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2013-08-23up
おしどりマコ・ケンの「脱ってみる?」
第63回
汚染水漏洩、健康調査、再稼働新基準、支援法…
作業員の方々のこと、ちょっと考えようぜ!! の件。
なんかあっという間に8月も終わっちゃいますね!
震災前のおしどりは、8月は月に50ステこなす、という夏休みの働き者でしたが、仕事が激減したわたくしたちは、ヒマな夏かしらね~と余裕かましていたら、寝る間も本当に無いくらいのバタバタです。
相変わらず海からすぐのNo1エリアの地下水が汚染されている問題は何も解決していないし、そうこうしている間に免震重要棟前の連続ダストモニタリングの警報が鳴り、10名の方の身体汚染が確認され、その原因もわからないまま、もう一度鳴り、急きょ立ち上がった規制庁の汚染水対策ワーキンググループにせっせと通っている間に、鮫川村の仮設焼却施設は本稼働に入り(宗則さんの告訴は放置されたまま!)、福島県の県民健康管理調査検討委員会で、いろいろな疑問が多々あるので資料を精査していたら、過去の資料の矛盾が見つかり、それを悩んでいるうちに過去の資料が大幅に訂正され、あ、検討委員会の前日に、新たにH4エリアのタンクから「中濃度」の汚染水の漏洩が発見され、検討委員会と同日に臨時会見が開かれ、汚染水対策ワーキンググループで「同型のタンクの共通要因破損に注意しなくては!」と議論していた翌日に、別のH3エリアのタンク2か所から底部の汚染が見つかり、漏洩が疑われ…、と今ココです。
これだけが8月で、以前からの問題、地下貯水槽の漏洩や、地下水バイパスなど、宙ぶらりんのままです。
前回の「この話の続きはまたどこかで!」の「はてしない物語」方式ではないけれど、まーあ、多すぎるわーん!
というわけで、ピックアップしたダイジェストを。
1.汚染水漏洩があちこちすぎる件!
2.免震重要棟前の連続ダストモニタリングの警報について
3.第12回県民健康管理調査検討委員会について
4.議員レク&作業員の方々のお話
***
1.汚染水漏洩があちこちすぎる件!
第57回・いわきのママたちと地下貯水槽と作業員の方のお話の件。
このときにお話しした作業員の方々、その他の方々にもいろいろお話をまた伺ってます。
「ほら…言ったとおりでしょ、施工が突貫でコストを削っているので、1年保てばいい方式で施工しているので、どんどんあちこちから漏洩してきているでしょ…」
おっしゃるとおり。
「アルプス(他核種除去装置)のバッチ処理タンクの漏洩(6月)もね、メーカーは、『この素材でその溶接で施工すれば、絶対に漏洩する、高い塩分濃度、高濃度の放射性物質に持つはずがない!』と再三、東京電力に(意見を)上げたそうなんだけど、コストかけられないから、と安い素材、より安価な溶接で押し切られたんだって。そうしたら、案の定、塩分と高濃度の放射性物質で腐食して、バッチ処理タンクから漏洩したじゃない、『だからずっと言ってたのに~!!』と嘆いてたよ!」
これが、東京電力の発表によるその漏洩の詳細です。以下抜粋。
【漏洩の原因】
バッチ処理タンク2Aからの漏えいの原因はすき間腐食と判断。
腐食を発生させた要因は海水由来の塩化物イオンが存在していることに加え,次亜塩素酸や塩化第二鉄の注入によって腐食が加速される液性であったこと,付着したスケール等がすき間環境を形成していたこと等を推定。
あーあ、もう、本当に、営利企業に原発事故の収束計画の主導権を取らせないほうがいいと思うよ? 何らかの責任、ペナルティを課すことは重要だけど、このままじゃ、ね…。
***
2.免震重要棟前の連続ダストモニタリングの警報について
▼10名の放射能汚染はバスを待っていた数分間か!?
(DAILY NOBORDERより/おしどりマコ)
これは、8月15日の記事ですが、8月19日にも同じ付近で同じ警報が鳴り、どちらも原因がまだわかっておりません。でも、19日はミスト装置を動かしていないので、ミストの可能性はかなり下がりました。
この、原因がわからない、というのもヒドイことだけれど、もっとヒドイのが作業員の方々への対応。
8月12日に1回目の警報が鳴り、10名の方々に身体汚染が見つかったとき、私は規制庁の汚染水対策ワーキンググループの傍聴・取材をしていました。
すると、一斉に規制庁の方々の携帯のメールが鳴り、みなさん、それをチェックして。何かあったのかな? と私もPCメールをチェックすると、警報と身体汚染についての連絡がきていました。
ワーキンググループが16時に終わり、17時半から東京電力の定例会見が始まるまで、私は知り合いの作業員の方々に電話をかけ続けました。
――大丈夫?
