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2011-09-28up

おしどりマコ・ケンの「脱ってみる?」

第23回

作業員の方々の健康管理はどこがチェックしてるの?
加害者側の東京電力の自己申告のみ? の件。

 さてさて今回はたっぷりたまってしまった会見のまとめをば!

 最近は住民の方々の被曝を含め、作業員の方々の被曝もとても心配です。吉本の先輩にある日、楽屋の隅に呼ばれ、小声で言われました。従兄弟が東京電力の社員で、3月11日以降、ずっと福島第一原発で働いている、とのこと。めったに帰ってこないが、帰ってきても一言も喋らない。親戚一同、とてもとても心配している。おしどりが原発のことで動いていて、嬉しい。どうか原発で働く作業員のことも気に掛けてほしい、ということでした。その先輩とは初めてお話ししたんですが、お身内に福島第一原発で働かれている方がいるということは、どれだけ胸がつぶれる思いがすることでしょう。年の近い、とても仲良しの従兄弟なんだそうです。

 というわけで、9月2日、東京電力単独会見に行ってきました。8月31日に汚染水の処理施設で作業をしていた男性作業員2人が、誤って放射性物質を含んだ水を浴びたことがわかったからです。
 それぞれ、0.16ミリmSV、0.14mSVの被曝をした、ということだったんですけど、8月31日に被曝された方々を含め、今まで高線量被曝された方々の血液検査の結果を公表してほしい、と思ったのです。

 ラマーシュ著の『原子核工学入門(下)』によると(原子力推進側の情報だと、闘う知識として役に立つからね☆ ちなみに今の日本は原子力推進側の規制をも無視したヒドイ現状だよ!)、「急性全身放射線被曝による急性効果」は「一番に染色体異常および白血球レベルが一時的に低下する個体が見られはじめる。その他の効果は観察できず」とのこと。
 まぁ実際は他にもあるかもしれないけど、とりあえず原子力推進側はそう考えてるってことだよね。ちなみにこれはUSDOE(米国エネルギー省)の指針です。

 高線量被曝された方々は、今まで「健康に支障は無い」と発表され続けているけれど、被曝した放射線量だけでなく、血液検査のデータも知りたいよね? 自覚症状が無くても、白血球に挙動が表れるかもしれない。

(以下のやりとりは東京電力松本さんの発言のみ、完全コピー)

――8月31日や以前まで、高線量被曝された作業員の方々の血液検査のデータを公表していただきたいんですけど?

東京電力松本さん「血液検査と申しますと…。あの、いわゆる…健康診断の結果はありますが、我々としましては血液検査の状況を公表する予定は御座いません」

――高線量被曝された方のホールボディカウンターや、線量は公表されてるけど、血液検査はそれぞれされてる?

東京電力松本さん「えっと、ちょっと確認しますが、放医研等での診察は受けてますが、どういった検査が行われているかについては確認いたします」

――現段階でのそれぞれの高線量の方々の被曝について、早発の確定的影響はないというようなコメントしかないけれど、赤色骨髄の動向とか血液形成症候群は始まっているのかというような事は一切分からないんだよね。今まで公表された高線量ですと恐らく始まってるんじゃないかしら、血液検査のデータの公表もしていただければと思うんだけれど?

東京電力松本さん「あのー、個別に検査記録の公表をするかどうかについては今後検討させていただきたいと思っておりますが、100mSV以上の被曝をされた方は健康診断を定期的に受けて健康のチェックをされますのでそういった場合に何か異常があった場合には公表したいというふうに思います」

――異常が無い場合でも血液検査のデータもその何mSVという報告と同時にして頂きたいんだけどな? 早発的な確定的影響がないという事しか実際分かんないから、今までの作業員の方々が適切なケアを受けているかどうかのチェックも出来ないし。血液検査のデータを公表していただければと思うんだけど、検討してくださる?

東京電力松本さん「はい、あの血液検査のあのー検査記録公表できるかを含めてあのー、考えさせていただきたいと思います」

――よろしくお願い致します。何時ぐらいに回答いただける?

