憲法と社会問題を考えるオピニオンウェブマガジン。
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2013-05-29up
おしどりマコ・ケンの「脱ってみる?」
第58回
地下水の分析は、
関西電力のグループ企業じゃダメでしょ? の件。
ちょっと空いたので、ダイジェストを。
1.地下水を汲み上げて海に放出する件。(海に流すのだからフェアな分析をしてよね!)
2.質疑からちょっと納得いかなかった件について。(東電の言う「一般論」て、情報を出さないことですか?!)
3.おまけ。
4.おまけのおまけ。
***
1.地下水を汲み上げて海に放出する件。
(海に流すのだからフェアな分析をしてよね!)
福島第一原発の汚染水は増える一方なんです。どうしてかというと!
山側から流れる地下水が、福島第一原発の壊れた原子炉建屋に流れ込み、高濃度の放射性物質を含む汚染水と混ざっていっているのです。
その量、毎日400t!! つまり、毎日400tの汚染水が増え続けているのですね、NO!
なので、少しでも汚染水を減らそうと、原子炉建屋に流れ込む前に、地下水を汲み上げ、
それをそのまま海に流そうという計画があります。
ま、汲み上げても、毎日300tは原子炉建屋に流れ込むんだけれど。でも、毎日400t増え続けている汚染水が、毎日300t増えるということになれば、何もしないよりはマシかな、ということで。
うまくいけば、良い計画でしょう。増え続ける汚染水は、もう収納するタンクが足りなくなっていますからね!
でも、いくつか疑問があります。
①地下水を汲み上げて、地盤沈下などは大丈夫? (4月の地下貯水槽から汚染水が漏えいしたとき、施工時にどういう検査をしたかお聞きしたら、満水時の地盤沈下量などは測定していなかった、ということだったので、「固い土地です!」というだけで地盤沈下については、詳細な評価はされてないんだよね…)
②海に放出する地下水に、潮位などで原子炉建屋からの汚染水が流入したりしない?
③汲み上げる地下水の揚水井は、4月に漏えいした地下貯水槽よりも海側にあるので、その漏えいした汚染水が、いつか必ず地下水に混ざってくるよね…。 (電中研<電力中央研究所>の評価した報告書は、漏えいした汚染水の放射性物質は、10~10の2乗年程度、つまり10~数百年程度で海に到達する、ということでしたけどね。海よりも、もっと地下貯水槽に近い揚水井は、どれくらいの期間で漏えいした汚染水の放射性物質が到達するかしら?)
④海に放出する地下水は、本当に本当に、汚染されてない?
この④の疑問が私は一番重要だと思います。
東京電力の資料では「第三者機関で分析した結果、汚染は周辺の河川と同レベル!」ということだけれど。
会見の私の質疑の抜粋&意訳をします。全文読みたい方は、ケンパルが書き起こしているからそちらをどうぞ!(下記参照)
――いや、そもそも、第三者機関てどこでしょう?
東電福田さん「化研と環境総合テクノスです」
――環境総合テクノスって、関西電力のグループ会社で、株主が関西電力ですよね? それは第三者機関として成立します?
東電福田さん「はい、そのように判断しております」
――海に放出する福島第一原発構内の水の分析について、事故を起こした企業や、原子力を推進してきた国や電力会社のみのチェックとなっているのは、透明性が低いと思うのですが。第三者、非政府組織、非営利団体のチェック、検証を受ければ透明性や説得力が増して説明がし易いと思いますが、そこのところは広報としてどうお考えですか。
東電福田さん「そこのところは考えておりません」
――東京電力にソーシャルコミュニケーション室ができ、そこにリスクコミュニケーターの方が4月から配属されたという事でしたが、今回、福島県の漁連の方々や茨城県の漁連の方々に説明する、海に放出する地下水の分析を、関西電力の関係グループ、株主の会社に分析させるというのは、このリスクコミュニケーターの方々はそれでOKだということだったのですか。
東電福田さん「リスクコミュニケーター自体は既に色々活動している中にもいますので、そういう意味では、一部の人間は関わっている部分もありますし、そういうあの、えーと今まで実際にそういう事をやった人間も、その時点でリスクコミュニケーターとしてあの、派遣された人間もおりますので、そこはケースバイケースになるという風に思います」
(ちょっと意味がわかりません…)
――すいません、あのー、普段の分析ではなく、海に放出する水の分析を漁連の方々に説明する試料の分析会社を、関西電力のグループ会社にするというのをリスクコミュニケーターの方が是とするならば、あまりリスクコミュニケーターとしてお仕事されていないのではと思うのですが。如何ですか。
東電福田さん「そこについてはご意見を承りますけども、そういう意味で今の時点でまだソーシャルコミュニケーション室、リスクコミュニケーターという形でどう関わるかというのは、色々検討する余地あるかと思っています」
むーん、要領を得ません!