「何が? 何があったかわかんないけど、急に水道使うなって。」
「何か連絡きていたけど、どういうことなの?」
「マスク解除エリアで全面マスクするように言われたんだけど?」
作業員の方々は、水道を使うな、マスク着用、の指示を受けたのみで、どこでどういうことがあったか、全くご存知ありませんでした。
で、いろいろご説明すると
「え? そんなに身体汚染があったの?」
「ノーマスクエリアで、身体汚染があるなんて、おかしいよ!」
東電会見でも、この点もぶつけてみました。
▼えっ、ちょっと驚いたんですけど、まだやってないのですね。
(おしどりマコ・ケンの脱ってみる? デイリーより)
(脱ってみる? デイリーのほうでは、ケンパルが会見中の私の質疑をせっせと書き起こしているから見てやってくださいませね~☆)
以下抜粋(いろいろひとしきり質問したところで)。
――まだ原因がわからないということで、現場の作業員の方々がとても不安がっておられて「ミストにはもうあたりたくない」であったりとか。これはマスク解除エリアで東京電力が指定したマスク解除エリアで、原因がわからない汚染があったという事で、現場の方々には何らかの説明なりされているのでしょうか。
東京電力・今泉さん「現場の作業員に何か説明会みたいな形でということはございませんけど、実際にはダストが上がったということで、マスクの着用指示は出したかと思います」
――それは一昨日発表がありましたが、この事例で行くと警報がなってからマスクの指示をしてももう遅かった訳ですよね、実際に汚染があってから全面マスク指示が放送されたという訳で。で、少しその点に不備があるのではないかと思うのですが。
(別件のやりとり、略)
作業員の方々への対応もどうぞよろしくお願いします。東京電力・今泉さん「あの、作業員の方には大変ご心配かけて申し訳ないと思っています。ちょっと確認を致します」
――よろしくお願いします。
あまり、私は質疑で要望をすることは無いのですが、作業員の方々の環境だけは、本当に本当に、何とかして頂きたい!! できるかぎり!! 安全を追求して頂きたいです。
***
3.第12回県民健康管理調査検討委員会について。
8月20日に福島県福島市で検討委員会があり、さ、資料を精査してまとめようかしら、と思っていたら、第11回の資料と整合性がとれないことに気づきました。
あら? 私、資料を勘違いしているのかしら? と思っているうちに、第11回の資料が大幅に訂正されました。詳しくは下記(DAILY NOBORDERにも、いろいろ記事を書いているからご覧になってね☆)。
▼甲状腺検査の結果についての大幅な訂正。県立医大のカウントエラー!? (DAILY NOBORDERより/おしどりマコ)
▼【速報】第11回検討委員会の甲状腺結果の資料訂正の経緯、県立医科大の説明 (DAILY NOBORDERより/おしどりマコ)
まぁ、かいつまんでいうと、情報の出し方に疑問があること、チェックをする方もおられないということ、などなど。
県立医科大の経緯の説明にも疑問が多々あります。あ、福島県庁との説明と矛盾するので確認しなくてはいけないんだった、今、思い出した!
というわけで、検討委員会については、いろいろとまとめたいことはありますが、今回は、まず声を大にして言いたいことがあります!
県民健康管理調査というのは、「脱ってみる?」のマニア読者の方々ならご存知だと思うけど、2011年3月11日からの行動記録を書いてそこから4ヶ月間の外部被曝線量を推計する全県民対象の「基本調査」と、対象者によって様々な健康調査をする「詳細調査」の2本柱からなっているのです。
その、行動記録から外部被曝線量を推計する「基本調査」についてね。
いろいろな評価、グラフでは常に「放射線業務従事者を除く」という但し書きがついています。しかし、その但し書きに含まれていない「全データ」のところに、外部被曝線量推計が「66mSV」という数字がありました。
第12回の検討委員会の中で、ある委員から「この66mSVという方はどういう方ですか?」と質問がありました。
県立医大の安原先生のご回答は「放射線作業従事者です」。
その後の会見で、私は質問しました。
――この66mSVの放射線作業従事者の方の線量は、作業従事中の線量も含んでいますか? それとも作業以外の普段の生活の中の線量ですか?
