ここのところ、編集部で憲法9条をめぐる議論がヒートアップすることがありました。マガジン9の前身である「マガジン9条」がスタートして10年と6カ月が経ちましたが、国民の半数以上が反対する新安保法案が強行採決されたことをどうとらえるか、と話したとき、スタッフからもさまざまな意見が出たのです。
たとえば、この現状において9条は形骸化されてしまったのだから、自衛隊の際限なき派遣に歯止めをかけるには、国連の非武装分野での活動に限定するなど、明確な条件を条文に付与した方がいいというもの。これは本サイトのコラムニストの方々が書かれている内容とも通じるものがあり、私自身もその主張に首肯するところが少なくありません。一方で、こんな意見もありました。
「自分は『9条を未来永劫変えるべきじゃない』とは考えていない。しかし、安倍政権のように、条文に書かれていない間隙をついて、集団的自衛権の行使が可能といった都合のいい憲法解釈をしようとする政権がこれからも出てくるだろう。こうしたなか、いわゆる『護憲的改憲論』に労力を費やすことに価値があるのだろうか」
その人はむしろいまやるべきは得票数がより正確に議席数に反映されるような選挙制度をつくる運動を行うことではないかとして、こう続けました。
「憲法は70年変えられなかったけれど、選挙制度は二十数年前に変更されている。同じ力をかけるなら、選挙制度ではないか」
この意見を聞いた後、いくつかの護憲的改憲案を読んでみました。その内容については賛同するのですが、では憲法の条文としてどうか、すなわち一国の理念を表する言葉としてどうかといえば、なんだか収まりが悪い気がする。
そう感じると同時に思ったのです、「憲法9条の文言って、やっぱりいいね」と。
現実からみれば9条はツッコミどころ満載かもしれません。しかし、賛否両論は、それだけ私たちを引き付けるだけの力をもっているともいえる。この議論はこれからもまだ続きそうです。
8年前に書いた、マガ9でのインタビューを集めた本『みんなの9条』の書評を思い出しました。あらためて読み直すと、いまの気分に近いものを感じます。
未読の方、書店で、あるいは図書館で、お手にとってくださいませ。
(芳地隆之)