今週の「マガジン9」

 世界中が注目し驚いたイギリス国民投票による「EU離脱派」の勝利。しかしこの結果には、当のイギリス国民も驚きうろたえたというのだから、事態はそう単純なものではないようです。「移民や難民が自国に入ってくることで排外主義が強まった」「右派的ナショナリズムの台頭か?」「トランプ氏の躍進など、世界は右傾化している」という論調も目立ち、不安にかられている人も少なくないようです。しかし私は、Yahoo!ニュースの人気コラムでもおなじみの、ブレイディみかこ氏の最新コラム「地べたからみたEU離脱」を読み、この結果は、EUの中にも埋め込まれている新自由主義的な経済政策に対しての批判票であり、その支持者がすなわち、排外的でナショナリストだと論じてしまうのは、短絡的だろうと感じるのです。

 彼女の過去のコラム(近著『ヨーロッパ・コーリング』〈岩波書店〉に収録。レビューはこちら)の中にある一節「これはもはや右とか左とかいう横軸の問題ではない。(略)上方のまだ資本で儲けられるごく少数の富裕層だけがどんどん富を増やし、床の上でおこぼれを待っている犬の数は増えているのに肉汁一滴も落ちてこないという、大変いびつな形になっているから犬たちが狂ったように吠えている」に目が留りました。なるほどこれは、安倍首相が繰り返し言う「トリクルダウン」であり「アベノミクスの果実」に置き換えられる。果実がいつ木から落ちてくるのか、口をあけてまっていても、果汁1滴も落ちてきやしない。しかし、何故か日本人は、吠えずにじっと待つ。対してイギリスの吠える犬は、吠えるだけでなく、政界に揺さぶりをかけ続けている…。

 イギリスの没落や解体を言う人もいますし、実際、その側面もあるのかもしれませんが、産業革命が起きたかの地から、新しい経済や社会システムがまた生まれる、という見方もまたできたりするのではないでしょうか。(期待をこめて)そんなことを考えさせられた、今回の「イギリスEU離脱」をめぐるニュースなのでした。

 さて、選挙まっただなかの日本ですが、私たちにとって次の国政選挙は、民主主義を手放さないためにどれだけ、主権者ががんばれるか、というところにつきるのではないでしょうか。それこそ、右や左のイデオロギーは関係ないのです。だからこそ野党共闘が組めているのです。次の闘争のステージのためにも、民主主義を終わらせてはいけません! 選挙に行きましょう。

(水島さつき)

 

  

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