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みんなが大好きなスポーツ!「マガ9」スタッフだってそうです。
だから時々、メディアで報じられているスポーツネタのあれこれに、
突っ込みを入れたくなったり、持論を展開したくなったり・・・。
ということで、「マガ9スポーツコラム」がスタートです。不定期連載でお届けします。
2019年に日本でラグビー・ワールドカップ(W杯)が開催されることが決まった。ヨーロッパ、アフリカ、オセアニア、南米といった各大陸の強豪国のラガーマンが集まると思うとわくわくする。その反面、日本代表は彼らとエキサイティングなゲームを展開できるのか、甚だ心もとない。
2007年のフランスW杯で、日本は一次リーグ3敗1引き分けで敗退した。たとえばサッカー日本代表がブラジル代表と戦う際には、万が一の日本の勝利に賭けることができても、ラグビー日本代表が「オールブラックス」(ニュージーランド代表の愛称)に勝利する番狂わせはいまのところ想像できない。
私自身、もっとも熱心にラグビーを見ていたのは、松尾雄治がキャプテンを務める新日鐵釜石が日本選手権7連覇を果たしたころだった。社会人チャンピオンと大学チャンピオンが日本一を競う1月の国立競技場で、とくに印象に残っているのが1984年の選手権。この年は、スタンドオフの平尾誠二、ロックの大八木淳史らを擁し、大学選手権では敵なしの3連覇を果たした同志社大学が、釜石の牙城を崩すのではないかといわれていた。
ところが、試合が始まると、釜石の選手たちはスクラム、走り、ボール回しなど、すべての面で大学のスター選手たちを圧倒した。岩手県の鉄鋼の町で黙々と練習を重ねてきた男たちの意地を見せつけられたようだった。
日本のラグビー界は、大学への注目度が高い。2003年にはラグビーのプロリーグである「トップリーグ」が発足したものの、人気の点で言えば、伝統の早明戦の方が上かもしれない。
これはラグビーがそもそもエリートのスポーツだったことと関係があるのだと思う。
ラグビーが生まれたのは英国である。このスポーツは、海外の植民地経営を担う人々を養成する役割を担っていた。知力だけでなく、体力でも植民地の人間に劣ってはならない――英連邦のオーストラリアやニュージーランドでラグビーが盛んな背景にはこうした歴史があるし、南アフリカが強いのは、アパルトヘイトの時代から白人のスポーツとして定着していたからだろう。
だが、1987年の第1回W杯開催以降、世界のラグビーの勢力地図は変わりつつある。これまではイングランド、ウェールズ、スコットランドの英国勢や南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランドが中心であった舞台に、フランス、イタリア、サモア、フィジー、アルゼンチンなどが台頭してきたのだ。これはラグビーがフィジカルエリート養成のための手段から、スポーツとして広く認知されたことを示している(ラグビーはオリンピック競技として認められていない)。
一方、日本のラグビーは、なかなかエリート・スポーツの枠から脱しきれていない気がする。
「トップリーグ」のチームの多くは、大企業の名前をつけている。ラグビー界は学閥意識が強いといわれているせいか、そこには大学→企業というアスリートのエリートコースが見える。しかし、学閥意識の強さは、ナショナルチームのそれを阻むことにならないだろうか。
かつての新日鐵釜石の選手の強さは、(松尾を除けば)ノンエリートたちの逞しさにあった。雪の積もったグラウンドで楕円のボールを追っていた新日鐵釜石の選手の多くは地元の高校出身であった。しかしながら、新日鐵釜石製鉄所は1989年に溶鉱炉を閉鎖。2001年にはラグビー部が廃部となり、現在、釜石市では釜石シーウェイブスが地元クラブチームとして、トップリーグ昇格を目指している。
エリートコースから外れた雑草のような選手をいかに発掘するか。日本のラグビーを強くするためのひとつの鍵ではないかと思う。
(芳地隆之)
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