今週の「マガジン9」

 日メコン首脳会議の「メコン」にはタイ、ベトナム、ラオス、カンボジア、ミャンマーの東南アジア5カ国が含まれるそうです。去る7月4日、東京で開かれた同会議で、安倍晋三首相はこれら諸国に対して7500億円の支援を約束しました。

 安倍外交の大盤振る舞いの一端を見る思いです。2013年1月のアフリカ諸国歴訪しかり、2015年1月の中東訪問しかり。しかも、そこには相手国の経済発展に寄与することと並んで、あからさまな政治的意図も込められています。

 日メコン首脳会議では、台頭する中国の力を一緒になって抑えこもうという日本側のメッセージも伝えられました。それは今年初めにエジプトで、ISIL(イラクとレバントのイスラム国)と闘う周辺各国に総額2億ドル程度の支援を約束し、結果的に前年よりISILの人質になっていた日本人2名が殺害されたことを思い出させます。

 これまでの援助外交が安倍政権の目指すところを後押ししてきたのかといえば、疑問です。

 お金をくれる日本に「積極的平和主義」を支持してほしいと頼まれれば、相手国の首脳は少なくともそのポーズはとるでしょう。しかし、日メコン首脳会議でいえば、上記の5カ国が足並みそろえて中国の脅威に備えるとは思えません。各国とも抱える事情が異なるからです。対米関係においても、日本の集団的自衛権の行使をアメリカが求めるエリアは東アジアではなく、主に中東地域であるという、同じようなズレが見られます。

 先日、自民党の国会議員が立ち上げた勉強会において、「沖縄の2紙をつぶさないかん」、「(軍隊を持たないナウルやツバルを)くそ貧乏長屋。とるものも何もない」と述べたといわれる作家の百田尚樹氏は、飲み屋でしゃべっているようなものだと弁明したそうです。とうことは、同氏はたとえば親交のある安倍首相と飲みながらこんな話をしていて、それが現在の外交に反映されている可能性もなくはない。

 そうした現状での税金のバラマキは、はたして日本の安全のためになるのか。

 一番困難だけれども、一番取り組まなくてはいけないことに着手するのが仕事というものだ、とかつて「できる」人から聞いた言葉を思い出しました。

 外交にとっての優先順位も同じだと私は考えます。

(芳地隆之)

 

  

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