今週の「マガジン9」

 アパレルブランド「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長が先日、同社に「世界同一賃金」を導入する考えを明らかにしまし た。店長候補として採用した正社員全員と役員の賃金体系を統一し、海外で採用した社員も国内と同じ基準で評価、成果が同じなら賃金も同水準にするとのこと です。
 ファーストリテイリングはグローバル企業の代表格といわれています。社内公用語を英語にすると宣言したことも、そう評価されるゆえんです。
 グローバルという言葉をメディアで見聞きしない日はない昨今です。いわく「グローバルな人材を育てよ」、いわく「グローバルな展開なくして企業の未来は ない」。けれども私にはそれらの意味がよくわかりません。「グローバルな人材」って、流暢な英語でどんどん商談をまとめる人のことでしょうか? そうした 優秀なビジネスマンはむかしもいまも日本の企業にはいます。「グローバルな展開」とは海外でM&A(企業の合併や買収)を積極的に展開するということ?  それも日本の企業はとうのむかしからやっています。
 大企業だけではありません。全国各地に目を凝らせば、世界トップシェアをもつ地方の中小企業も少なくないのです。
 「世界にはすごい技術をもっている企業はたくさんある。でもその多くは大企業。日本のように、世界に誇れる技術をもつ中小企業がこれだけたくさんある国 はない」という言葉を、私は水田や畑のなかにぽつんと立つ、ある地方の航空機部品メーカーの社長から聞いたことがあります。彼は「うちの技術は、外国企業 からの注文にはすべて対応できる」と胸を張っていました。
 一中小企業が、その会社でしかできない「オンリーワン」の製品をもって、直接、世界の市場とつながる。それがグローバル化の本質であって、社内公用語を英語にするとか、給与を世界中で統一するといったことは、グローバル化の末端の話に過ぎません。
 巷でグローバル企業ともてはやされている会社は、大量生産・大量消費型という、日本ではすでに過ぎ去った市場で、最後はへとへとになるような消耗戦に挑もうとしている。そんな印象があります。
 私にはその先に日本企業の明るい未来は見えないのです。

 

  

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