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2011-06-15up
おしどりマコ・ケンの「脱ってみる?」
第4回
ゴーマンを脱ってみる?
ハ〜イ脱ってますか? 今週の必要脱は「脱傲慢!」
ほんと、私も気をつけなきゃ、と思うんだけど、気付かないうちにすぐ、傲慢になっちゃうよね☆ いかに傲慢にならないか? が最近のキーワードだと思います。声高に自分の正しい主張を叫ぶのって危険! 周りが目に入りにくくなっちゃいますから。私を含め、脱原発の方々もそういうとこ気をつけなくちゃ、とひしひしと思います。
メディアが住民を置いてきぼりにするのも傲慢ですしね。事故直後、自分たちは100キロ避難しておいて「10キロ20キロ避難で大丈夫ですよ」と報道するのは傲慢。パニックを起こすから、なんて考えるのも傲慢だと思います。そして、それはダメだからきちんと報道しようとした方を左遷させるのも傲慢だい!
先日、脱原発グループの方々が寄せられた質問にお答えする、という企画があって、それに、けっこうハードなご質問があったのね、元電力会社社員の方の。で、電話の口調が荒っぽかった、ということもあり、そのグループの方々は答える必要無い! みたいな結論に落ち着きかけて。引っ掛け問題かもしれないし、揚げ足取りかもしれないし、ただのクレーマーかもしれない、という意見が次々に出て。私はそのご質問を読んで、あんまりよく分からないし、過激だけれど、そう決め付けちゃうのもどうかしら? と思ってハラハラしながら見守っていました。けど、結局、ちゃんと質問には答えよう、となり、その方はどなたかのお知り合いの方、ということが判明し、しかも、平和運動のグループの方だったのでした! ううう、ほんとハラハラした!
そんな質問答える必要無い! という意見が飛び交っていたときは、そうなの? と愕然としたのです。たとえ、クレーマーでも、揚げ足取りでも、敵でも! 回答しないという選択は取るべきじゃないのでは? と思って。脱原発を実行する、ということは、それだけを考えていても本当にムリで、全てのことを鑑みて、巻き込んでいく作戦でないとね☆ 手間かかっちゃうけど!
大声の正しい主張、というだけで、耳をふさぎたくなるはねっ返りは絶対にいるし、どんな層も貪欲に取り込みたい! そんな万能なコンセプトは無いものかしら? と考えると同時に、情報の受け手にも問題がある…と感じます。
情報の表面だけ受け取って、ヒステリックに動くこわさ。それは無関心と同様、恐ろしいことだと思います。動くときに、その結果まで想像して考えないことは、けっこう傲慢なんだよね。傲慢どころか操られているだけだったり? うかうかしてると洗脳され放題だ! 情報学だけじゃなく、情報の受け手学とかあったらいいのにね。
傲慢というのは、相手のことを考えない、自分のことしか考えない、ということだと思うので、原発推進派も脱原発派も、メディアも政府も官僚もみんなみんな、相手のことを考えれば、簡単に答えが見つかること多いんじゃない?
さて、今回は計画的避難区域に指定されている福島県の飯舘村に住む、私の仲良しのことを聞いて頂きましょう!
もう、彼らのことは何時間でも話し続けることはできるんだけれど! 高濃度の放射性プルームが村を覆った運命の3月15日、それからの彼らの闘いはたくさんあるのだけれど、そのひとつに、ホールボディカウンター、WBCを受けたい、というのがあります。
何も知らずに3月15日、外で炊き出しをしたり、子供たちは外で走り回っていて、きっと、凄まじい内部被曝をしている、と考えた彼ら。
けど、3月当時の彼らは内部被曝、という言葉もWBCももちろん知らなかった! どころか、村が深刻な高濃度汚染していることすら知らなかった! 事故後、「放射線はそんなに危なくないですよ☆」といった、県のアドバイザーが村に説明に来たり、インターネットもあまり使わない方が多かったりで、「バカだったんだけど、呑気すぎた!!」
で、彼らがWBCの存在を知ったのは4月30日、東京電力が飯舘で謝罪集会を開いた数日前。その頃に東電の女性社員が内部被曝をした可能性があって、WBCで測定した、というニュースがあったのね。
で、「えぇ!? 内部被曝って測れたんだー、知らなかった!」と謝罪集会のときに、「僕たちにもWBC受けさせてください」ってお願いしたの。そうすると「社に持ち帰って検討します。」とのお返事。で、お返事なし、と。
私が彼らと知り合ったのは5月半ば。あちこちでWBCを受けさせてほしい、とお願いしてまわったけど、僕たちだけの力ではムリです、どうぞおちからを貸してください、と議員セミナーにいらしたときにお会いしました。
「僕たちはもう、あきらめてるけど、子供たちの未来のために、内部被曝量を知りたい。将来、健康被害が出たときのために、因果関係を証明できる証拠がほしい。そしてそれは今急いで測定しないと、証拠にならないんだ!」
彼らのお話を聞いて、メモりながらボロボロ泣いた私は、すぐ連絡先を交換して、それからしょっちゅう電話しています。できることはなんでもする!!
