2011年7月23日(土)14:00〜17:00
@カタログハウス本社地下2階セミナーホール
福島第一原発の事故を受け、地方議会や首長が続々と脱原発に舵を切り、脱原発宣言をしています。その一方で、原発や核の最終処理施設を持つ自治体では、原発容認から抜け出せずにいます。3・11後に行われた選挙でも、青森県や敦賀市といった場所では、脱原発の首長が誕生することはありませんでした。そこには深い溝があるようにも感じますが、原発のない地域にできることは何なのか、原発のある地域が抱えている問題とはどんなものなのか。両方から考えないと、この先は何も変わらないのではないでしょうか? 脱原発に向かう試みが一緒に何かできないかという、未来への希望に向けての第一歩を踏み出す会となりました。
保坂展人●ほさか・のぶと(世田谷区長)1996年、衆議院議員に初当選し3期務める。国会質問が500回を超える”国会の質問王” として有名だが、盗聴法、共謀罪、裁判員制度、死刑制度についての質問も数多く行ってきた。国会議員在職中は「死刑廃止を推進する議員連盟」(会長・亀井静香衆議院議員)の事務局長を務めていた。2010年11月DVD「八ッ場ダムはなぜ止まらないのか」(ほんの木)を制作。2011年4月世田谷区長選挙に「脱原発」を掲げて出馬し当選。公務の合間をみて、ブログ「保坂展人のどこどこ日記」とツイッター@hosakanobutoで発信中。
鈴木耕●すずき・こう1945年、秋田県生まれ。早稲田大学文学部文芸科卒業後、集英社に入社。「月刊明星」「月刊PLAYBOY」を経て、「週刊プレイボーイ」「集英社文庫」「イミダス」などの編集長。1999年「集英社新書」の創刊に参加、新書編集部長を最後に退社、フリー編集者・ライターに。著書に『スクール・クライシス 少年Xたちの反乱』(角川文庫)、『目覚めたら、戦争』(コモンズ)、『沖縄へ 歩く、訊く、創る』(リベルタ出版)など。マガジン9では「お散歩日記」を連載中。ツイッター@kou_1970でも日々発信中。
岡田哲郎●おかだ・てつろう1979年、青森県生まれ。現在、立教大学大学院コミュニティ福祉学研究科博士後期課程。「開発と福祉」をテーマに、自立した地域社会のあり様について研究をすすめている。
第一部は、「地方議会・首長の脱原発宣言。その広がりと背景」として、東京都で初めて脱原発を公約に掲げて区長に当選した保坂展人さんと、長らく保坂さんの友人でもあり現在はフリーの編集者で『反原発日記』の著者である鈴木耕さんを対談相手に、話していただきました。
まず鈴木さんから、脱原発をめぐる全国各地の動きについての紹介の後、世田谷区の取り組みについて、「現在、東京も放射能汚染によって被災をしているわけですから、最初にやった取り組みは、世田谷区内のできるだけ多くの場所の線量の計測、公立の学校給食の食材産地表示、そして東京電力に対して、世田谷区の電気使用量の情報開示を求めました。東電側は当初しぶっており、リアルタイムではできない、と今も言っておりますが、現在は世田谷区のホームページから、前日分の東京23区の電気資料量がわかるということになっています。これを見ると、ここ最近は涼しい、ということもありますが、昼間の使用料も削減目標の15%マイナスを大幅に下回っていることが一目瞭然です。なぜ情報開示を求め、住民に公開していくか、というと情報を知る事で、セルフコントロールで節電ができるからです。民主的な節電です。情報を隠しておいて上から『大停電がおきるぞ』と言われると、誰だってパニックをおこします」と保坂さん。
とにかく具体的なアクションを起こしていくことで、問題をあぶり出していく保坂さんのスタイルは、地方自治体というスケールの中でとても有効に働いているようです。その他、脱原発を広げていくための、さまざまな取り組みや将来の「世田谷電力」構想についても、お話しくださいました。
第二部は、「青森・下北半島の核問題を地域社会から考える」をテーマに、下北半島の出身で現在は大学で「開発と福祉」をテーマに研究を続けている岡田哲郎さんが〈原発と地域社会(暮らし)の結びつき〉〈下北半島の風土や受け入れの歴史〉〈将来に向けて「地域福祉と共同体」からのアプローチの提案〉についてお話しされました。1970年代、六ヶ所村や大間では大規模な住民の反対運動が繰り広げられました。けれども結局は敗北してしまい、核施設が次々と作られ、共同体の関係が変化していきます。そんな過去の大変だった経験について、両親の世代からうっすらと聞いて育った岡田さんの「原発推進派も反対派も願っていることは同じ。幸せな暮らしがしたいだけ。だから、誰も傷つけない方法で気がついたら原発がなくても、昔の下北の人たちが行ってきたような、ささやかで自立した暮らし、営みがとりもどせたら。それに向けて何ができるかを考えたい」という言葉が印象的でした。
