11月15日、政府は南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣される陸上自衛隊の部隊に、昨年成立した安全保障関連法に基づく新任務「駆けつけ警護」を付与することなどを盛り込んだ実施計画を閣議決定しました。現地の治安状況などを懸念する声もある中、安倍首相はTPP特別委員会で「(自衛隊が活動する首都の)ジュバは比較的落ち着いている」と述べたとのこと。
しかし、何度も南スーダンを取材している朝日新聞アフリカ特派員・三浦英之記者は今月14日のツイートで、7月にジュバで起こった大規模な戦闘の際、「自衛隊の宿営地のすぐそばで丸2日間、激しい銃撃戦が起きていた」ことを伝えています。反政府勢力200人と政府軍400人が対峙し、両勢力合わせて28人が死亡した銃撃戦。反政府勢力が立てこもったビルは、まさに宿営地のすぐ隣のビルだったといいます。
他にも、この7月の戦闘の際には民間施設のみならず国連施設までもが襲撃され、政府軍兵士によるNGO職員への集団レイプ事件も発生。反政府勢力のトップ自身がインタビューに答えて「(政府軍との)和平合意は崩壊している」との認識を示した、とも書かれています。
10月に現地を訪れたはずの稲田朋美防衛相、そしてその報告を受けたであろう安倍首相は、こうした事実を知っていてなお「情勢は落ち着いている」「(現地で起こっているのは)衝突ではなく戦闘行為」と繰り返してきたのでしょうか。16日の東京新聞は、民進党の後藤祐一議員が、自衛隊が稲田防衛相に提出した「現地状況報告」の開示を求めたところ、ほとんどすべての情報が黒塗りされた状態で開示されたことも伝えています。
東京外国語大学教授の伊勢崎賢治さんは、「住民保護」という目的のためには中立性をかなぐり捨てて武力を行使することもあるのが現在のPKOであり、そもそも自衛隊派遣の条件とされているはずの「PKO五原則」は意味をなしていないと繰り返し指摘されてきました。そんな状況下で、自衛隊員のリスクをさらに大きく高めるであろう決定が、最低限の正しい情報さえ出されないままに進められていくことは、どう考えてもおかしいと感じます。
先述の三浦記者は、南スーダン取材で感じたこととして、こんなふうにもツイートされていました。
〈PKO派遣は南スーダンのためではなく、積極的平和主義を掲げる現政権のパフォーマンスの意味が強いように見える。視界の先には南スーダン市民や自衛隊の家族の姿はなく、国際社会での発言力の維持や国際貢献をしているという「自己満足」ではないか〉
そうだとしたら、その「パフォーマンス」や「自己満足」は、あまりにも大きな犠牲を生み出しかねません。
(西村リユ)