そして、WBCカウンターの国内の総数と稼働率を調べること、3月30日に行った小児甲状腺サーベイの結果を各々に教えるよう依頼すること、チェルノブイリに日本から送ったWBCを積んだ検診車の居場所を調べること、そして何より、彼らがWBCを受けられるようにすること! そのために動き始めたのです。
あら、今気付いたけど、これらはほぼ達成してる! でも、何もほとんど状況変わってないな! 次の具体策を練らなくては!
WBCカウンターの総数と稼働率は統合本部細野補佐官が調べてくださいました(共同会見のときに毎日まん前でお聞きしたからかしらね?)。この情報がこれから役に立つのです!
小児甲状腺サーベイの簡易検査というのは、3月30日に飯舘で原子力安全委員会が行ったもの。ところが安全委員会は、あろうことか、お母さまがたに、結果をお教えしてないのです! 「全員、基準値以下で大丈夫ですよ!」これだけ。基準値の値がどれくらいか、すらお教えしてない。ひどいよね!
これを安全委員会加藤さんにお聞きしたら「いえ、その検査のプリントに基準値は載せてました」とお答えになって。「お母さまがたは本当にご存知ないので、私も確認しますので、そちらもご確認ください」と言うと、しばらくして「やはり、基準値はお知らせしていませんでした」とのこと。でも、5月17日に、この検査の結果と基準値をホームページには公表しているの。でも、検査した子供達のお母さまがたにはお知らせしていなかった! どういうこと! けど、加藤さんはお認めになってくださっただけ良かったです。でも、その基準値というのはとんでもなく高い値なので、それ以下だと安心とはとてもいえない。けど、とにかく、あちこちに交渉のすえ、村で説明会を開いて、小児甲状腺サーベイの結果はちゃんと個人個人にお伝えしてくださることになりました…が、当たり前やろ!!!
そして、WBCを積んだ検診車については飯舘の彼らが調べ出しました。
で! 問題の彼ら自身がWBCを受けることについて!