安原先生「ええ、詳細にデータを把握しているわけではありませんが、場所として、被曝線量の高いところにおられた、ということで推計しているものです。作業に伴う被曝線量は把握していません」
――では、作業に伴う被曝線量と、通勤やその他、普段の生活の被曝線量を合算した評価をしておられるのはどちらなんでしょうか? 福島県民の方々の。
安原先生「現時点では、私どものほうでは把握はできていません」
作業員の方々には、福島県民の方々が一番多いんですよ!! このことを私は本当に本当に憂えています!
作業員の方々は、地元の方が多いのです。でも、皆さんあまり、この県の行動記録の調査は提出していない、と伺っています。そして、放射線従事作業で被曝した線量は、66mSVどころかもっと高い方々がたくさんおられます。
でもね、電離放射線障害防止規則で規制される線量は、作業中だけ。福島第一原発の敷地を出るときに、線量計を返却します。
じゃあ、放射線従事作業と、普段の生活の線量を合算して評価するところはどこなの?
これは、私は以前からあちこち聞いているけれど「少なくとも、うちじゃない」と言われ続けています。
あのね、子ども・被災者支援法ってあるでしょう。素晴らしい理念のものだと思うけれど、私はとても不満があります。作業員の方々のことが入っていないから。
チェルノブイリ原発事故のあとに作られた、チェルノブイリ法(※)を参考にした、と言われているけれど、「日本版チェルノブイリ法を作りたかった」とおっしゃっている方もおられるけれど、本当に!? って思っちゃうんです。なぜかっていうと、作業員の方々のことが抜け落ちているから。
※チェルノブイリ法…チェルノブイリ原発事故の被害を受けたウクライナやベラルーシ、ロシアで作られた、放射能被害者の避難生活や生活支援、健康診断や医療費助成などについて定めた法律のことを指す。
下記は、衆議院のHPにアップされている、「チェルノブイリ原発事故被災者の状況とその社会的保護に関するウクライナ国法(1991年)(概要及び本文)」からの抜粋です。
チェルノブイリ原発事故による被災者は、以下に該当する者とする。
・チェルノブイリ原発事故のリグビダートル――事故時とその後の処理に直接従事した市民。
・チェルノブイリ原発事故により被害を受けた者――チェルノブイリ原発事故の結果、放射能被曝の影響を受けた、子どもを含めた市民。
ね、この法律の対象者として、まずリグビダートル、つまり事故の処理に従事した「市民」が先に記されているのです。
一方、日本の子ども・被災者支援法はこちら。
第一条 この法律は、平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故(以下「東京電力原子力事故」という。)により放出された放射性物質が広く拡散していること、当該放射性物質による放射線が人の健康に及ぼす危険について科学的に十分に解明されていないこと等のため、一定の基準以上の放射線量が計測される地域に居住し、又は居住していた者及び政府による避難に係る指示により避難を余儀なくされている者並びにこれらの者に準ずる者(以下「被災者」という。)が、健康上の不安を抱え、生活上の負担を強いられており、その支援の必要性が生じていること及び当該支援に関し特に子どもへの配慮が求められていることに鑑み、子どもに特に配慮して行う被災者の生活支援等に関する施策(以下「被災者生活支援等施策」という。)の基本となる事項を定めることにより、被災者の生活を守り支えるための被災者生活支援等施策を推進し、もって被災者の不安の解消及び安定した生活の実現に寄与することを目的とする。
「居住していた」ということのみの記載で、放射線作業従事者については触れられていません。
どんな内容の法律ができるかわからないうちは、少し期待をされてた(チェルノブイリ法を参考にするなら、作業員への補償も盛り込まれるはずだから!)作業員の方々が、「また、俺たちは切り捨てられたな…」と話すのを聞いたときは、悲しかった!
この法律に関わっておられた議員さんに聞いたことがあります。
――チェルノブイリ法を参考にされたなら、どうして、作業員の方々については盛り込まれなかったのですか?
