今週の「マガジン9」

 秋から始まったNHK朝のテレビ小説『マッサン』の主人公はニッカウヰスキーの創業者、竹鶴政孝とその妻、リタをモデルにしています。リタはスコットランド出身。かの地でスコッチウイスキーに魅せられた政孝が、リタとともに、日本で初のウイスキーづくりを目指す。そんなストーリーです。

 そのドラマのスタートと時を合わすように、9月18日、スコットランドでは独立を問う住民投票が行われました。

 サッカーやラグビーなどの国際大会では、「英国」ではなく、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドとして出場するように、イギリスを構成する4つのカントリーはもともと独立心が強く、スコットランドの人々の多くは、英国政府の自由競争を基本軸とする「小さな政府」志向に不満をもっているといわれています。スコットランド議会で過半数の議席を占めるスコットランド国民党は、貧困層への福祉政策や教育費用の公的負担制度の充実を訴えているそうです。

 住民投票の結果は、独立賛成が44.7%に対し、反対は55.3%と反対が上回りました。とはいえ、英国政府は賛成票の存在を軽視するわけにはいかないでしょう。今後、各カントリーが自由に裁量できる範囲は広がっていくと思われます。

 自分たちの足元のことは自分たちで決めたい。その点では、香港で連日続いている学生を中心としたデモも同じかもしれません。

 香港特別区の行政長官の選出は自由選挙で、との要求は、スコットランド独立の是非に比べれば、穏健なものですが、香港市民の前に立ちはだかる壁はスコットランドよりも高い。

 スコットランドが独立を果たしても、それは欧州連合という大きな枠組みのなかでのことであり、英国政府にとって許容しうる決定です。現に冷戦後の欧州では多くの新しい国が生まれています。

 しかし、香港はどうか。行政長官の自由選挙の実施が香港の分離・独立につながらないかとの懸念を中国政府に抱かせ、その芽をつむべく、デモ隊に対する強硬な姿勢をとらせるおそれが拭えません。「東アジアの国々を包摂する組織があれば」と思わずにはいられませんが、「自分たちの足元のことは自分たちで決める」という流れは世界で強まっていく。2つの事象はそんな予感を抱かせます。

(芳地隆之)

 

  

※コメントは承認制です。
vol.473

スコットランドと香港で起こっていること
」 に2件のコメント

  1. 「自分たちの足元のことは自分たちで決めたい」というのは、香港の民主化運動も沖縄も、ネオナチも在特会も一緒でしょう。その極端に走ったものがネオナチや在特会ともいえる。また、その両方が結託して政権とったはいいけど、主義の違いでグダグダになってるのがウクライナ。あとイスラム国もお仲間ですね。その紙一重のところをどのように舵とりして、自分たちの側に引き寄せるかが、これからの課題じゃないでしょうか。

  2. ピースメーカー より:

    >「東アジアの国々を包摂する組織があれば」と思わずにはいられませんが、

    そんな組織があれば、在日米軍はいらないし、憲法9条の理念に則った政権が日本に誕生することも容易いでしょう。
    問題はそういう組織が無いから大国の動向を小国が戦々恐々としているのであり、日本人のマジョリティが自民党や自衛隊や日米安保を容認、もしくは黙認している理由なのです。
    ところで、来月に行われる沖縄知事選は、香港のデモの推移如何が大きく関わることは否定できないでしょう。
    仮に、中国共産党が香港のデモ隊を満足させるような穏当な解決を図ったのならば、米軍基地辺野古移設反対派は極めて有利になるでしょう。
    しかし、中国共産党が香港のデモ隊を暴力で打倒したのならば、米軍基地辺野古移設賛成派は極めて有利になり、たとえその後で賛成派候補が勝利したとしても、本土の人間が「結局は金か」などと沖縄県民を憎んではならないと私は考えるのです。

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