ま、とりあえず現状は、海に流す福島第一原発構内の地下水の分析は、関西電力のグループ会社がやっており、そこの会社の太鼓判が押されていますけどね!
本当に、海に流す予定の地下水が汚染されていないなら、「本当にきれいな水なんで、どの研究所でも、どの研究室でも、やりたい方が分析してくださって結構ですよ! そのほうが私たちも説明しやすいですから!!」と、いろいろな第三者機関(本当の意味のね! 電力会社のグループ企業なんかこの場合第三者機関じゃないよ!)に分析させてくださったら、東京電力の信頼性も上がるのにねぇ…。
5月末と6月頭に、もう一度福島県の漁連の方々に説明をし、そして、汲み上げた地下水を海に流すかどうかの理解を求めるそうです。
ちゃんとフェアに分析した資料をつけてよね、リスクコミュニケーターの方々もきちんとお仕事して、「この際、不安がっている方々の指定する団体、分析機関に測定してもらい、不安を払拭しましょう!」くらいの計画を出して頂きたいものです!!
詳細な質疑のやりとりや資料や記事は下記でござんす。
「脱ってみる?デイリー」より
・5月13日東電会見マコちゃんの質疑ですねん!チョイ長いです
・2013年5月15日東電会見マコちゃんの質疑!
ニュースサイト「DAILY NOBORDER」より
・地下水を海に放出する計画は透明性が確保されているのか(おしどりマコ)
***
2.質疑からちょっと納得いかなかった件について。(東電の言う「一般論」て、情報を出さないことですか?!)
皮膚の被曝線量を測定するのに使うリングバッジの会社がどこか、というのを聞いていたときです。
ガラスバッジの取材をしているときに、コントロールバッジ(*)の仕組みやら何やら調べ、メーカーが千代田テクノルと長瀬ランダウアかのどちらかで、特徴があることに気づいたからです。
*コントロールバッジ…ガラスバッジ、リングバッジなど、着用バッジに対する自然放射線の影響を除去し、被ばく線量を正確に算出するために用いるバッジのこと。
【1回目の質問のとき】
――リングバッジの会社は東京電力は千代田テクノルなのか、長瀬ランダウアなのかもし教えて頂ければ。
東電福田さん「ちょっとあの、個別のメーカーについての回答は差し控えさせていただきます」
【2回目の質問のとき】
――別件ですが、リングバッジは千代田テクノルか長瀬ランダウアのどちらか、という事については回答出来ないということですが、どういう理由でですか。
東電福田さん「はい、契約に関わることですので回答は差し控えさせていただきます」
――化研や環境総合テクノスなどは公表は出来るということなんですか、これは契約されてると思いますが。
東電福田さん「はい、ここについては確認が取れてございます」
――公表していい、と。
東電福田さん「はい」
――千代田テクノルや長瀬ランダウアは「公表しないでくれ」という要望若しくはそういう契約なんですか。
東電福田さん「そういう意味では先程ありましたように地下水バイパスの第三者機関というのはそういう位置付けで、第三者性という事で確認をして頂いてますので、そういうことを出して説明しているということです」
――わかりました。不思議なんですが、千代田テクノルや長瀬ランダウアは各自治体や各除染事業をやってる会社などのガラスバッジ、クイクセルバッジもリングバッジもやっておりますが、何処の病院、会社、自治体でもどちらを使っているかというのは回答しておられますので、そのような「公表しない」という契約は千代田テクノルや長瀬ランダウアとは結んでいないということだったのですが。
千代田テクノルや長瀬ランダウアは東京電力とはそういう契約を結んでいるということですか。通常、別に公表はされてますので。企業や病院でも。