東京電力松本さん「えーっとまだ、回答の時期についてはお答えする事はできません」

 そのあと、他の方の質疑応答がありました。高線量被曝された方をチェックするサーベイメーターの値が全部10万cpmなんだよね、ひょっとして、10万cpm以上計れないの? と質問された方がいらして。東京電力は「そうです」というお答え。で、やりとりはそれで終わったので。

――先ほどお聞きしていてちょっと不思議に思って。不勉強で恐縮なのですけれど。あの、10万cpm以上計測できる器械というのはこの世の中にないの? もしあるとすれば、何故その使用はされないの?
 あともう一点、高線量被曝した場合すぐに白血球が低下したり、リンパの方に挙動が出ると思うんだけど、先ほどのご回答でその、高線量被曝された方々はホールボディなどの線量の計測のみで、血液検査はされていないの?
 あともう一点、教科書的には(原子力工学入門の放射線防護の章ね)確定的な早発影響は60日までのものとされてて、晩発的影響は60日以降というのがわりと原子炉工学的な作業員の方々の被曝の場合の影響の考えかたなんだけど、東京電力として、確定的な早発的影響は大体何日くらいまでのものとお考え?

東京電力松本さん「はい、まずサーベイメーターの件でございますけれども、こちらはあの身体汚染があるかないかっていう事がサーベイの目的ですので、あのまあ汚染があるか、ないかという観点から見ますと、10万cpm以上が測れないという事が問題になる事ではないと思っています。
 当然その、それ以上のものがあってもきちんとふき取ってですね、きちんと除染できましたという事が問題なのであって、除染をしても、まだ放射性物質が付着していると、いうような場合には、更なる除染を考えなきゃいけないという状況でございます。
 まあ、世の中には10万cpm以上測れるサーベイメーターは有るのかもしれませんが、いわゆるこの身体汚染をサーベイする目的からすると、それ以上のサーベイメーターを今のところ用意する予定はありません」

――では、東京電力としては10万cpm以上測れるサーベイメーターを用意する必要はないという事で、世の中には10万cpm以上計測するサーベイメーターはあるの?

東京電力松本さん「私はちょっと存じ上げてません。あの、物としては有るかも知れませんが、作業現場で身体汚染を見つける為のサーベイですから。例えば20万cpmでした、30万cpmでしたという事を確定させる必要はないという事です」

――それはどうして?

東京電力松本さん「汚染の有るかないかを調べるのが目的でして、被曝線量と、cpmは直接関係がありません。まあ確かに大きな放射性物質が付着していればそこからの被曝というのは考えられますけれども、被曝線量そのものは個人線量計の中で何mSVというのを毎日測定しておりますし、過剰な被曝がある場合には警報が鳴るような設定になっておりますので、そういった所で防げると思っております」

――線量計のシーベルトで計測しているので必要ないと?

東京電力松本さん「はい、身体汚染、放射性物質がどこにどのくらいの付着があるかという事を調べる目的になります。例えば、当ててみて肘なのか、手首なのか、あるいは胸なのか、お尻なのか、てな所を調べていくという事になります」

――cpmは定性的な検査のみで定量的にはシーベルトという考え方?

東京電力松本さん「定性的というか、どれくらいの量、いっぱいついてるのか、少ないのかっていうのもカウント数でわかります。したがって10万cpm以上のカウント数が出てくれば、これは沢山ついてる、という事で念入りにふき取ることになりますし。バックグランドが5000でございますので、それが1万、2万という程度だったら、あのー、10万に比べれば付着量は少ないというような考え方でございます」

――バックグランドが5000cpm ということ。

東京電力松本さん「そうですね。福島第一は今そうです」

――10万cpmでも20万cpmでも除染をすれば、沢山汚染をしているものを除染をしたら、その後、実際的にはシーベルト換算でいいという事なの?

東京電力松本さん「はい、そうですね。要はそういう放射性物質の付着をきちんと取り除いて、バックグランドレベルまで下げられたというような事が重要だと思っております」

――重要だと思っている事はよく分かったんだけど、後々に出てくる身体的影響としては10万cpmも20万cpmも除染をすれば同じだという認識なの?

東京電力松本さん「身体的影響という意味では、いわゆる線量計で測っているmSVとか、基本的には判断基準になろうかと思います」

――チェルノブイリでもシビアアクシデントがあった場合、10万cpm位でその身体汚染のサーベイはしていくものなの?

東京電力松本さん「いえ、チェルノブイリが実際どうだったのかについては存じ上げてません。それから、高線量の被曝に関しましては100mSV以上を対象にしておりますけれども、定期的な健康診断を実施するという事にしています。あの、なにか60日で切るって訳ではなくて、定期的に健康診断を受けていただいて、健康上の影響があるのかないのかというのをお医者さんの診断を受けているという状況です」

――その早発的な影響というのはどのくらいの期間とお考え? おおよそで。

東京電力松本さん「早発的か晩発的によらずですね、定期的にお医者様の診断を受けて、健康的に問題が無いかというのを見る事が重要だと思います」

――定期的と仰るのは先ほど仰った3カ月に1回?

