元防衛官僚で、第一次安倍内閣で内閣官房副長官補(安全保障担当)を務めた柳澤協二さんの近著『亡国の安保政策 安倍政権と「積極的平和主義の罠」』(岩波書店)に、〈小泉純一郎政権以降、「劇場型政治」(ポピュリズム)が登場した。この手法は、わかりやすい「敵」を設定し、「敵」をやっつける「ヒーロー」を演じて大衆を陶酔させる。求められるのは論理ではなく、感情に訴えることである〉(略)〈小泉氏が設定した敵は、安全保障面では「テロリスト」。民主党政権は、「無駄遣いをする官僚」、そして第二次安倍政権の仮想敵は、「中国」と、日本の軍事的な自由を束縛する「憲法」に狙いを定めている〉と書かれています。
そうか、安倍さんが想定した敵は「憲法」なのか、そう思うと、さまざまなことが腑に落ちました。あれ、今ごろ気づいたの? と言われてしまいそうですが、私はまさかそんな大胆な発想をする首相が、この日本に誕生するとは、思っていなかったのです。まさにそれは「クーデター」ですから。
安倍首相のやろうとしていること、そして先に発表された安保法制懇の報告書も首相自らが行った記者会見の内容も、論理的に破綻していることは、各分野の専門家、例えば今週の伊藤真先生のコラムによっても明らかです。
しかし、感情面での揺さぶりに対して、私たちはどう抗っていけばいいのでしょうか? 「集団的自衛権は、おじいさんやおばあさんを守ること」だとでも言うような、荒唐無稽なフリップ(記者会見で示された絵)などに対して、私たちは「無力」だなとつくづく思うのです。
今と同じような社会の雰囲気は、「マガジン9」の前身、「マガジン9条」がスタートした2005年から2006年にかけてもありました。小泉政権から第一次安倍政権になった頃のことです。その頃に作った、「おまけ絵本」というフラッシュムービーを、今回「マガ9アンコール」としてコンテンツに加えました。憲法が保障する「自由」と「平和」がテーマです。静かな訴えですが、誰かの心に響くといいなと思っています。
(水島さつき)
護憲派が敵とみなされるのは、東・東南アジアの平和構築に関する「具体的なロードマップ」がないからですよ。まず各国の平和・民主主義勢力を連携して、各国のナショナリズムを越える道筋を示さなくては。日本が改憲阻止して、安倍政権退陣に追い込んだとしても、中国の拡張主義は止まらないわけで、中国の拡張主義を止める具体的な取り組みがないから、改憲阻止・安倍政権打倒が敵に見えてしまう。またアメリカが正義の味方に見えてしまう。