東電福田さん「はい、そういう意味では確認をさしてください。契約関係の一般論としては我々はそういう契約を結んでると確認してると考えてございます」
――すいません、「確認します」ではなく、今私が言わなければ福田さんは違うことをおっしゃいました。「契約でお答え出来ない」とおっしゃいましたが、そのような契約が本当にあったかどうか、確認をされずに回答されたということですか。
東電福田さん「そこは一般論の契約でございます」
――あの、一般論の契約としてリングバッジの測定会社は別に何処の企業、何処の病院、何処の自治体でも公表しておりますので、私は一般論の契約ではこれは公表するものだ、と思っておりました。
東電福田さん「そういう意味では当社と協力企業、メーカーとの契約という意味での一般的にはそういう扱いをしております、という事です」
――わかりました、では確認して回答を頂きたいと思います。今の段階でこれが契約で回答出来ないとおっしゃったのは、福田さんのその、お考えになっていた一般論だったということですね。福田さんの中での一般論だったということですね。
東電福田さん「はい、当社のそういう契約の扱いとしての一般論です」
――わかりました、ありがとうございます。
後日、東京電力が契約しているリングバッジの会社は、千代田テクノルです、とサラっとご回答頂きましたが…。
別に、出しても何ともない情報も「東京電力の一般論」として、「回答は差し控えさせていただきます」ということになっているようですよー。
***
3.おまけ。
ベラルーシのヤブロコフ博士のことも書こうと思ったら、長くなりすぎなんで次回にします、とか言ってるうちに、たくさんトピックが出てきて書けなかったりするんだよね、だってネステレンコ所長のことも「脱ってみる?」に書いてないことに、今気づいたんだもん!
気合を入れて、来週までにもう1回はさめますように! と自分に期待をしつつ。
さぁみなさん、もう6月ですよ! 参院選までもうすぐね! がっつり取材しなけりゃ、と思いつつ。
私は正直いって、選挙で社会は変わらないと思っています。たまーの選挙の1票で何が変わるのかしらね!
それより、普段の生活で、どれだけ「社会を変えてやるぜ!」と気合を入れて生きていくか、だと思っています。
普通に生きてて、選挙に行って、「あらん! 私の1票なんて意味ないんじゃないの! 社会変わんないわよ!」
そりゃそうでしょね。全力で生活していって、で、選挙の1票も全力でいく! それなら何とかなるのかしらね?
けど、私は、本当に選挙より普段の生活のほうが重要だと思っています。何を買って、何を支持して、何に時間を使い、何を話していくか。
やっぱりね、お金は社会の議決権だと思うのですよ!
全てのママたちが「あたくしたち、純石鹸を使うことにするわ!」と決めたら、法律なんかできなくても、界面活性剤の立場が無くなるわけです。
「あたくしたち、遺伝子組み換えの食品は買わないわ! だって、モンサント社の除草剤ラウンドアップがたくさん残留してるんですもん! やっぱり、安さでなく安心にお金を出すわ!」と決めたら、法律なんかできなくても、モンサント社はピンチになるわけです。
お金は社会の議決権なので、自分が支持するものに、どんどんお金を使う! これも選挙と同じ1票です。
同じように、どう時間を使うか、誰に何を喋るか、自分の一挙手一投足が、選挙と同じ、社会を変える1票だと思います。
ま、何が言いたいかというと、参院選まで全力なのはもちろん、これまで以上にわたくしはゲリラ活動に励みますことよ! ということです。
自分の生活圏をこっそり変えていくための、面白テクをご紹介します。
☆図書館や本屋さんに、自分のおススメ本をリクエストして、図書館や本屋さんを自分好みのラインナップにして、ご近所さんに読んでもらえるようにする!
