映画監督のオリバー・ストーン氏やマイケル・ムーア氏、ノーベル平和賞受賞者マイレッド・マグワイア氏、言語哲学者ノーム・チョムスキー氏、歴史学者ジョン・ダワー氏ら米国を中心とする世界的な著名人や識者ら29人が米軍普天間飛行場を名護市辺野古に移設する計画に反対する声明を発表したのは今月7日です。これを一面で報じた翌日付『東京新聞』によると、声明では、辺野古移設を「人間と環境を犠牲にして沖縄の軍事植民地状態を深化し、拡大させる」と批判。また、米兵による犯罪や米軍機の騒音、環境汚染によって「戦後ずっと、沖縄の人々は米国の独立宣言が糾弾する『権力の乱用や強奪』に苦しめられ続けている」と指摘し、「沖縄の人々の苦しみを恒久化させることにもつながる」と非難しています。
先日、沖縄県名護市長選挙が行われ、辺野古移設反対を掲げる稲嶺進氏が移設推進を訴えた末松文信氏を破り再選されました。
これに対して政府は、選挙結果にかかわらず、辺野古移設を進める意向を示しています。国の安全保障政策に住民は口を出すなということでしょうか。移転の是非を問う市長選であったにもかかわらず、です。
1月20日付『ニューヨークタイムズ』は、市長選の結果とその背景を詳細に報じていました。なぜ沖縄の人々が、これ以上の米軍基地負担は嫌だといっているのか。1995年の沖縄米兵による少女暴行事件にまでさかのぼり、淡々と紹介しています。当事者であるのに高みの見物のような報道ですが、これを読む米国民の多くは、名護市民の民意を無視できないと考えるのではないでしょうか。
昨年、日本ではNHKBSで『オリバー・ストーンが語るもうひとつのアメリカ史』が放映、同時に翻訳(早川書房)も出版されました。冒頭のストーン監督が、自由世界の庇護者として振る舞うアメリカ外交の欺瞞を暴いた作品ですが、このような作品が世界に向けて公開・出版されるところは「自由の国・アメリカ」ならでは、であり、はたして21世紀の現在、米国政府は、住民の反対の声を無視して移設の建設を強行する日本政府を本当の同盟国とみなすのか。私には疑問です。
米国の態度次第で、日本が米国のパートナーであるのか、冷戦時代に「アメリカの裏庭」と呼ばれた中南米諸国と同じような対象とみなされているのかがわかるような気がします。
今回の名護市長選挙が米国の姿勢も問うていると思う所以です。
(芳地隆之)
>はたして21世紀の現在、米国政府は、住民の反対の声を無視して移設の
>建設を強行する日本政府を本当の同盟国とみなすのか。私には疑問です。
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芳地隆之氏の疑問に対し、お題違いですが、作家の冷泉彰彦氏が的確に回答していると私は思うます。
「(抜粋)(『日米関係』が激しく動揺する事態とは)要するに、日米同盟の軍事上のメリットが小さくなり、日本経済の存在感が低下し、日本のカルチャーへの興味が薄れ、その一方、日本で保守イデオロギーが多数派となり、アメリカ人の身近で日本人の利己的な行動が目につくようになる、そうした事態です。(抜粋終了)」
そして稲嶺進氏や芳地隆之氏、映画監督のオリバー・ストーン氏やマイケル・ムーア氏、ノーベル平和賞受賞者マイレッド・マグワイア氏、言語哲学者ノーム・チョムスキー氏、歴史学者ジョン・ダワー氏らは「現在のアメリカの安全保障戦略にほぼ全面的に反対」というオバマ政権の人々ですら「絶対に友人にはしたくない」人々です。
「自由の国・アメリカ」は「絶対に友人にはしたくない」人々の表現の自由を尊重しますが、だからといって「絶対に友人にはしたくない」人々の主張に従って政策を決定することは、100%ありえない話でしょう。
何れにせよ日米同盟の軍事上のメリットを縮小させるしか、基地問題の「根本治療」の道を進む事はできません。
因みに、上述にて抜粋して紹介しました冷泉彰彦氏のコラムとは、「『安倍靖国参拝』、アメリカの許容範囲はどこまでか?」というタイトルのものです。
http://www.newsweekjapan.jp/reizei/2014/01/post-616.php
http://www.newsweekjapan.jp/reizei/2014/01/post-616_2.php