられないのです。
  それも、衆参両院で、まず議員総数の3分の2以上の賛成がなければ、「憲法を変えるための国民投票をやろうぜ」、って「発議」もできないのです。でも、民主党のソートー部分が「改憲派」になっちゃいましたから、とりあえず、国会段階では、いつでも発議だけはできるという恐ろしい状況にはなってしまっているようです。

  それでですね、もう図に乗った3党は、読売新聞5日付に見られるように、そろそろイケルぜっ、とばかりに「成立が急務」と走り出そうとしていたのです。まあ、いろいろと意見の相違点はあっても、とにかく成立させよう、というわけですね。

  もちろん、このような動きに危機感を持つ市民グループが、「いずれ国会で発議され、否応なく国民投票をせざるを得ない状況が来るのであれば、それに対処するために、改憲派の言いなりにならずに、きちんとした法案を市民の側から提案すべきだ」として「市民案」を作るという運動を始めていたりもします(しかし、社民・共産両党は、国民投票そのものを拒否する姿勢ですから、当然、この市民グループとは共闘できません)。

  とまあ、ここまでは中山さんや保岡さんたちの自民党勢、圧倒的な攻勢でした。改憲大賛成の読売新聞の記事も、なんだかちょっと喜んでるみたいでした。 ところが、フランスのEU憲法批准についての国民投票を目の当たりにして、ドドッと腰砕け。最近までのイケイケおじさんお二人はどこへ行っちゃったんでしょう。
 それにしても「直接民主制のすさまじさを見せつけられた」とは一体どこの国の政治家の発言なのでしょうか。直接民主制を怖がるような政治家が「民主国家」の、それも「自由民主党」という名の政党の所属だったとは、パロディにもなっていませんね。
  改憲はしたい。でも、直接民主制(つまり国民投票)は怖い。だから、とりあえず今回は国民投票法案の提出は見送ろう。提出してしまったら、少なくとも、国民投票へ至る道筋、スケジュールぐらいは提示しないといけない。フランスで見てしまったあの状況を考えると、とてもそんな勇気は出ません、とでもいうわけでしょうか。
 なにしろフランスでも、国会内では「EU憲法批准派」が圧倒的多数を占めていたのに、国民投票でそれをあっさりひっくり返されたわけですから、日本の国会で圧倒的多数派を形成している「改憲派」がビビッてしまうのも分からないわけじゃないのです。

 市民グループが言うように、きちんとした国民投票法案は必要ではあろうと思います。しかし、「憲法改正の是非を問う国民投票」などというものを、やらなければならないような状況にだけは追い込まれたくない。
9条の持つ中身を、なんとか本来の理想にまで押し返した上で持ち続けたい。それが実現できれば、「憲法改定国民投票」など、する必要もなくなるでしょうから。
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