一般の法律と憲法の違いは、国が国民に守ることを命ずる前者に対して、後者は国民が国に守ることを命じるもの――ということを、先日開かれたマガ9学校「参院選前に考える!立憲主義と民主主義~主権者って何をする人?~」での、伊藤塾の塾長、伊藤真先生の講演で再確認しました。
伊藤先生は、自民党の改憲案が憲法を一般の法律と同じレベルにしようとしていると指摘し、たとえばこんな話をされました。
「自民党議員の改憲論者は、『国民は権利を主張するのであれば、義務も負うべきだ』などと言いますが、たとえば私が友人にお金を貸したのに、彼が私にお金を返さなかったら、私には彼に返済を要求する権利があります。そして彼にはお金を返す義務がある。私には何の義務も生じません。自由についてもそう。国民の自由の権利に義務は伴いません。義務を負うのは、国民に自由を保障する国の側なのです」
自民党改憲案の問題点を鋭くかつ丁寧に指摘する伊藤先生の話を聞いていると、同党は立憲主義や民主主義をやめたいのではないかと思えてきました。
当日はタレントの春香クリスティーンさんも登場されました。国会議員の追っかけが好きで、著書『永田町大好き! 春香クリスティーンのおもしろい政治ジャパン』がいまごろ書店に並んでいるであろう彼女からは、スイスの憲法についての話も聞きました。
同国の憲法には、たとえば、アルプスの山越えに自動車を使ってはならない(貨物列車で運搬)というような、日常的な事柄に関する規定もたくさん記されており、その改定の是非について、頻繁に国民投票が行われるそうです。
人口800万人のスイスだからこそ可能なのでしょう。とはいえ、憲法が「国民が国に命じるものである」ことに変わりはありません。スイスの中学生が自国のEU加盟の是非について当たり前のように議論をするのは、自国のことは自国で決めるという意識の表れだと思います。
後半に登壇していただいた鈴木邦男さんからは、個人の尊厳と両性の本質的平等を定めた憲法24条を称えた守屋浩の幻の歌『24条知ってるかい』を聴かせてもらいました。ジャズ風の軽快で明るい曲でした。
「かりに憲法を変えるにしても、議論には5年はかけるべきであり、その際には自衛隊の存在をきちんと認めたほうがいいのではないか」という鈴木さんは、自衛隊が発足後、1人も殺していないことを世界の軍隊の見本にすべきであるとして、こう続けました。
「将来、軍隊をなくしていこうという世界の潮流に合わせて、自衛隊→保安隊→警察予備隊→警察と戻していけばいい」と。
伊藤真先生、春香クリスティーンさん、そして鈴木邦男さんの素敵なコラボでした。
(芳地隆之)