いろいろあちこちお願いしたり、動いたりしたすえ、5月30日に放医研のWBCを村から2人の若者が受けることになりました。
それは放医研のご好意でやってらっしゃることで、内部被曝を心配する方々のために、WBCを受けさせてあげますよ、といったもの。やったぁ! と喜びいさんで村から千葉まで行った彼ら。WBCを受けたくて受けたくて、でも結果を知るということはひょっとしたら死刑宣告を受けるのと同じ意味かもしれない、けど、もし村民がひどい内部被曝を受けてるのだったら一刻も早く現実を知らなくてはならない、と覚悟してはるばる放医研に行った彼ら。
結果は…「基準値以下で大丈夫ですよ」。またこれ! WBCに詳しくなっていた彼らは「自分たちのスペクトルピークグラフを教えてほしい」と20分は交渉したのですが、教えてもらえなかった! 簡単なスクリーニング結果だけ。「そうじゃない、WBCのデータが欲しいんだ!」その夜の電話は、本当に怒りと涙と落胆の声でした。「なんで教えて頂けなかったの?」「方針で、という言い方しかされなかった。」「わかった、聞いてみよう!」
翌日から放医研にお聞きしてみました。「結果を教えて頂けない、というのはどこかからの指示でしょうか? それとも放医研さんの方針でしょうか?」。5月31日からお電話しまして、毎日「担当の者がいないので、折り返しお電話いたします。」。それが4日続きました。毎日、お電話に出られる新しい方に初めから説明するのがにいい加減飽きたので、放医研の方にお名前をお伺いすると、「名乗らないことになっています。」。え? 私は毎日名乗っていますよね? 昨日も一昨日も同じ説明をして、お電話を待ってましたので、あの、どなたにお伝えしたかだけでも知っておきたいのですが?「放医研の方針で名乗らないことになっています。」。
むむ、これは手ごわそうだ…でも、6月3日にとうとう! 放医研さんからお電話を頂きました。「ご本人からの請求があれば結果をお伝えします」。やったぁ! けど、なぜ教えて頂けなかったかの回答じゃないけど…。ま、WBCのデータを知ることが第一ですからね☆
でも、なかなか結果を教えて頂けなかったり、あちこちにお願いしても内部被曝の量を測定して頂けなかったりしたときに、調べていると気になる文書が出てきました。5月16日付けの業務連絡、という文書。これは文科省と厚労省から、各研究機関、大学、学会宛てに出ているのです。被災地で実施される健康調査、研究についての短い文書なんだけれど。短い3つの文章でできていて、最後の3つ目が気になります。
『3 対象となる被災者に過度な負担とならないよう、対象地域において行われている調査・研究の状況を十分に把握した上で、重複を避け、必要以上に詳細な調査・研究が行われることのないように配慮すること。』
この文書を彼らが見つけて、これが原因で、僕らは検査して頂けないのかな? と言っていました。必要以上に詳細な調査・研究が行われることのないように配慮すること? いえいえ、お願いだから調査してください! とどれだけ言ってると思ってんのよ!?
というわけで、文科省の坪井さんにこの文書のことをお聞きしてみました。
「この文書は、健康調査をしてもらいたがっている被災地の方々の現状にそぐわないものではありませんか?」
「いえ、被災者の負担のならないよう、という意味で、請求があれば、検査結果をお知らせすることになっています。」
だから、請求しても検査結果をまだ教えて頂いてないんだってば!
そして、肝心の放医研のWBCの結果。彼らが放医研に電話して請求しました。
「どうだった?」
「いや、折り返し電話するって言われたけど、電話こないんだ…」
またか! それ、3、4日続けないと返ってこないから! 結局3日目にお返事が返ってきました。結果…
「放医研まで取りに来てください」はぁ?
「あの、郵送かメールではダメですか?」
「説明したいので取りにきてください」
しかも、「6月15日に取りにきてください」
あの、WBC受けたの5月30日で、請求したの6月6日で…
そして、またもや千葉まで出てこい、と? 放医研さま…
ま、いいかそれでも大進歩か! と言いながら、予想以上に、手ごわい現状に驚いています。
セシウムの生体半減期が子供が44日で大人がだいたい70日なのです。なので、できるだけ早く検査しないと、3月15日の高濃度汚染が闇に葬られてしまうのです! そして、国や県が福島の健康調査を始めるのが6月半ばから。なんで?? 3月15日の70日後から始めるのさ? かくなるうえは、代謝の遅い高齢者をきちんと検査してくれたらいいのに、ちゃんと検査の年代をチェックしなくてはね、と話しています。
5月半ばの議員セミナーのときに、飯舘の方々に