保坂さん、鈴木さん、岡田さんが会場からの質問に答える質疑応答の時間では、たくさんの方から質問の手が上がりましたが、保坂さんが公務のため途中退席。その後は、鈴木さんと岡田さんが質問に答える形となりました。「全国の原発が停まったとしても、使用済み核燃料は青森の施設に集積されてくる。これをどのようにすればいいのか?」との質問に鈴木さんは、「地下深く埋めるといっているが、そんなことが可能とはとても思えない。なぜこんなめちゃくちゃな計画を押し進めてきたのか・・・」と難しい表情を浮かべました。また「東京などの電力をたくさん使ってきた地域の人たちに、言いたい事はありますか?」と岡田さんに対して、「私自身も具体的に何をどうすればいいのか、わからないのです。ただ、下北のことをずっと見守って欲しい、つながっていて欲しい」と答えました。
その後、一度会を閉めてから、「下北半島プロジェクト」のアピールと支援者交流会を行いました。
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アンケートに書いてくださった感想の一部を掲載いたします。(敬称略)
第一部も二部も良かった。保坂さんの行動力に拍手を送りたい。単に「脱原発」をお題目にせず、世田谷区長として何ができるか、を考えて実際に「世田谷電力」実行に向けて動いていることは素晴らしい。第二部では、下北半島の原発の推進派も反対派も根底にある思いは同じ、というメッセージがとても印象的。地域社会の自立のあり方を考えさせられた。
(木村葵)
下北半島については、一人芝居の「松橋勇蔵と劇団ほかい人群」を通じて、私も40年近く前から興味をもっており大変偶然を感じました。一部、二部を通じて、自立した生活者=定住者となるような視点から生活を捉え直し、生活環境をとらえなおすことが企業にとっても必要かと思いました。
(川口秀彦)
各自治体の動きなどの総論から、世田谷区の具体的な動きの各論まで伺えて良かったです。第二部はきれいごとではない、核を抱える町の実情、そこから考える地域社会のあるべき姿を提示され、一足とびに答えは出ませんが、考え続けたいと思いました。
(匿名希望)
それぞれの視点から鋭い切り口でのお話を聴く事ができて、とても良かったです。自分も自治体にもう少し意見を言っていきたいと思うし、自分の住むところを大切にして、共生していきたいと思いました。私も脱原発だけではなく、社会構造(貧困や労働、福祉などの問題など)の変革が必要だと考えていたので、本当に考えさせられる時でした。ありがとうございました。
(匿名希望)
とても興味深かったです。3人でのパネルディスカッションの時間があったら、もっとありがたかったと思いますが。岡田さんを登壇させて下さったスタッフの方たちに大いに拍手です!!
(匿名希望)
国を変えるためには、自治体から。味方になってくれる議員と一緒に要望を持っていくことが大切だと思いました。岡田さんの「一人の苦しみを放置している社会はダメだ」という発言が心に響きました。
(匿名希望)
自分自身はツイッターやUstreamでいわゆる御用学者以外の情報を入手していたが、鈴木さんの話の中でそうした真の(裏の)情報がごく一部にしか流れておらず、大多数の人が知らないままに行動し、発言していることを再確認し、改めて驚いた。もっと頑張って広めて欲しい(マガ9にも)し、応援したい。
(匿名希望)
第二部の講演の内容が少し理想論の様に感じました。もう少し具体的に現状を話していただければと思いました。
(匿名希望)
保坂さんの言う「脅迫の通じないリアリティ」が必要だという言葉に全く同意します。電力会社、それを支える政府、官公庁に透明性ある情報開示を求めたい。岡田さんの話は下北出身という視点からの分析がとても興味深かった。誰も悪者にせずに、地域単位で自立の仕組みを考える、という話はは自分には気づかない視点だった。
(匿名希望)
既に原発が地域の暮らしに定着してしまったところでは、本当に脱原発の声をあげていくことが難しいんですね。よぼど勇気のいることなんですね。しかし下北半島の問題は、そこに住んでいないけれど私たちひとり一人に関わりのある、大きな問題であるはずで、その地域にいない私たちに何ができるのか、もっとよく考えていかなくてはと思いました。
(匿名希望)