東京電力松本さん「はい、3カ月に1回お医者様の診断を受ける」

――では、先ほどの100mSV以上の方々にだけ血液検査をされるということですか。

東京電力松本さん「血液検査はどの方に行われているのかはまだ確認できておりません」

――今まで公表された高線量被曝された方々に血液検査がおこなわれているかどうか、そして、その方々のデータを公表していたけるかどうか、またご回答ください。

***

 この日は午前の会見に行ったのですが、ガッラガラであまり質問される記者さまがいらっしゃらなかったので、けっこうたっぷり質問ができました。
 で、久しぶりにお会いした東京電力の広報部の方とお話をしました。

――お久しぶりです☆ こないだ、バラエティの夏の特番で東電会見を喋る企画があったのに、広告会社からの圧力で出番が無くなっちゃいましたよ! 

広報部の方「えー、そうなの!? ほんとに!?」

――ほんとにじゃないですよ!(笑) 今バラエティで「原発」と「東電」という言葉を一切出したらダメなんですって!

広報部の方「えー!? ごめーん!!」

――ごめんじゃないですよ!(笑) ちょっとどうしてくれるんですか!

広報部の方「えー、どうしよ、あ、そうだ、あなた勉強家だから本あげるよ! 原子力発電所の本いらない?」

――それ、ワイロにならないですか?

広報部の方「ならないならない! PRで無料で配ってるやつだから!」

――じゃ、読みたいです。

広報部の方「取ってくるから少し待ってて!」

 とのことで頂きました。でも、後で他のフリーの記者さんにお聞きしたら、3月の事故直後の記者会見のときに、会見室に山積みで置いてあって、その頃の記者さまがたはみんなお持ちの本でしたとさ。

 そして、なにかあったら連絡ちょうだい、と名刺交換をしたのですが、すぐにその東京電力の広報部の方からメールを頂き、「一度舞台を観たいので、スケジュールを教えてくださいね」ですって。
 けっこう、私、東京電力と仲良しなのにな? 何度も顔を合わせている方々でもちろん、イヤな方もいらっしゃるけど、良い感じの方もいらっしゃいます。
 遅れて焦って会見場に走って行ったら、「今日は少し遅れているから、走らなくても大丈夫だよ!」と声をかけてくださる方。
 ケンパルだけ先に行って、私が遅れて行ったとき、「あれ、バラバラは珍しいね、お連れさんは後ろの左端にいるよ!」と教えてくださる方。
 もちろん、本当にイヤな感じの方もいらっしゃるけれど、だからといって、東京電力の社員全員が悪魔のように憎らしいわけではないし、うーん、何というか、敵は東京電力だけじゃなくて、東京電力も単なる1コマにすぎない感じがします。東京電力の方々も、原子力ムラ、核マフィアに操られるのではなく、人間として、社会と地球と子どもたちのために仕事をされたらいいのにな。
 それに、「敵を倒す」より「味方を増やす」のほうが闘い方として素敵じゃない? あら? 気付いたらみんな味方になってない? というのが理想!

***

 9月2日の統合本部合同会見は無かったので、9月8日の合同会見。
 まず、東京電力に血液検査の件をお聞きしました。

――高線量被曝された方の血液検査を公表するのはプライバシーでできないとのことだけど、消費者庁の個人情報保護法に確認したところ、これは個人情報保護法には触れないんですけれど、それでも公表していただけないの?(特定の個人が識別できないのであれば個人情報ではないの。被曝線量も血液検査のデータも同じ、個人情報ではない、ということ)
 あと急性白血病で亡くなられた方の血液検査のデータも公表していただきたいんですけれども。因みにこの個人情報保護法は生きている方のみ規制するもので、亡くなられた方は一切規制が掛かりません。公表していただける?
 もう一点、9月2日に福島県総決起大会があって、そちらの中小企業の方の商工会連合副会長の方が、作業員のお仕事をしたいと、東京電力と利害を共に共有しながら共存共栄の関係を40年続けてきて、2次3次下請けには作業員の仕事が回るけれども、直接契約している企業には作業員の仕事が回ってこないとおっしゃっておられました。その点がちょっと分からなかったのでご説明をお聞きしたら、東京電力さんのお考えじゃないですかと答えられましたので、そのお考えというものをご存知でしたら教えて?

