「ロシア人はサッカーがうまくない。だからといって、誰も彼らとプレーをしなければ、ロシア人は自分たちが世界最高のプレーヤーだとの思いを強めるだけだろう」
これは、ユダヤ系ロシア人として旧ソ連で生まれ育ち、ソ連解体後にベルリンへ移住して、現在は作家・コラムニストとして活動しているウラジーミル・カーミナー氏の言葉です(ドイツ週刊誌『シュピーゲル』ウエブ版より)。
先月、ウクライナ東部で起きたマレーシア航空MH17便撃墜事件で、その関与が疑われているロシアに対して、米国とEUは経済制裁の強化を発表しました。しかし、この事件は、ウクライナ東部の分離派勢力が行ったのか、ウクライナ政府軍によるものなのか、明らかにされていません。当然ながらロシアが関与しているという証拠もない。にもかかわらず、国際世論は欧米のマスメディアに誘導されるかのように「ロシアが悪い」という方向に流れているのが現状です。
ロシアを経済的に締め出そうという試みは同国を硬化させ、ロシア外交を予測不能なものにするだけで危険――そう考えるカーミナー氏は独特の言い回しで、ロシアを自分たちと同じフィールドに(西側の民主主義に則ったゲームのルールで)上げるべきだと述べたのでしょう。地理的にも経済的にもロシアと密接な関係にあるドイツをはじめとする欧州諸国は、対ロ強硬的な米国と必ずしも歩調を同じくしていません。当然です。
ひるがえって日本はどうでしょうか。米国の姿勢に追従することで、これまで何回も重ねてきた安倍首相とプーチン大統領の会談の成果が水泡に帰してしまう危険性があります。
先日、安倍首相は中南米諸国の訪問から帰国しました。就任以来、外遊先は50カ国近くに上ります。その一方で中国ならびに韓国への公式訪問は実現しておらず、近隣諸国との関係改善は図れていない。これが真っ当な外交なのでしょうか。もし、それが中国包囲網を意図したものであるならば、カーミナー氏の考え方がここでも当てはまります。
そもそも私たちは隣の大国にどのようなパートナーになってもらいたいのか。そうしたビジョンをもっていないから、脅威や嫌悪感を煽るばかりになってしまうのではないか。
中国で民主化が進み、北朝鮮が自らを開放し、そこに韓国やロシアが加わった、人もモノも移動が自由になる北東アジア経済圏をつくるといえば、非現実的と一蹴されるかもしれません。しかし、こんな時代だからこそ、私たちの想像力を掻き立てる、未来に開かれた言葉が聞きたいのです。
日本がそのための主導的な役割を果たせるとすれば、69年前に日本の敗戦で終わった先の戦争を自らで総括したときでしょう。そこが欧州で存在感を増している現在のドイツとの大きな違いであると私は考えます。
(芳地隆之)
*次回の更新は8月20日(水)となります。みなさま、よい夏休みをお過ごしください。
ヨーロッパのロシアに対する経済制裁は、おつきあいでやってる日本の比じゃないじゃない。
日本は資産凍結までしてないよー!
それよか、マガジン9が音頭とって、イスラエルに経済制裁しよー!南米とかもやってるみたいだし。