気になるニュースがありました。
「昨年9月から過激派組織『イスラム国』との戦闘が続いていたシリア北部アインアルアラブ(クルド名:コバニ)について、イラクのクルド系メディアは26日、クルド人部隊が『イスラム国』を撃退し全域をほぼ制圧したと報じた。(中略)国際社会の注目度が高いコバニ攻防戦で勝利できれば、米軍が主導する有志国連合にとって軍事介入後、最大級の戦果となる」(1月27日付毎日新聞)
「ドイツ連邦議会は(1月)29日、イスラム教スンニ派過激派組織『イスラム国』に対抗するイラク北部のクルド人治安部隊を訓練するための連邦軍要員の派遣を、賛成多数で可決した」(1月30日付産経新聞)
後者に関しては、ドイツ政府が昨年12月にクルド人自治区への軍要員派遣を決めており、国内ではドイツ基本法(憲法)に抵触するとの議論がありました。当然でしょう。これは自分たちが加わらない地上戦をクルド人部隊にやらせるということです。
中東地域に住むクルド人の人口は約2000万人。ただし、居住地域がイラン、イラク、シリア、トルコなど、複数の国々にまたがっています。世界最大の少数民族といわれるゆえんであり、独立志向は強い。しかし、周辺諸国はそれを望んでいません。クルド人の独立国家を目指すクルディスタン労働者党をトルコ政府は「テロリスト」とみなしています。かつてイラクのサダム・フセイン大統領が国内東部に住むクルド人を化学兵器で虐殺したのは、彼らが敵対するイランのクルド人と通じていると疑ったからです。
今回の作戦が功を奏し、イスラム国支配地域がクルド人部隊の手に落ちれば、クルド人のなかで国家樹立の機運が生まれると思います。そのとき欧米はどのような態度をとるのでしょうか。もし、その動きを黙殺すれば、クルドの人々は「イスラム国を掃討したわれわれは利用されただけだ」と思い、それが新たな憎しみの連鎖になるかもしれません。
欧米の対中東政策は、『アラビアのロレンス』の時代からたいして変わっていないのではないでしょうか。
客人をもてなす、義理人情に厚いといわれるムスリムの人々の心情は、日本人のメンタリティと重なる部分が多い。その日本(少なくともムスリムの人々にそう思われている日本)が、ムスリムの人々を戦わせるような有志国連合に同調してはいけない。それは殺害されたとされるジャーナリスト、後藤健二さんの願うところでもないはずです。
ましてや「(日本人殺害の)罪を償わせる」などといった借りものの言葉を使うことなく、いまこそ日本は平和国家に向けて本腰を入れる時だと思います。
(芳地隆之)
芳地さんの書かれているとおり,将来,クルド人に独立の気運が高まっても,欧米諸国は黙殺するでしょうね。
ただ,喫緊の課題はISILの封じ込めであり,そのことでクルドも欧米も中東も手を握っているわけです。独立云々の話は,テロリストをどうにかできた後の話でしょう。ISIL放置で真先に害を受けるのはクルド人なわけですから。
「マスコミは『イスラム国』という呼称を早急に止めて頂きたい。ムスリムの方々が何度訴えても対応してくれない。ISILは国でもなければ、ムスリムと信仰心を共有しない殺人集団。そこを混同する人に配慮してよ。イスラムやムスリムを非難したり罵るリプが後を絶たない。誤解や偏見を植え付けないで。」
https://twitter.com/FIFI_Egypt/status/562750143133663234
これはタレントのフィフィさんのツイートであり、同様に日本在住のイスラム教聖職者が「連名による要望:『イスラム国』という名称の変更を希望します」として発表しました。
http://nagoyamosque.com/3166.html
この主張は全く正しいでしょう。
何より、在日外国人の人権問題に直結した主張です。
それ故、今後のマガジン9にて、読者によるコメント投稿に書かれていたもの以外は、「イスラム国」という呼称を禁止すべきだと思います。