東京電力松本さん「まず東京電力からお答えさせていただきますけれども、血液検査のデータ等につきましては、個人情報保護法に係るデータというわけではございませんが、個人個人のプライバシーに関することでございますし、産業医の先生が健康上問題ないというふうに判断されておりますので、私どもといたしましては血液検査の結果を公表することについては差し控えさせていただきたいというふうに考えております。
 それから、福島県の総決起大会のお話でございますけれども、私どもは、工事の契約に於きましては、発注者として元請け企業さんと契約させて頂いておりまして、元請け企業さんがその後、どういった企業と契約されるかについては、私どもと致しましてはなにか指示をするとか、この企業を使ってくれですとか、この企業を使うなと言ったような指示をすることはございません。

――以前、5月の統合会見のトピックでありました、作業員の造血幹細胞の保管をしないという判断が妥当であったかどうか、血液検査のデータを見たいので、公表して頂けないかしら? 以前、4月19日に東電会見で、私が、作業員の被曝線量を公表して欲しいとお願いしました時も、同じようにプライバシーの理由で公表して頂けなかったんだけど、現在では公表して頂いてるのはなぜ?

東京電力松本さん「はい、まず、血液検査の結果につきましては、繰り返しになりますが、個人のデータでございますので、プライバシーの観点から公表を差し控えさせて頂くということと、現時点でも産業医の先生からの健康診断の結果では、異常がないというような報告を受けております。それから、被曝線量に関しましては、多くの方々が現実に作業しておりまして、実際にどういうふうな作業環境であるのかというようなことをお示しする必要があろうということで、私どもとしては、個人の特定出来ないような形で公表させて頂いております」

――個人が特定出来ないような形で、赤色骨髄の挙動などを見たいんですけど、如何?

東京電力松本さん「はい、繰り返しになりますが、血液検査の結果につきましては、産業医の先生が既に健康上の問題はないということを確認させておりますし、プライバシーに関することでございますので、公表する予定はございません」

――では以前、被曝線量を公表して頂けなかったんですけれども、それを公表して頂くようになった経緯、心情の変化というのを教えて?

東京電力松本さん「心情の変化といいますか、こちらは、当時、250mSVを超える私どもの社員が発生したということに鑑みまして、私どもとしては、被曝線量については、公表するということを考えたものでございます」

――因みに、その産業医の先生はお名前を公表して頂ける?

東京電力松本さん「いえ、こちらは、私ども、それから各企業の産業医の先生方が従事されております」

 では少し攻め方を変えなくてはね!
 続いて文科省に質問。

――以前、義務教育に配る原子力教育、放射線教育の副読本についてお聞きしてたんだけど、(私が会見欠席のときに回答が出たのね)その回答が有識者からなる委員会で、複数の学会の監修という、とてもアバウトなものでしたので、もう少し具体的な情報を。その有識者は誰か、学会とはどこかを教えて?

文科省・伊藤審議官「放射線についての学校で用いますような副読本につきまして、ご質問がございました。以前この場で、同じような質問がございまして、前任者からの有識者、あるいは関係学会のご協力を得て作成中であるというふうにご答弁申し上げたかと思いますけれども、いずれにせよ、最終的に出来上がった段階、そんなに時間はかからないと思いますが、その際にはですね、どういう方々が入って、ご検討頂いたのか、あるいは、監修等にどういう学会が関与されたのかについて、その中で公表されるものというふうに考えてございます。
 現段階においては、最終版が出来てございませんので、お答えは差し控えさせて頂ければと思います」

(意訳:教えませ~ん)

――教科書検定などでも最終段階ではなく、検定段階から、そこに関わっている団体、有識者などは公表されると思うんですけれども、いかが?

文科省・伊藤審議官「一般の教科書の検定との話がでましたけれども、こちらについてはすいません、検定の委員会については、名簿は公表されているかもしれませんけれども、今回につきましては、間もなく出来上げるとのことでございますので、それを見て頂ければよろしいかと思います」

(意訳:今回はなかなか教えませ~ん)

――それはいつ頃、完成でしょう?

文科省・伊藤審議官「出来るだけ早くというふうに、作業急いでいるところでございます」

(意訳:まだ教えませ~ん)

 ま、別の方向から調べましょう。
 そして安全委員会から出た資料『低線量被曝のリスクからガン死の増加人数を計算することについて』について質問。

 あ、このやり取りは読むの面倒かもしれないので、そういう方は要訳した☆☆☆印まで飛んでくださいませ!

