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みんなが大好きなスポーツ!「マガ9」スタッフだってそうです。
だから時々、メディアで報じられているスポーツネタのあれこれに、
突っ込みを入れたくなったり、持論を展開したくなったり・・・。
ということで、「マガ9スポーツコラム」を不定期連載でお届けします。
今年の10月4日、東京国立競技場で行なわれた東京ヴェルディ対ヴァンフォーレ甲府の試合は、ホームとアウェイが逆転していた。甲府のサポーターの方が圧倒的に元気なのである。ヴァンフォーレがJ1昇格に近い位置にいること、(東京へは)甲府サポーターが駆けつけやすいこともあろうが、ホーム側の沈滞ムードの最大の原因は、半月前に発表された日本テレビの経営撤退の決定にあった。日本テレビは、東京ヴェルディを運営する株式会社日本テレビフットボールの株式の98.8%を所有しており、日テレが手を引き、他の買い手が現れないと、クラブがなくなってしまうのである。
ちなみにヴァンフォーレ甲府を運営する株式会社ヴァンフォーレ山梨スポーツクラブは、山梨県内を中心に多くの企業・団体から集めた小口の出資で成り立っている。ヴァンフォーレのホームである小瀬スポーツ公園陸上競技場は、小さな広告で一杯だ。ヒーローインタビューの際、バックに立てる看板はもちろんのこと、ケガをした選手を搬送する担架や砂場を覆うシートにまで広告が載せられている。ヴァンフォーレも経営の苦しさが伝えられているが、メインスポンサーの撤退が即「クラブ消滅の危機」とはならない。
11月28日、味の素スタジアムでのFC東京のホーム最終戦(対ヴィッセル神戸)。ゴール後ろのFC東京サポーター席はびっしり埋まっていた。その盛り上がり様は、浦和レッズ・サポーターの域に近づいている。応援用の替え歌ヴァリエーションでいえば、Jリーグ・トップではないだろうか。サポーターは「チンギスハン」や「スモーク・オン・ザ・ウォーター」のリズムに乗って気勢を上げるだけでなく、藤山一郎の「東京ラプソディ」まで歌うのである。
その日、サポーター席の前方に掛けられた大横断幕のなかに、ちょっと変わったものがあった。
「ENEOSありがとう」
ENEOS(新日本石油)はFC東京を運営する東京フットボールクラブの主要株主である(同社の株主は342社26団体。FC東京ホームページより)。FC東京のユニホームの胸スポンサーを2002年から務めてきたが、今季限りで撤退する。FC東京にとっては厳しい決定だが、サポーターは新日本石油に対し、これまでの協力に感謝の意を表したのである。
親会社(読売新聞社、日本テレビ)の都合に振り回された東京ヴェルディと、スポンサーとサポーターの相互の信頼が成り立っているFC東京――両クラブの大きな違いを見た思いがした。
東京ヴェルディはその後、日本テレビから株式を譲り受けた持ち株会社「東京ヴェルディホールディングス」によって運営されることになった。同社会長となった崔暢亮氏は、今後は地域のスポンサーを募るべく、企業や商店街を回って支援を訴えている。メディアを使って全国区の人気を目指した空中戦から、地に足の着いた営業への転換は好ましいが、私は東京ヴェルディがいまも「過去」を引きずっているように思える。
東京ヴェルディの正式名は「東京ヴェルディ1969」。1969は読売クラブができた年である。東京ヴェルディホールディングスの幹部も、崔会長をはじめ読売クラブのOBが占める。また歴代監督をみても、外国人を除けば、ほとんどがヴェルディ出身だ。
日本サッカーリーグでの読売クラブの強さは群を抜いていた。たとえばラモス瑠偉や柱谷哲二らがヴェルディ・フロントに対して歯に衣着せぬ物言いをするのは、同クラブの黄金時代を担ったという自負(現在のようなサッカー人気がなかった時代だから、なおさら「自分たちが日本のサッカー界を支えてきた」という思いが強い)があるからだろう。しかし、それが嵩じると、ときにお家騒動と化し、ヴェルディの脱皮を妨げる気もするのである。
新生「ヴェルディ」は経営陣にも指導層にも、アウトサイダーを受け入れるべきではないか。現在の日本代表のディフェンスの要である中澤佑二、フォワードとして期待される森本貴幸ら、無名の才能をユースで育てたチームである。「過去の栄光」をリセットし、東京ローカルのクラブとして再スタートを切れば、ヴェルディは魅力的なチームとなるに違いない。
(芳地隆之)
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