今週の「マガジン9」

 安倍内閣の女性閣僚ふたりが辞任したことで、マスメディアは大騒ぎ。とくに小渕優子氏は「女性活用」を謳った安倍政権の目玉だったこともあり、政権もショックだったようです。

 しかし、この「女性活用」という言葉が示すように、安倍政権にとって、女性は同等のパートナーとしてではなく、あくまで男性の補完としての役割としか考えていなかったのではないかと思われます。「女性活用」という言葉自体が、そういう発想から生まれたものでしょう。

 さすがに、「活用」とは女性をモノ扱いにしている言い方だ、などと多くの批判を浴びて、いつの間にか「女性活用」を「女性活躍」とか「女性が輝ける場」というような言い回しに変えていたようですが、言葉を変えたところで中身が変わるわけじゃありません。

 安倍首相が登用した女性閣僚たちは、右派的男性の代弁をするような女性が目立ちました。歴史認識、慰安婦問題、靖国参拝、軍備増強、夫婦別姓反対、家族制度、原発再稼働…などの諸問題では、まさにオトコ以上に勇ましい言行が目につく人たちが多かったのです。

 そんな安倍首相の女性観を、見事に暴露してくれるニュースがありました。厚生労働省の女性係長が「女性差別」を告発、「18年間も係長職のまま昇格もさせないのは明らかな女性差別ではないか」と、国に謝罪と660万円の損害賠償を求める訴訟を起こしたのです。

 「同期の男性職員はほとんどが課長補佐級に昇格。10年後輩で課長補佐に昇任した男性職員もいる。しかし、私を含め女性職員はほぼ同じ地位のまま。これは明らかな女性差別だ」というわけです。

 働く人の権利を守るのが厚労省の大きな役割です。そういう役所で、こんな事例がまかり通っていることに驚かされます。これは、安倍政権の足もとの話です。

 女性の活躍を目標に掲げるなら、まず自らの足もとを見つめ直してから言うべきでしょう。安倍首相の「女性活用」は、政権維持のためのスローガンに過ぎなかったようです。

 安倍首相が女性閣僚として必要だったのは、オトコの言い分を代弁してくれるオトコ以上にオトコ的な人たちでした。それが、ネオナチとの交友を問題視される山谷えり子氏や高市早苗氏でした。

 そのイメージではない小渕氏が早々と辞任せざるを得なかったのは、皮肉というしかありません。

(鈴木耕)

 

  

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