――今日配られました低線量被曝のリスクからガン死の人数を計算することが適切ではないことを示した資料について。ICRP(国際放射線委員会)2007 年のパブリケーション103 には、ハッキリと低線量における直線モデル、これ直線閾値なしのLNTモデルのことだと思うんですけど、それを仮定すると過剰のガンと遺伝的影響による損害は1990 年勧告に引き続き、1シーベルトあたり約5%としているなど、低線量被曝における名目リスクケースもハッキリと明示してるんですよね。なので、これは低線量被曝におけるガン死、ガンで死ぬ人数を計算することについて適切ではないと言ってるの? ガンが発生することには2007 年のパブリケーションには、そういうことは一切書いてないから、どういう意味の資料かしら? と思って。

安全委員会・加藤審議官「今日お配りしたペーパーの関係なんですけれども、何度かお話申し上げてますけれど、100mSV 以上の線量を受けた場合ですと、ガンのようないわゆる確率的影響の発生確率が、受けた線量に比例して上昇するということは、疫学調査からも非常に明らかな訳ですけれども、100mSV以下の線領域になると疫学調査からはそこの関係はよく分からなくなってくる。ただ、生物学的な研究なんかでは、そういった低い領域でも、確率的影響の存在は見込まれるんですけども、では、定量的に見てどれ位かということは、なかなかわからないという状況です。
 そういう状況なので、放射線防護ということの目的からは、100mSV以下でも、閾値なしの比例関係があるというふうに仮定してやりましょうということになっている訳であります。従いまして、あと、その場合のリスクなんですけれども、100mSVであれば、生涯のガン死亡リスクが0.55 パーセント上がるというような恰好になっている訳です。それを延長して考えれば、10mSVでは、リスクがどれだけ上がるかと言えば、0.055 パーセント上がるということになる訳ですけども、ただ、では、そういった線量を多くの人が浴びた場合に、どれだけガンの死亡者が出るかということは、そこはそういう線量域での放射線影響が定量的にどうなのかということは、はっきりしていないという状況ではそこにそういう人数の計算をやるということは、適切ではないでしょうということを今日お配りしたペーパーは申し上げております。一方、LNT、閾値なしの比例関係モデルを使うこと、そのこと自身はなんら否定されていないということであります」

――この資料はガン死の増加人数を計算することが適切ではないという資料ということですけれど、ICRP勧告、2007 年のパブリケーション103 は、そのような文言は書いていないと思うんですけれども、なので、ここの資料にICRPがピックアップされたことに関して少し不思議なんですけど?

安全委員会・加藤審議官「これはですね、以前、この会見でそういった低線量を多くの人が浴びた場合のガン死者数をなぜ出さないのか、というご質問があったことに対して、私は、それはUNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)とかICRP の場では適切ではないと言われておりますということをお答えした際に、では、その根拠となっている文章を配って下さいということがあったので、今日お配りしたものでありまして、ICRPのペーパーで言えば、例えば、この総括のですね、日本語で言いますと、2ページ目になりますけども、2ページ目に行って上から2行目のところからですね、「長期間にわたる非常に低い個人線量を加算することも不適切であり」、その後ですね、「特に、ごく微量の個人線量からなる集団実効線量」、これまあですから、非常に低い線量掛ける人数でもって、リスクがどれだけ増加するかということから、ガン死亡者数を計算することは避けるべきであるということを言われております。それから、そのページの下のほうの66項でもですね、日本語で言いますと、3行目の終わり頃からですね、やはり同じことが、言われておるということであります」

――分かりました。すいません、最後にもう一個だけ! それでは、低線量に於ける確率的影響はあるとこのパブリケーションには、書いてありますので、ガンの死者数を計算することが適切ではない、ガンは発生するが、死者数を計算することが適切ではないという資料ということ?

安全委員会・加藤審議官「はい、ガンが発生すると仮定することは、これは放射線防護上、そういう考え方に立ってます。そこは、なんら、この今日お配りしたところは、否定しておりません」

☆☆☆

 この延々のやりとりの超意訳!
 『低線量被曝のリスクからガン死の増加人数を計算することについて』という資料は、低線量被曝でガンは発生するけれど、死ぬかどうかはわかりません! という意味でした。トホホ。