「日本の作業員は、電離則や様々な労働規則で守られていますから」
違うよー! チェルノブイリも、原発事故の特別な法律の他に、事故前からの元々の法律はもちろんあるよー、原発事故があったからこそ、さらに作業員の方々への法律もできたんじゃない…。
今、まだ過酷な環境で、高濃度の汚染水と格闘しておられる作業員の方々を、どうか切り捨てないでください。
***
4.議員レク&作業員の方々のお話
わ、福島県庁に電話して、急いで東電会見に行かないといけないけど、少しだけ。
原発の再稼働の新基準に関して。
作業員の方々は「福島原発事故の原因が解明されてないのに、教訓として生かされてないのに、新基準作っちゃって大丈夫?」とおっしゃる方が多いです。
そして、一番気になったのはこの言葉。
「ハード面じゃなくて、ソフト面が全然なってないよ。シビアアクシデントになったとき、誰が対応するの? 福島ではさ、みんな責任感や正義感や、良心で現場が動いたんだよ? 『行ってくれるか…?』と言われ、こちらに主導権があったんだよ。でも、どれだけ責任感で、大量に被曝して、事故の収束作業にあたっても、結局切り捨てられちゃうんだもん。もう、今回の事故で、業界の現場の人間はそれがわかっちゃったんだよね。
もう一度、どこかで事故があったとき、『行ってくれるか…?』と言われたら、みんな、イヤだ! と遠慮なく逃げ出すよ。今回の事故は、事故のときに、誰が動くか、ということをあぶりだした一面もあるんだよね、通常時と、事故時は全く条件が違うよ。
それより、自衛隊に原子力部門を作ったほうがいいんじゃないの? テロ対策や、自然災害対策で。原発のシビアアクシデントのときに、自衛隊は、あんまり役に立たないことがわかっちゃったんだから。集団的自衛権とかよりも、自衛隊に原子力部門を作ることがどう考えても先決でしょうよ~」
そして、参議院議員になった山本太郎くんが、規制庁の方々をおよびして議員レクを受けるときにおしどりも呼んで頂きました。原発の再稼働の新基準についての話のとき。
新基準については、シビアアクシデントについての対策を盛り込んでいるのがウリなんですよね、作業員の方にお聞きした話をぶつけてみました。
――シビアアクシデントのときは、誰が対応するんですか? 自衛隊や警察、消防に原子力の教育、防護はいりませんか?
規制庁「基本的に事業者が対応することになっています」
――でもこの資料では、テロ対策のとき、についても言及されてますよね?
規制庁「はい、9・11のように航空機が原発に突っ込む状況も想定して、半径100m以内に、このような設備を…」
――いえいえ、ハード面ではなく、そのようなテロの状況のときでも、事業者が対応するんですか?
規制庁「はい、基本的にはそのようになっております」
――資料に、原発のシビアアクシデントのときの「国民の安全、保障…」などなど書いておられますが、これも、結局は事業者が…。
規制庁「はい、事業者が対応するようになっております」
もーう、なんだ! このムチャぶり!!
そして、放射性物質拡散防止対策が、ホースで水を撒く、という一択のことに衝撃を受けつつ、議員レクは終わったのでした、太郎くんは情報の可視化を進めているので、この模様もネットに上がっております。しかし、このへんで、わたくし、そろそろ電話取材して、会見にダッシュしますわん、またね!!
【今週の針金】
汚染水の作業にあたられている方々の足の指に、リングバッチという線量測定器をつけていない事をマコちゃんが突き止め怒っていましてん!
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飛び回る合間を縫っての、おしどりのおふたりからのレポートでした。
報道でもなかなか伝わってこない、作業員の方たちの声を伝えてもらうたび、
これでどうして「収束した」なんて言えるんだろう? と思わずにいられません。
「事故原因さえ解明されていないのに、新基準をつくって大丈夫なのか」。
あまりにまっとうな指摘ではないでしょうか。
なお、おふたりが「ダッシュ」した会見の様子も、
後日「脱ってみる? デイリー」で伝えていただけると思いますので、
こちらもぜひあわせてお読みください。
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おしどりの2人への「ご祝儀口座」はこちらから!
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おしどりプロフィール
マコとケンの夫婦コンビ。横山ホットブラザーズ、横山マコトの弟子。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。2003年結成、芸歴は2005年から。
ケンは大阪生まれ、パントマイムや針金やテルミンをあやつる。パントマイムダンサーとしてヨーロッパの劇場をまわる。マコと出会い、ぞっこんになり、芸人に。
マコは神戸生まれ、鳥取大学医学部生命科学科を中退し、東西屋ちんどん通信社に入門。アコーディオン流しを経て芸人に。
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