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マガ9スポーツコラム No.009

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  みんなが大好きなスポーツ!「マガ9」スタッフだってそうです。
だから時々、メディアで報じられているスポーツネタのあれこれに、
突っ込みを入れたくなったり、持論を展開したくなったり・・・。
ということで、「マガ9スポーツコラム」がスタートです。不定期連載でお届けします。

四国・九州アイランドリーグ
愛が支えるビジネスモデル(その1)

 去る8月10日、元千葉ロッテ・マリーンズの投手で、その後、メジャーリーグなどでもプレーした伊良部秀輝投手の四国・九州アイランドリーグ・高知ファイティングドッグスへの入団が発表された。

 四国・九州アイランドリーグとはプロ野球独立リーグのひとつである。独立リーグに関しては、今年4月にスタートした関西独立リーグの神戸9クルーズに属する女子高校生ピッチャー、「ナックル姫」こと吉田えりが注目されたが、その後、運営会社がリーグに加盟する各球団への分配金を支払えなくなって撤退するなど、フィールド外の話題が先行しがちだ。そこで今回は、伊良部投手が入団した独立リーグの先駆である四国・九州アイランドリーグ(以下、アイランドリーグ)について、その発足から現在までを振り返ってみたい。

 アイランドリーグは2005年4月に「四国アイランドリーグ」としてスタートした。四国各県にチームを置き(香川オリーブガイナーズ、愛媛マンダリンパイレーツ、高知ファイティングドッグス、徳島インディゴソックス)、前・後期制のリーグ戦を経て、秋のプレーオフで優勝を決めるのだが、アイランドリーグの最大の目的はここから将来のNPB(日本プロ野球機構=現在のセ・パ両リーグに加盟する12球団で構成)へ選手を輩出することにある。

 その背景には、2000年代に入って、企業の野球部の休部・廃部が相次いだことがある。日米で200勝を達成した野茂英雄は新日鉄堺、日本を代表する名キャッチャーだった古田敦也はトヨタ自動車から、それぞれ近鉄バファローズ(現オリックス・バファローズ)、ヤクルト・スワローズ(現東京ヤクルト・スワローズ)にドラフト会議で指名された。現役選手でいえば、ソフトバンク・ホークスの松中信彦は新日鉄君津で、今年、ブレークした楽天イーグルスの草野大輔はNTTやホンダでプレーをしていた。

 高校もしくは大学野球で注目されなくても、卒業後、社会人野球で能力を開花させる選手は少なくない。しかし、新日鉄君津はすでに野球部を廃部しているし、都市対抗野球の名門、日産自動車も昨年秋の経済危機を受けて、野球部を今年一杯で休部することを決定した。

 親会社の経営の良し悪しで選手のプレー機会が左右されてしまっては、埋もれた才能を見出すことがますます難しくなる。そこで社会人野球に代わる受け皿として設立されたのがアイランドリーグだった。

 日本初の独立リーグ設立を提唱したのは自身もプリンスホテル出身の元プロ野球選手、石毛宏典氏である。彼がその地を四国に選んだ理由には、野球熱が盛んにもかかわらず、プロ野球の球団がないことが挙げられる。

 これまで四国の野球ファンの目はもっぱら高校野球へ注がれていた。全国高校野球において、四国はかつて「野球王国」と呼ばれた。各県には四商と呼ばれる名門公立校(高松商業、松山商業、高知商業、徳島商業)があり、夏の全国制覇回数7回を誇る愛媛県を筆頭に、各県代表校の甲子園における勝率は高かった。しかしながら、全国各地の有名私立校が野球留学で優秀な選手を集めたこともあり、ここ数年は地域差がみられなくなった。

 四国でも、関西出身者を中心に県外からの野球留学を受け入れる私立校が増えた。選手にとっても、参加校の多い激戦区大阪よりも、予選に三十数校しか出場しない香川県でプレーした方が甲子園に出場するチャンスは高くなる。上述の伊良部投手も兵庫県尼崎市出身ながら、高校は香川県の尽誠学園に進学し、甲子園に出場した経歴の持ち主だ。

 しかし、甲子園出場のために、他県から野球少年を集めて編成したチームを、長年、地元の高校を応援してきた四国の野球ファンは「おらがチーム」とみることができるのだろうか。石毛氏は、そんな野球ファンの気質も考えた上で、四国を選んだと思われる。

 私も石毛氏の決断と行動に深い敬意を抱いた一人だ。香川県のオリーブスタジアム(現在は「サーパススタジアム」)で初めてアイランドリーグ公式戦を観たときには涙が出た。

 だが、気持ちを高ぶらせながらも、ひっかかるものがあった。

 アイランドリーグはビジネスモデルとして成り立つのだろうか?

 アイランドリーグ2年目の夏、私はリーグ運営会社、IBLJの最高経営責任者(CEO)の鍵山誠氏にその疑問をぶつけてみた。

つづく

(芳地隆之)

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