 そしてこの日は質問を2回しました。

 まず園田政務官に。

――先ほどの除染関連の質疑の中で、モデル事業をこれから行うと仰っておられたけど、、それは南相馬市の実証実験のこと? その場合、その生活区域がどれだけ線量が下がるかと共に、その除染された方々がどれだけ外部被曝・内部被曝をするかなどの調査をされるの?
 で、被災者生活支援チームが、7月の合同会見で4時間除染作業をしてマスクをして手袋をした場合の、外部被曝・内部被曝の線量が発表されておりました。でも現段階で、8時間除染をしたり、マスクをされなかったり。手袋もされなかったという状況があると、前回の8月22 日の会見でお聞きしたとき、その資料はガイドライン、お願いというので、縛るものではないという回答でした。ですので、そのモデル事業はもう一度またそういう除染する住民の方々がどれだけ被曝をするかという資料はとるの?
 で、あと住民の意向が除染して戻るべきか、移るべきかと分かれるのは、先ほど性善説で信じたいと仰ってたけど、9月2日にこちらで有りました県民総決起大会に福島県の300 人の方々が来られましたが、ほぼ除染して戻りたいという発言でした。けど、その同じ日にいわきと飯舘と南相馬の私の知り合いに電話したんだけど、その県民総決起大会が行われていることすら知らなくて。県知事、副知事が県民200 万人の声を吸い上げると仰ってたんですけど。市町村長、年配の方々は除染して住みたいのですが、10代・20代・30代・若者子育て世代は果たして住めるのかという思いがあります。ですので、そういう方々の声をどうやって吸い上げていくの? お考えがあればお聞かせくださいませ。

園田政務官「実証実験についてですね、南相馬市ともう一カ所、既に話はついているというふうに聞いております。ちょっとすみません、もう一カ所について手元に資料がないので、また確認をしてお伝えをしたいと思います。それから、内部被曝、外部被曝の件についてでも合わせてそれは当然ながら慎重に調査をしていかなければならないというふうに思っておりますので、高線量のところについてはですね、より詳細な実験というものがなされるべきだろうというふうに思っております。その点で言えば、先程の方の質問にもございましたけれども、支援チームでですね、より詳細な被曝の評価というものを出しておりますし、また、それをきちっと管理をしていかなければならないというのはおっしゃる通りだと思いますので、その点についてはもう一度検討はお願いを申しあげておきたいというふうに思います。それから、県民の意向調査でありますけれども、…
(延々続くので略、意訳すると、自治体の長のみなさんよろしく、とのこと)

 あと、ポイントとして、除染のモデル事業は南相馬市と伊達市、とのこと。第三次補正予算に組み込まれるそうです。

 そして、血液検査について、ICRPに特殊健康診断、という項目があったので安全委員会と保安院に聞いてみました。

――ICRPの2007 年勧告のパブリケーション103 によりますと、特殊健康診断について言及しています。商業被曝ダメージ、50 mSVパーイヤー、20 mSVパーイヤーの実効線量限度を超える被曝が生じた時の検査項目、目の水晶体の検査、皮膚の検査、そして血液検査ですけれども、それが東京電力で正しく行われているかどうか、東京電力を監視、助言する機関として把握されてる?
 急性全身放射線被曝による急性効果は50 mSV程度だと、最初に現れるのは染色体異常と白血球レベルの一時的な低下らしいけど、各個人の放射線への耐性によって先ほどおっしゃったLNTモデル(直線閾値なしモデル/低い線量の被曝についても、線量とガンや白血病などの発生確率は比例するという考え方)では測れない部分を、白血球の低下レベルなどでチェックするべきだと思うんだけど、その辺りのクロスチェックはされている?

保安院・森山さん「被曝については今、情報を持ち合わせておりませんので、確認させていただきたいと思います」

――高線量被曝された方々への特殊健康診断の完了をされているかということなんですけれども。

保安院・森山さん「今、私、手元に資料、情報ございませんので、確認させてください」

安全委員会・加藤審議官「この問題は基本的に事業者に対する規制ですので、保安院のほうで一元的に行われてる話です。また必要があればICRP勧告の国内取り入れということですのでむしろ放射線審議会のほうで関わってるのかもしれません」

――放射線審議会のほうで今年の、平成23年1月12日の議事録にも挙がってるんですけど、実効線量限度を超えた被曝者、作業員は特殊健康診断をするべきだとなっています。ぜひ保安院の森山さんよろしくお願いします☆

***

 むむむ、このペースだと全く追いつかないので後は要約でいきます!

 9月12日の統合本部合同会見。

 冒頭に保安院から回答を頂きました。

保安院・森山さん「許容値を超える被曝をした際に東京電力が特殊健康診断を行っている事を保安院は把握しているか。といったご主旨のご質問がございました。特殊健康診断につきましては労働安全法に基づく電離則に基づいて健康診断を行うということで、個別に定期的に6ヶ月に1回おこなうということが規定されております。今回の事故に関しましては4月25日に福島労働局から東京電力に対しまして100mSVを超えた作業員に対しては1ヶ月1回の健康診断を行うというようにと指導がなされておりまして、保安院としては承知しております。詳細は福島労働局に問い合わせいただければと思います」

(何? 電離則? ということで電離放射線障害防止規則も読みましたぜ! そして後日福島の労働局にも問い合わせましたぜ!)

