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こども医者毛利子来の『狸穴から』:バックナンバーへ

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 東京原宿に小児科医院を開いて50年。時代は変わっても、子どもと親に温かなエールを送りつづけている毛利子来さんは、お名前から「たぬき先生」とニックネームをつけられ、慕われ頼りにもされています。「マガジン9条」のことも「この人に聞きたい」の第1回目に登場いただいて以来、たくさん応援いただいています。そしてこのたび、連載エッセイが今月よりスタートです。月2回お届けの予定です。たぬき先生がお仕事と暮らしで感じることども、特に文化のありかたと人間の生きかたについて、辛口に綴っていただきます。

こども医者毛利子来の『狸穴から』(1)

もうり・たねき(小児科医) 1929年生まれ.岡山医科大学卒業。東京の原宿で小児科医院開業。子どもと親の立場からの社会的な発言・活動も多い。「ワクチントーク全国」元代表、「ダイオキシン環境ホルモン対策国民会議」元副代表などを経て、現在は雑誌「ちいさい・おおきい・よわい・つよい」編集代表、『マガジン9条』発起人など務める。著書に『ひとりひとりのお産と育児の本』(1987,毎日出版文化賞)、『赤ちゃんのいる暮らし』、『幼い子のいる暮らし』などがある。最近は、友人でもある小児科医・山田真氏との共著である『育育児典』(岩波書店)が、評判を読んでいる。HP「たぬき先生のお部屋」

インフルエンザは妖怪だ。

 毎年冬になると、彷徨いだす。そして、人々を脅かす。とりつかれたら、すごく苦しい。脳を冒されたり、命さえ奪われるかもしれない。そんな物騒な噂が広がる。

 それに煽られて、人々は、この妖怪退治に狂奔する。魔よけとして、予防接種を、争うように、受ける。
 それでも、カゼ気味になろうものなら、お医者様に飛んでいく。お医者様も、えたりとばかり、検査をする。その結果、インフルエンザのウィルスが検出されれば、得意顔で、「特効薬」なるタミフルを処方する。病人のほうも、それを欲しがる。

 こうした有様は、いかにも、さもしい。
 そんな風にしなければいけないみたいになっているところが、おぞましくもある。

 実は、インフルエンザは、さほど恐ろしい病気ではない。カゼの一種にすぎないのだ。
 確かに普通のカゼより、熱が高かったり頭痛や筋肉痛も強いことが多い。だが、普通のカゼと同じか、より軽いことだって少なくはない。ひどい場合でも、4、5日もすれば、ほとんど治ってしまう。

 なのに、やたら予防接種が勧められているのは、どういうわけか。
 それも、予防接種をしていないと、人に迷惑をかけると、非難されるほど。まるで、全体主義みたいになっている。
 なんとも、けったいな話ではないか。

 だいいち、この予防接種は、なかなかに「効く」とはいいがたい。
 幼児への効果は、厚生労働省の調査で、20~30%。年寄りに対しても、確実な効果を証明する研究は僅かしかない。脳症を防ぐ効果も、証明されていないのだ。

 それでも、「効く」と言い張るのは、なにか魂胆があるにちがいない。
 有り体にいって、ワクチンのメーカーと医者の利益のためではないか。そう勘ぐりたくもなる。
 そのあげく、予防接種をしたのにインフルエンザにかかった病人に、「だから軽くすんだ」と言い逃れをしている。そんな医者がみじめでもある。

 タミフルともなれば、これは明らかに使いすぎ。日本での消費量は、なんと、世界の8割近くに及ぶという。それだけ、薬屋と医者が理不尽に儲かっているのだ。

 しかも、そんなに使っていたら、インフルエンザのウィルスがタミフルに耐性を持ってしまう可能性が高い。
 現に、20%近く耐性ウィルスが出現しているという。それこそ「新型」のインフルエンザを作っているようなものだ。
 そのうえ、タミフルの副作用も、危険水域にある。高い所から飛び降りるなど、死に直結する「異常行動」の発生は重大だ。

 そんなことどもから、つらつら思うに、インフルエンザ自体が妖怪なのではない。
 気の毒なことに、医薬業界と厚生行政によって、妖怪に仕立てられているだけなのだ。

ここ数日、インフルエンザ関連のテレビ番組をよく見ます。
予防を呼びかけるというより、恐怖を煽っているようようで、
違和感があるのですが、みなさんはどう思われますか?
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