東京電力福島第一原発の事故によって、福島県から自主避難している子どもが、避難先の学校でいじめを受けていた問題が報道され、話題になりました。いじめの問題だけでなく、事故から5年半以上が経ついまなお、全国で多くの方が避難生活を余儀なくされていること、そして避難先での孤立の問題をあらためて意識させられました。
雨宮処凛さんも今週のコラムで触れていますが、自主避難者には補償がほとんどなく、さらに母子だけの世帯、夫を地元に残して二重生活を送っている世帯も多くあります。頼れるつながりのない場所で、経済的にも精神的にも厳しい状況に置かれている方がいるのです。
そんななか、福島県は、避難者への住宅の無償提供を来年3月で打ち切る方針を出しています。これまでは、災害救助法による被災者への「みなし仮設住宅」として、公営住宅などが提供されてきました。しかし来年4月から、避難者は住んでいる公営住宅から、原則、退居しなくてはなりません。自主避難者の方や支援団体が「やっと築いた生活やつながりを、また奪われる」と撤回を求めています。
来年3月で住宅無償提供が終了する世帯を対象に福島県が行った「住まいに関する意向調査」(2016年6月20日発表)によれば、県外避難者の77.7%が、「来年4月以降の住宅が未定」だと回答しています(県外避難3453世帯が回答)。こうした状況にもかかわらず、4月以降の対応策は各自治体任せの形になっていて、まったく充分ではありません。このままでは住まいを失って、追い詰められる方が出てきかねません。
この問題については、11月18日に開かれた参議院復興特別委員会で、山本太郎議員も質問(動画はこちら)をしていましたが、国の政策や東電によって起きた事故であるにもかかわらず、いわば加害者側が避難解除の基準を決め、一方的に線引きをすることに、疑問を投げています。日本では何かと「当事者不在」のままで政策が決められることが多いように思います。チェルノブイリ法で「移住の権利」が認められたように、避難するのか帰還するのか――それは本人に選ぶ権利があり、その決定を国は尊重するべきではないのでしょうか。
少し前の「この人に聞きたい」のコーナーでは、医師の牛山元美さんが、子どもの甲状腺がんについてお母さんたちが心配に思っても、それを口にしづらい状況にあることを話してくれました。自主避難者の方からも、バッシングを受けたり、子どもがいじめを受けたりするので、声を上げづらいという話を聞きます。これから、帰還困難区域以外の避難区域解除がさらに進められていくでしょう。いろいろな意見があるかもしれませんが、不安なく声が上げられ、それに耳を傾ける社会でなくてはいけないと思います。
マガジン9でも、引き続きこの問題を取り上げていきたいと思います。
(中村未絵)