今週の「マガジン9」

 今年5月、にわかに憲法論議が盛り上がった時期がありました。「私の内閣で憲法改正をする。まず96条から」と安倍さんが公言した直後の憲法記念日とあって、テレビや新聞、週刊誌、ネットの番組など、私が知る限りで初めて「憲法96条」や「立憲主義」という言葉が、お茶の間に飛び出してきた、そんな印象を受けました。その後、何が起こったかというと、世論調査での96条改正賛成と96条改正反対の%の数字が入れ替わり、安倍政権は「96条改正」をぴたっと言わなくなりました。
 その代わりのように安倍首相が言い出したのが、憲法9条の解釈改憲をして「集団的自衛権の行使ができるようにする」というもの。これについて多くの国民は、「憲法9条の文言を変えるわけではないから、解釈を変えるだけだから、集団的自衛権は認めてもいいのでは? これまでも解釈を変えてきたんだし」と思っている節もあるようで、今ひとつ議論が盛り上がりません。
 しかし、憲法の番人と呼ばれる内閣法制局の長官を務められた阪田雅裕さんは、「これは9条の規範からは大きく逸脱している。集団的自衛権を認めるということは、自衛隊が外国の軍隊と地球の裏側にまで出かけていき、武力行使すなわち戦闘行為に参加できるようになるということですから」と、断言されています。
 「解釈改憲」というつかみどころのない言葉のもと、時の政権が閣議決定で日本の国是としてきた、「日本は戦争をしない平和主義の国」を捨て去ることに、強い懸念を持ちます。このままでは、国民不在のまま、国民投票にかけることなく、「戦争参加もやむなし」の国になるということです。阪田さんも「これは国民に大変な覚悟を強いることになるでしょう」と語っています。
 来年の憲法記念日を待っていたのでは、間に合わないかもしれません。「マガ9」では急いで、この問題の本質を、広めていきたいと考えています。この流れをひっくり返すことができるのは、たぶん「世論」だけです。阪田さんのインタビューは、後日「マガ9」で掲載の予定です。

(水島さつき)

 

  

※コメントは承認制です。
vol.426
立憲主義の危機、再び
」 に5件のコメント

  1. 花田花美 より:

    もし、安倍さんが、
    「アメリカを他国の脅威から守るため、もっと日本の自衛隊を都合よく動かせるようにする必要がある。そのために集団的自衛権を認めなければならない。」
    ・・・と言ったら、ほとんどの人が反対するだろうな・・・。
    安倍政権の本質を知ったら、国民はNOをつきつけると思います。
    知らないから、見過ごしていられるのだと思います。
    どういうふうに知らせればいいか?
    伝える人のレベルに合わせるのも大切かもしれません。
    もしかすると、9条さえ知らない若者もいるかも・・・。憲法が何かもわからない人もいるかも。
    あと活字が苦手な人もいる。YOUTUBEのアニメとかでわかりやすくできればいいかも。
    アニメまでいかなくても、イラストのスライドとか。スマホで見やすいもの。
    難しそうでなくて、とっつきやすいもの。
    そういうのがすでにあれば広めたり・・・。

  2. magazine9 より:

    いつもコメント、ありがとうございます。伝え方、工夫しないとですね。

  3. ピースメーカー より:

    >知らないから、見過ごしていられるのだと思います。

    いえ、大体の人は知っていると思いますし、知っているからこそこのような世論調査の結果が出るのでしょう。
    ・集団的自衛権の憲法解釈、「変更」反対59%、賛成は27%(朝日新聞社の世論調査〈8月24、25日実施〉)
    ・政府が今国会に提出した特定秘密保護法案に反対が50・6%と半数を超えた。賛成は35・9%
    ・「武器輸出三原則」の見直しを安倍政権が検討していることには47・3%が反対し、賛成は41・6%
    ・安倍内閣の支持率は60・7%で、十月初旬の前回63・3%から2・6ポイント減、不支持は前回比2・9ポイント増の27・0%(以上、共同通信社が十月二十六、二十七両日に実施した全国電話世論調査より)
    しかし、知っているのもかかわらず支持率がこの程度しか下がらないということは、ほとんどの日本国民が時の政権が閣議決定で日本の国是としてきた、「日本は戦争をしない平和主義の国」を捨て去ることに、あまり懸念を持ってはいないということを立証していると思います。 さらにアメリカだけでなくオーストラリア、イギリスも日本の集団的自衛権行使を支持し、懸念を表明しているのは日本に対して強硬的な韓国、中国のみという有様です。
    それらの現実を踏まえ、さらに杓子定規的な立憲主義論も通用しないという前提で臨まないとダメだと思います。

  4. ピースメーカー より:

    北朝鮮は置いとくとして、現在、日本の集団的自衛権の行使について懸念を示しているのは韓国と中国です。
    とはいえこの二国、日本への強硬的姿勢を強め続けており、日本の領有権も奪い、あるいは縮小させようと躍起で、さらに戦前の過去を非難し続けますが、戦後の平和主義の国としての日本の歩みをまるで評価しません。
    加えてこの二国は軍拡もし続け、武器輸出も躊躇い無し…。酷な言い方をすれば、フーリガンが平和憲法のサポーターをしているようなもので、普通の人なら如何に内心では平和を望んでいても、現実に白けてしまうでしょう。
    「平和憲法は残して欲しい。日本人が戦場で殺し合いをするなんて嫌だ。だけど現実を見てしまえば平和主義だけでやっていけるとは到底思えない」というのが一般的な国民の心情であり、それが集団的自衛権や武器輸出三原則見直しへの反対が賛成を上回りながら、安倍政権(≒日米安保)の高支持率として現れているのでは?
    さらに安倍政権と韓国、中国との首脳会談がいまだに開かれていないにも拘らず、一般的な日本国民がそれを異常とは思わず、さながら馬耳東風のごとく静観しているという事態もまた深刻ではないでしょうか?
    これらの現実を冷徹に直視したうえで率直に言えば、少なくとも冷戦以降の日本のリベラルの活動や平和主義運動は、9条を風前の灯に追いやった安倍政権を誕生させてしまったことを踏まえ、「完全に失敗だった」と結論付け、そこから「平和主義とは何か」を問い直すことから始めなければダメなんじゃないかと私は思います。

  5. 坂本竜馬と志士 より:

    何故反対をするのか分からない。自分の頭の上に飛んでくるミサイルを撃ち落とすのは当たり前じゃ。日本国民が被害者になった時責任を負うことができるのか。ミサイルで攻撃されたら何百、何千の日本の子供を死に追いやることになるよ。その時泣いてももう遅い。安倍さんのせいにしてももう遅いよ。自分のせいだからね。野党達は、頭の中に水しかはいってないの?現実としてこれから起こり得ることを想定するべきじゃないの。はっきりいって無知、幼稚すぎる。集団的防衛権は絶対必要。平和ボケ!

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