先の衆議院選挙の投票率は52.66%と、戦後最低だった前回をさらに下回りました。
この熱のなさは何なのか? 「解散・総選挙の大義がない」とか「争点がはっきりしない」といったことがその理由として挙げられたものの、どうもしっくりこない。「この空気に近いものをむかし感じたことがあるぞ」と思いを巡らせていたら、25年前の東ドイツでの地方選挙に行き当たりました。
当時、留学生として同国に暮らしていた私は、「外国人でもこの国に6カ月以上在住している者であれば選挙権を有する」との制度に感心し、投票所に出かけました。地域の集会所のような建物では、横長のテーブルに選挙管理委員が2人座り、右側の人の前には投票用紙、左側の人の前には投票箱が置かれていました。
当時の東ドイツは複数政党制とはいえ、ドイツ社会主義統一党が主導的立場に立つと憲法で定められており(事実上の一党独裁)、各政党からは議席と同じ数の候補者だけが出馬。しかも、議員として相応しくないと思ったら×をつける、白紙は信任を意味する、日本の最高裁の裁判官の信任投票のようなものでした。
私は用紙を手に背後にある記載台に行ったものの、各候補者の政策や人となりをよく知らなかったので、キャビネで時間をつぶした後、結局、白紙で投票箱に入れました。そして、そのことを学生寮の友人に話すと、彼らは「それはまずいな」と言うのです。この国では投票する人は、たいてい投票用紙を受け取ったらすぐに隣の投票箱に入れる。キャビネに行く者は、候補者に×をつける現状への不満分子とみなされるのだと。
だから現政権に不満な者は選挙には行かない――それが彼らなりのプロテストでした。その後、私が「不満分子」として当局に呼び出されるといったことはありませんでしたし、そもそもそんなことはなかったのかもしれません。しかし、東ドイツが有権者にそんなことを考えさせる社会であった事実は否定できず、選挙によって言論や海外旅行の自由が実現する期待などもちえないものでした。
だから人々は通りへ出て、デモで自らの要求を訴えたのであり、それは時代の流れとも合致しました。東ドイツ政府が最大の友好国とみなしてきた(=忠誠を誓ってきた)ソ連がペレストロイカ、グラスノスチといった一連の民主化を進めていたからです。それは東ドイツ政府の姿勢とは相反するものであり、東ドイツはソ連から徐々に離反していき、最終的には当時のゴルバチョフ・ソ連共産党書記長から見限られます。
むかし話を長々と書いていると思われるかもしれませんが、私には、上記の東ドイツを日本、ソ連をアメリカに置き換えると、いくつかの共通点が見え、ひとつの国家が自らの抱えた矛盾に耐え切れず瓦解していった過去が、日本の近未来のイメージと重なってしまうのです。
投票率の最低値の更新は、人心が国から離れていっていることの表れでしょう。すでに有権者の半数近くに見限られているという事実を与党が過小評価して、勝利に驕っている、強烈なしっぺ返しを食らうどころか、この国全体が壊れてしまう。そんな危機感を抱いた選挙でした。
(芳地隆之)
投票したところで何もかわらない,絶望感しかない東独と,投票すれば,もしかしたら政権がかわりうる日本を比べるのは意味がないと思います。
投票率が低いのは問題だと思うんですが,内閣支持率は高いところを維持しているんですよね。心が離れたら支持はしないでしょうから,投票率のみを見て国家から人心が離れつつあるというのは,ちょっと早計じゃないでしょうか。
ただ,勝ったからといって与党はあまり調子には乗らないでほしいですね。
憲法学者の木村草太さんが7条解散の是非について、かなり鋭い指摘をされているのですが、マガ9でも同様の切り口で取り上げる事は出来ないでしょうか?
ビデオニュース・ドットコム ニュース・コメンタリ―(2014年11月22日)
【間違いだらけの違憲選挙】
ゲスト 木村草太氏(首都大学東京都市教養学部准教授)
「解散は首相の専権事項だ。」
われわれは国会議員や閣僚がこの台詞を口にするのを、耳にたこができるほど繰り返し聞かされてきた。〜
https://www.youtube.com/watch?v=utZfGWw7_5w
次は民主党の代表選挙ですね。左派誰も出ないで岡田さんVS細野さんで行ってしまうと、脱原発も憲法改正阻止も、全部ないがしろにされてしまうでしょう。共産党だけじゃいかんともしがたいし。しぶとく生き残った菅さんがどう動くかにかかってる気がするんですけど、下手なことすると次回、比例の順位を大幅に下げられるから何もしないで沈黙? でも沈黙しても岡田さんや細野さんじゃどうせ順位は下げられるんだから、ここは存在感示した方がいいぞ〜と思うんですけどね。