 この日に、『内部被曝調査の追加実施の結果について』という資料も発表されたのですが、ネット上を探しても載ってなかったので、貼っておきます。私のをスキャンしたので、書き込み多くてごめんなさい!

 この資料、「大丈夫だったぜ!」というだけで、具体的な検査方法、検出限界が一切わからないので、どのような検出器を用いたか、何分間の検出時間か、検出限界はどれくらいかをお聞きしました。(脱ってみる? の読者さまなら、尿からの検出についてはよくご存知だよね?)
 そして過去のヨウ素被曝については、この資料は言及してないけど、どう取り扱うのか、しつこくお聞きしました。

 ヨウ素被曝はまだ検討中!(いつも思うけど、じゃあそう書きなよ!)

 詳細な検出限界については9月20日の合同会見で回答を頂きました。それだけ先に書きます。

 尿のバイオアッセイ(生物を用いた化学物質の検査)は、

検体は54cc(少な!)
ゲルマニウム検出器にて、約1000秒の検出時間。
子どもは1万秒の検出時間。

そして尿の検出限界は
ヨウ素131:8Bq/L
セシウム134:13Bq/L
セシウム137:13Bq/L

(尿の検出限界高いね! 第17回の理研分析センターの検出限界を参照してね)

ホールボディカウンターの検出限界は
セシウム134:320Bq
セシウム137:570Bq

(これは簡易型のホールボディカウンター並みですね!)

 これは福島県の県民健康管理調査とは別の、内閣府による被災者生活支援チーム、つまり国側の健康調査だったんだけれど、クロスチェックをするなら、放医研ではなく、県とは別の機関でするべきだし、何より、検出限界高いよ!

 そして保安院の森山さんに作業員の方々の被曝チェックをお聞きしました。

――特殊健康診断の回答ありがとう存じます。その、労働局の電離放射線障害防止規則第44条に基づく研究作業の項目ですけど(会見中、急いで読みました☆)この白血球数及び百分率の検査、赤血球数及び血色素量の検査というのは東京電力の方で検査はされていて、それは保安院に上がっているの?

保安院・森山さん「福島労働局の指導で実施されております、検査内容、今お話がありました白血球数等につきましては、保安院では承知しておりません。このような指導が行われ、特殊健康診断が行われているということは承知しておりますが、あくまでも労働安全衛生法に基づく労働局の指導でございますので、具体的な数字、内容までは保安院では承知しておりません」

――保安院の中に医療班があるけど、その医療班でもそのクロスチェックなどはされていないの?

保安院・森山さん「保安院にあるというよりもその原災本部に事務局として医療班がありますけども、そこでこういった事、これはあくまでも労働局の指導でございますのでその中身まで今は把握していません」

――保安院のホームページを見ると原子力防災や運転段階の安全規制なども職務として挙がっているけど、作業員の方々の安全は保安院の方ではあまりチェックしないの?

保安院・森山さん「あの、特に被曝管理についてはですね、もちろん保安院も見ておりますけれどもこの分野はややその、二重規制的になっている所がございまして、労働安全法に基づく電離則と原子炉等規制法に基づく実用炉規則という2つの規制が一部重なっているところはございます。実際の線量限度ですとかそういったことは規制されておりますれどもこの健康診断というところまでは原子炉等規制法の枠組みには今は無いという事でございます」

――作業員の方々の健康はそうすると労働局の管轄になるという認識でいい?

保安院・森山さん「もちろん、厚生労働省の管轄でございますけども、今あの、厚生労働省それからあの、保安院も含めてですね、健康あるいは被曝の管理のチームというのは統合対策室の中にございまして情報を共有しながら進めている状況でございます」

 むー。作業員の方々の被曝はきっちりチェックされてないのでない?

 ここから9月20日、22日、26日の合同会見に続くわけですが、もーう長すぎるよね、あまり要約したくないので次回にします!

