「この人に聞きたい」や「雨宮処凛がゆく!」のコラムでも度々紹介されてきた松本哉氏の闘争半生が語りおろしの形でまとめられた1冊。松本氏は、東京・高円寺でリサイクルショップ「素人の乱」5号店を営む若き店主なのだが、今年はこの本で著書が3冊目という売れっ子である。今やちょっとした時の人なのだ。ではなぜ彼が注目されているのか? 私は、彼の生き方に憧れている人が、秘かにじわじわと増えているのではとみている。そしてそれは、今のこの生きづらくて窮屈な日本社会にとっては、希望の光というか喜ばしいことだとも思っている。そんな彼の生き方とは? 気になった人は、こちらのインタビューをまずは読んでみて欲しい。
さて、この本の中身であるが、遅れてやってきた学生闘争みたいな「法政の貧乏くささを守る会」主宰と全国ネットワークをつくるまでの活動や、逮捕拘留につながった「ペンキ闘争」の舞台裏、とんでも法律の制定に反対した「PSE法(電気用品安全法)反対デモ」への真剣な取り組みや、最近ではドイツのスクワッターたちをも驚愕させた「3人デモ」や「クリスマス粉砕デモ」、ついには杉並区議選挙に立候補しての選挙活動などなど。それらはいったい「抵抗運動」なのか、「ギャグ」なのか、はたまた「アート」なのか、「祭り」なのか。まさに「素人の乱」を次々と起こし続けてきた彼のこれまでの歩みが、赤裸々に語られている。これを読むと、これまで断片的に伝えられてきた彼の“武勇伝”やそれぞれの「乱」について、どういう目的や思想や魂胆をもってなされていたのかが、何を目指しているのかが、よくわかる。そう、ただのお祭り野郎ではないのだ。
ところで来年はさらに不況が世の中をおそい、就職難が再びやってくると世間はさわいでいる。実際に学生の内定が取り消されたり、リストラにあったりと、金融資本主義の崩壊は、株や投機マネーとは無関係の仕事や生活を営んでいる人のところへ直撃しているのだから、いちがいに「プラグアウト」してしまえ、とは言えないところではあるのだが・・・。
それにしてもである。いつの間にそうなっていたのか、今の大学生は2年生になると、もう「就職」のための準備や活動を始めるのが「一般的」であると聞いて驚いた。そうして大学がいつのまにか、就職するための「予備校化」しているのだそうだ。まるで「企業のための人材育成の場所」とも。そして学生たちは、より良い企業に就職するためのダブルスクールにインターンシップにバイトにと大忙し。“なんじゃそりゃ。大学って学問を追求する場所じゃなかったの? 大学生活ってバカやりながらもじっくり生き方を模索する時間では?”と思わず叫びそうになってしまったが、彼らはますます世間からも大学からも「就活勝ち負けレース」を無理強いさせられている。なんてこった。
今の日本に松本哉的な生き方をする人がもっと増えたら、これはもう社会変わるんじゃないか、と思う。というか、ちょっと前まではこういう人が、普通にいたはずだ。「就職もできないし、人間関係もうまくいかないし、自分は社会の不適合人間ではないか」なんて不安にさいなまれている人は、是非読んで欲しい。スカッとするし、目からウロコが落ちること間違いなし。そう、誰かが自分たちに都合の良いように作られた価値観に、がんじがらめに縛られることなんて、ぜんぜん必要ないのだから。
ところで、松本哉氏のもうひとつの著書「貧乏人の逆襲!〜タダで生きる方法」も読むと勇気100倍な本。こちらは、この本を読んで感激したスタッフがブログに感想を書いているので、こちらも是非!
(水島さつき)
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