「なぜ逃げないのですか? 危険だったら逃げたらいいのに。僕の友達は海外に行った人何人もいますよ?」と質問した学生がいました。それに対しての答えは
「逃げたいのはやまやまなのですが…子供の親たちは差別を心配する人もいます。仕事もあるか心配です。事故後、あまりにもたくさんの方が村を訪れ、放射線を防ぐ布だとか健康食品だとか売りにくる人々とか、年配の方はもう耳をふさいでいます。そして、飯舘はほぼ自給自足の村で、自分たちの食べ物は自分たちで作っていて、そしてそれはとても贅沢なことだった、と今になって気付いたのですが、でも、現金収入があまりありません。頂いた義捐金は一人3万円です。引越ししたくてもお金が無いんです。」
何より、村を愛している飯舘の方たち。無知すぎたため、子供たちを巻き込んでしまった、もう遅いけどできるだけのことを! と走り回っている彼ら。原発から離れている山の上で、普段、原発があることすら忘れていたという彼ら。
自分に置き換えてみると、お願いだからみんな助けて! って気持ちになっちゃう。自分たちだけのちからじゃとてもムリだもんね。5月半ばの議員セミナーのときに同じくいらっしゃった、福島みずほ議員も飯舘の方々のために動いてくださってます。福島さんとは6.11イベントのときにお会いして、打ち上げでお向かいで飲みました。チャーミングな先輩、ちょこっと着ぐるみ風、みたいな方でとてもかわいらしかった☆ で、福島さんやNHKの方に、おしどりさんも飯舘の方を支援してるのね? と言われちょっと戸惑いました。支援? ていうより、友達の応援なんだけれど…。
飯舘の方々と電話してて「もうマコさんにこんなお世話んなっちゃって、どうやってお礼したらいいか、飯舘にご招待してご馳走しなきゃなんねって思うけど、今、そんなことしたら余計迷惑でしょ? アハハ」
「アハハ、ご馳走はもうちょっとしてからがいいわ、でも、いろいろカタがついたら、乾杯したいねぇ!」
「もちろん、絶対長生きしましょう!」
「ええ、絶対、お互い長生きしましょう!」
電話の終わりは長生きの約束が締め言葉なのです。ね、支援て感じじゃなくって。
だからさ、脱傲慢できるいい秘訣に気付いたんだけど☆ 相手の立場で考える、自分のことだけ考えない、というのがポイントなら、友達を増やせばいいんじゃない? 「被災者の方々」ではなく、マコトくん、裕子ちゃん、という顔の見える名前の分かる方々になったらいいんじゃない? で、友達の応援を考えたら、簡単に動けるんだよね☆ そして、将来落ち着いたら一緒に飲む! おぉ楽しい計画だ!
あ、でも今までの友達でも意見が別れてる現状もあるか… こんな長文書いて、まとめきれないハメになるとは… (今、自分で爆笑した件)
これは、そうね、放射線医学総合研究所の方が言ってらしたけど
「この原発事故は日本国民すべてに影響を及ぼすことで、全員当事者なのに無関心すぎる」ですってよ。
全員当事者! 脱傲慢してみると、わかりあえない友達に腹が立つどころか、大変な状況なのに、呑気にしてると死んじゃうよ、と心配になります(スミマセン、よっぽど優しい気分のときだけ、と白状します)。
全員当事者で被災地の友達の応援、そして脱傲慢が乗り切る秘訣と見た今日この頃でした!!
*
追伸。(手紙か!)4月30日の、飯舘村の彼らが謝罪集会で東京電力にお願いしたWBCの件ですが、5月30日の共同会見でお聞きしてみました。
「確かにそういう要望は飯舘村から受けましたが、WBCの健康調査は政府と相談してやっていきます。」
「ええと、再三、要望の回答をお聞きお願いしたそうなんですが、これはその要望のお答えということでいいのですか?」
「はい、けっこうでございます。」
お伝えしますが1ヶ月待ってらしたので、きちんと飯舘村に返答なさってください、と後ほど言いましたが…。
ま、脱傲慢しようぜ!
【今週の針金】
飯舘つながりで初対面でも仲良し。
参議院議員・社民党党首、福島みずほ。
*
自分たちの被曝量を知りたい、そのための手段を提供してほしい。
そんなごくごく当然の要求への対応がこれ!? と、
読んでいるだけでも頭がくらくらしてきます。
おしどりプロフィール
マコとケンの夫婦コンビ。横山ホットブラザーズ、横山マコトの弟子。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。2003年結成、芸歴は2005年から。
ケンは大阪生まれ、パントマイムや針金やテルミンをあやつる。パントマイムダンサーとしてヨーロッパの劇場をまわる。マコと出会い、ぞっこんになり、芸人に。
マコは神戸生まれ、鳥取大学医学部生命科学科を中退し、東西屋ちんどん通信社に入門。アコーディオン流しを経て芸人に。
ブログ:
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