今年の株主総会では、電力卸売大手のJパワー(電源開発)に対して、筆頭株主の英国投資会社(ザ・チルドレンズ・インベストメント・マスターファンド)が配当金の引き上げや社長の解任などを求めるなど、外資系ファンドがその存在感を見せつけた。最近では、米国投資ファンドのスティール・パートナーズがブルドッグソースを買収しようとしたケースも記憶に新しい。
いずれも日本側による防衛策が合法と認められたことで、経営陣はまずは胸をなでおろした。しかし、株式を上場し、市場から資金を調達する限り、敵対的買収のリスクから免れることはできない。株式の持ち合いなどで外部からの干渉を阻止してきた日本の株式会社も、世界的なM&A(企業の合併と吸収)の流れと無関係ではなくなった。
そうした時代の到来を描いたのが本ドラマである。
シリーズの前半、外資系ファンド、ホライズン・インベストメント・ワークスの日本市場責任者、鷲津政彦(大森南朋)は利益最優先と透明性を重視する姿勢から、経営不振に陥った老舗旅館や玩具メーカーを買収し、経営者を解任する。鷲津のやり方を厳しく批判するのは大手邦銀の芝野健夫(柴田恭兵)だ。鷲津は芝野の元部下であり、二人には、バブルが弾けた後、町のねじ工場への貸し渋りで経営者を自殺に追い込んだ過去があった。
鷲津と芝野の対立の構図は、シリーズ後半に台頭してくる若きIT企業家、西野治(松田龍平)の存在によって溶解する。鷲津への愛憎から起業家をめざし、自社の株価を上げるためには、なりふりかまわない経営者となった西野は、大手家電メーカー、大空電気を巡って、ホライズンに買収合戦を仕掛け、そこから物語は「会社は誰のものなのか」という問いに向かって収斂していくのである。
答えの鍵は、会社にとっての最善の未来。ギリギリの答えを出そうとする過程は息もつかせぬスピード感だ。緻密な演出と脚本が見せる。
このドラマが好評だったからだろうか、現在、NHKでは企業の粉飾決算を扱った『監査法人』が放映中である。エネルギー大手と有名な会計事務所の癒着による巨額の負債隠しが、アメリカの資本主義を震撼させたエンロン事件も思い出させるこのドラマ。シリーズ6回のうち半分が終わったが、これもまた秀作の予感がする。
(芳地隆之)
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