三上智恵さんのマガ9連載をもとにした新刊『風かたか 「標的の島」撮影記』の出版記念トークイベントに行ってきました。
トークのお相手は、ジャーナリストの安田浩一さん。現在公開中の三上さん監督映画『風かたか 標的の島』の話にはじまる多岐にわたる内容で、「沖縄ヘイト」についてのお話(大月書店さんのFBに一部発言が紹介されています)は、特に聞き応えがありました。
終了後の質疑応答の中でも、印象的だったくだりがありました。「報道を続けている原動力」について問われた三上さんの言葉です。
「沖縄戦の経験者で基地反対の運動に参加している人たちから『いつか後生(グソウ・あの世のこと)に行って戦争で亡くなった人たちに会ったときに、沖縄はもう、戦争の島でも基地の島でもなくなったんだよ、と言いたいんだ』という言葉を何度も聞きました。でも、そう言いながらたくさんの人たちが、(「基地のない島」を見ないままに)亡くなっていってしまった。その思いを引き受けなきゃいけない、と思うんです」
ちょうど先週、〈「希望のエリア」のあきらめない人々〉の最終回で、紫野明日香さんが〈「あの時どうして大人は戦争を止められなかったの?」と未来の子どもたちに聞かれるようなことを絶対に繰り返したくない〉〈希望のエリアで声を上げることは、未来へ命を繋げることだと思っている〉と書かれていたことを思い出しました。
「このままじゃいけない」と声をあげることは、「未来に平和を残そう」と行動してくれた先人たちの思いを引き受けることであり、同時に子どもたちの未来へもつながっている。そんな当たり前のことに、改めて気付かされました。
さらに「安保法制成立のときのように、『反対したけど駄目だった』ことが繰り返されると、どうしても絶望しそうになる。三上さんはなぜ絶望せずにいられるのか」との質問も。三上さんは「私自身は、実はすごく悲観的な人間なのですが」と前置きしつつ、「でも、沖縄には『絶望しない人たち』がたくさんいるんです」と答えられていました。
「あきらめてないんだから負けてない」
「勝ったか負けたかじゃなくて、『闘った』ということそのものが、次の世代に残せる財産なんだ」
三上さんが、沖縄で周りの人たちから聞いた言葉だといいます。
毎日のニュースを眺めていれば、絶望するのはとても簡単。それでもなんとか「希望」のほうを向いていたい。そう感じた夜でした。
(西村リユ)