☆文房具屋さんでペンを買うとき、試し書きのところに、思っていることを書く!
(ちなみにうちのケンパルは今、憲法本をかたっぱしから読んでおり、何やら難しいことを筆ペンで書いては、別のペンを買っていますが…)
☆電車や人の多いところで、気になる社会問題の本を堂々と読む!! 楽しい遊びの場や、かわいくおしゃれをしていたらなお良し!!
(ケンパルは憲法本を、私は原子力本、被ばくに関する本を読み、「あら? そういう難しい本が流行っているのかな?」と思わす!)
(ちなみに、クラフトワークが来日したときのライブで『放射能/Radio-Activity』の日に、始まるまで本を読んでいたのは私たちです☆)
他にも面白テクはありますが、その他みなさんの面白テクも募集しております♪
***
4.おまけのおまけ。
おまけですら長くなるという、これが私の脱ってみる? クオリティ! すみません…
先日、経済学の研究者にいろいろレクチャーを受けました。もし許可が取れたら、その論文もご紹介したいものです。
経済って、弱者を踏みにじるのがデフォルトなんでしょうか…と質問する愚かな私への先生の答え。
「経済学は元々弱者は救わない。効率を追求する学問だから。経済が悪いのではなく、経済至上主義の社会がマズイ。経済第一の社会というのが歪みだと思う。豊かさや幸せと経済は関係ないですからね。
経済至上主義ではなく、経済に代わる第一義のものがこれからの社会には必要だと思います。それが何なのかわからないですけど」
経済学の先生が「経済至上主義がマズい」とおっしゃるのが興味深かったです。
さー、経済に代わる第一義のものって何でしょうね?
資本主義、経済至上主義ではなく、これからは
「持続可能主義」
「多様性主義」
ってどうでしょうね?
と、いうような話を、京都大学名誉教授の岡田先生からお電話を頂いたのでしてみました。
「僕はね、昔、国益ではなく人類益という考え方でいくべきだ、と主張していたことがあってね、でも、学会でもどこも、ピンと来なくて全然響かなかったんだよ」
――え? 先生、昔っていつごろのお話ですか?
「40年ほど前かな」
わー、バブルのずっと前に「人類益」ということをおっしゃるなんて、早すぎる! 賢者はやっぱりスゴイですね!
それから岡田先生と「人類益」と「国益」の話で盛り上がりました。
「国益」というのは、他国の人を虐げるどころか、自国の国民も踏みにじることが多々ある、水俣病やアスベストの取材を通して、「国益」というのは一部の人の利益のことなんだな、としみじみ思います! と私が話すと
「そう、国益というのは、力を持った人々の利益ということですね。そして国とは実態の無いものだから、そうではなく、全ての人々、自国も他国も、全ての人類の利益、人類益という考え方が必要だと思いますね」
人類が幸せになるためには、全ての生き物も健やかでなくちゃいけません。ということは、人類益は、地球上の生物益でもあるかもねぇ!
ということで、
「人類益主義」
「持続可能主義」
というのはいかがでしょうか?
【今週の針金】
僕も生活圏を少しずつ変えるために早速、はりがねの試し曲げをしてみましてん!
おしどりプロフィール
マコとケンの夫婦コンビ。横山ホットブラザーズ、横山マコトの弟子。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。2003年結成、芸歴は2005年から。
ケンは大阪生まれ、パントマイムや針金やテルミンをあやつる。パントマイムダンサーとしてヨーロッパの劇場をまわる。マコと出会い、ぞっこんになり、芸人に。
マコは神戸生まれ、鳥取大学医学部生命科学科を中退し、東西屋ちんどん通信社に入門。アコーディオン流しを経て芸人に。
ブログ:
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マコ:@makomelo
ケン:@oshidori_ken
その他、news logでもコラムを連載中。