 あとツイッターで質問をよく質問を頂いた「鼻スミア試料」について。最近、私、鼻スミアについてよく質問してますからね。
 これは吸入による内部被曝をチェックするのに役立つ検査で、被曝直後に鼻の粘膜に付着している放射性物質を調べるというもの。ホールボディカウンターはγ線放出核種(ヨウ素とかセシウムとか)しか測定できません。プルトニウムなどのα線放出核種は、被曝直後に鼻スミア試料で測定し、もし検出されたら、その後肺モニター測定や尿のバイオアッセイをするんですって。α線は測定しにくいので、吸入被曝の可能性があれば、直後にやったほうがいいんですって。鼻の中を綿棒みたいなのでぬぐって、それを調べるだけ。そっか、体の中に入ったら測定しにくいけど、鼻の中なら調べやすいよね。

 福島県で配布されているはずのガラスバッジについて、ヨウ素地図について、そして原子力損害賠償審査会について(文科省が上部組織ですからね☆)、そして福島の労働局に問い合わせたり、原子炉等規制法の実用炉規則を読んで出てきた疑問点などを質問しています!

***

 会見を書くとあまり面白くないのに長くなってごめんなさい。でもさ! 世の中の大切なことは、こういうとこに隠されちゃうのさ! 面白いことばかり追うと、落とし穴があったりするんだよね、なんちて!

 けど、マガジン9の会見のやり取りは残しておいてじっくり読みたいのでプリントアウトしています、という方もいらっしゃったので、詳細に書くようにしています。実際、私自身、過去の「脱ってみる?」を資料として見直してたり☆

 作業員の方々の被曝はさ、4月に私が初めて質問したとき、すごい怖かったのを覚えています。
 「なぜ、どなたも聞かないの? これは質問したらダメなことなの? 触れてはいけないタブーなの?」
 あの頃は実際、作業員の方の被曝線量を質問したり、心配したりすると、「じゃあお前が代わりに原発行って作業をしろや!」という叩かれ方をしたので、ひどい環境だ、と分かっていながら目をつぶる、という状況だったのでしょう。あんまり、そういうふうに叩かれたので考えました。私が代わりに原発に行って作業をするのはムリ! 怖いもん! でも、その代わり、目をつぶらない。私たちの代わりに死ぬ思いで作業してくださる方々のために、できるだけのことをしよう。
 そしてドキドキしながら「作業員の被曝線量を公表してください」と質問したのを覚えています。

 その頃から考えたら、今はドキドキはしてないな、当たり前と思うもの。
 住民の方々はもちろん、作業員の方々にも全く罪はありません。もう、こんなに理不尽な被曝は強いられないようにしてほしいね!
 そして、原子力を推進したいなら、もっと被曝を丁重に扱いな? 安全管理や健康管理をきちんとしたら、全然儲からないからやらない、なんて、因果な産業だね、ほんと。

 電離放射線障害防止規則や実用炉規則やICRP勧告や、いろいろ作業員の方々に関する被曝を規制するもの読んだけど、今、全然守られてないじゃん! 緊急作業用の規制すら守られてなかったら、今は緊急事態じゃない、ってこと?
 今まで原子力業界に携わってきた方々が全く予想もできなかった悪い状態なのかしらね?

 実用炉規則にある線量限度について、大きな疑問が出ましたので、9月26日に保安院の森山さんに質問しています。回答を後日持ってきてくださるとのことですが。
 作業員の方々の代わりはできないので、申し訳ないので、東京電力はもちろん保安院や労働局は、どうやらあまり健康管理をするつもりが無いみたいですから、私たちは目をつぶらず、きちんとして頂けるよう、声を上げて、調べていきたいと思います。

【今週の針金】
スキャンダルで更迭になっちゃった西山審議官と入れ替わりで政府と東電の合同記者会見に登場の原子力安全保安院の森山対策監。

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原子力を推進したいなら、もっと被曝による被害を丁寧に扱うべき――
まったくもってそのとおり。
「安全&必要だからやめない」としておきながら、
現場で実際の業務に携わる人たちの健康・安全管理さえマトモにされていないなんて、
どう考えたっておかしすぎるだろう! と、
またまた、新たに怒りと悲しさがわいてくるのでした。


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おしどりプロフィール

マコとケンの夫婦コンビ。横山ホットブラザーズ、横山マコトの弟子。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。2003年結成、芸歴は2005年から。
ケンは大阪生まれ、パントマイムや針金やテルミンをあやつる。パントマイムダンサーとしてヨーロッパの劇場をまわる。マコと出会い、ぞっこんになり、芸人に。
マコは神戸生まれ、鳥取大学医学部生命科学科を中退し、東西屋ちんどん通信社に入門。アコーディオン流しを経て芸人に。

ブログ:
 http://oshidori.laff.jp/
twitter:
 マコ:@makomelo
 ケン:@oshidori_ken
その他、news logでもコラムを連載中。

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