今週の「マガジン9」

 2016年6月、英国で「EU離脱」の是非を問う国民投票が行われました。予想を大きく裏切って、結果は「離脱を支持する」が多数。結果が出た後になって「What’s EU(EUって何)?」と検索したり、「(離脱に投票したことを)後悔している」とツイートした英国民が数多くいた、というニュースも、世界に衝撃を与えました。
 これを受け、「国民投票は衆愚政治に流れるから危険だ、やるべきではない」という批判も聞かれました。しかし東京外国語大学教授の伊勢崎賢治さんは、そうした批判には違和感がある、と言います。
 「議会制民主主義においても、民意は投票行為によってだけ反映されるものではありません。デモや抗議行動も、そして国民投票もひとつの民意の発露のかたちなのであって、『民主主義を守るため』といって、国民投票という民主的な手続きを否定することはおかしいと思います」
 リスクがあるからやるべきではない、と切り捨てるのではなく、そのリスクをどう低減するか、どうすれば自分たちが主権者としての意識をもち、「後悔している」とつぶやかないで済むような選択をできるのかを考える。それこそが、私たちの民主主義を強くしていくのかもしれません。
 日本においても、憲法には改憲のための国民投票の定めがあり、2007年にはその具体的な手続きを定めた国民投票法が成立しました。現在の政権が進めようとする改憲論議にはもちろん反対ですが、だからといって「国民投票」という手続きのあり方を、無視し続けていいとも思えません。数の力で改憲発議が実現され、国民投票が実施──となりかねない国会の状況を鑑みれば、なおさらです。

 英国の例だけではなく、世界の多くの国々では、さまざまなテーマで国民投票を実施し、その結果を政治に反映して(ときには反映せずに)きました。2月12日のマガ9学校では、東京外国語大学伊勢崎ゼミの学生たちによる報告と、伊勢崎さんと憲法学者・小林節さんとの対談を通じて、そうした各国の事例からの教訓を読み解き、私たちが国民投票や主権者教育と、そして民主主義とどう向き合っていくべきなのかを考えたいと思います。ぜひご参加ください(詳細・お申し込みはこちらから)。

(西村リユ)

 

  

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