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2011-06-01up

おしどりマコ・ケンの「脱ってみる?」

第2回

会見マニア→記者クラブについて考え出す!

 さて今回は、なぜ会見に潜り込んじゃうようになったか!
「ネットで見てて、腹が立って通うようになったんですよー」
 かいつまんで答えても、
「でも、それで会見行こうって考える人はいないよ?」
 そう? みんな行ったらいいじゃん! ちょっと勉強して、ちょっと覚悟したら、いいと思うんだけどな?
 ではなぜ通うようになったかお聞きください!

 震災後、怖いよ怖いよーと怯える日々。で、震災直後はツイッターだけで生きてたので、その流れでツイッターを凄く見るようになってました。
 でもいっぱいデマとか流れてたんだよね、で、すごい拡散された情報のあとに、「あれはデマだよ!」という情報も流れたり。その中で印象的な出来事がありました。
「水道水の日本の基準値300Bq/Lというのは、世界の基準の30倍だよ!」
 えー、かなわんなーとリツイート。でも3日後に、デマを認定して消していく、というアカウントが、
「30倍なんかじゃないよ、あれはデマだよ」
 そうかーデマかー30倍なんか冗談じゃないよ、と思いましたが、ちょっと待って、と。世界保健機構WHOのHPで自分で調べてみようかしら?
 翻訳サイトを駆使して調べると、わー!WHOの水道水基準は10Bq/Lやん! 日本の300Bq/Lはemergency、緊急のときのみ、て書いてるやん! やっぱり日本は世界の30倍の基準になってる!
 では「あれはデマ」と言ってるのが「デマ」ってこと!? これはウカウカしてると、ヤバイよ!

 それから、誰からの情報、というのは参考程度にして、一次情報、できるだけ自分で直接情報を集めるようにしました。で、ネット配信の東京電力の会見も見だしたわけ。そうしたら!
 想像を絶するやりとりが繰り広げられてて、でも、それはテレビや新聞には載らないのさ! 3月~4月初旬の会見は本当にヒドかった!
 例えば、3月24日の会見で作業員の足が高濃度の汚染水につかって被曝、という発表がありました。そして、数日後に退院、というニュース。その8日後の会見でこんな質疑応答がありました。
「被曝して退院した作業員の方のその後の健康状態はいかがですか?」
「わかりません」
「は? 連絡はとってないのですか?」
「連絡先を聞いてないのでわかりません」
「では健康かどうか、生きてるかどうかもわからないのですか?」
「連絡先を聞いてないのでわかりません」
「おかしくないですか? 普通、連絡先くらいわかるでしょ?」
「確認します」
 これ聞いてのけぞりましたわ! どんなやり取りやねん!!
 でもさらに驚いたのは、私的にビッグニュース!と思ったこのやり取りが全くテレビや新聞で報じられないこと! こんなやり取り&報道されずというのは、たっくさんあったのよ!
 で、不審に思った私は、東電の会見を書き起こし始めたのです。  

 漫才の勉強するときも、舞台や動画を書き起こしたりするの。だから、何時間もの書き起こしはちっとも苦にならなくて、そして、そのときの癖で、ストップウォッチ片手に、質疑応答の所要時間も計って、所属媒体と記者名と、質問の内容も全部書き起こしていったのです。
 そうしたら。
 わー!! なんか、いくつかの媒体がかたよって当たってるんでない!? みたいなデータが集まってしまいました! 実際、ずっと手を挙げているのに1回も当たらない方がいる一方、同じ方が3度も4度も指名されたりしてる。そして、その質問内容も、今聞く、それ? みたいな。なんとなくの印象で、テレビ・新聞より、週刊誌・フリーランスのほうが突っ込んだご質問をされてるのです。
 私が好みなのは、週刊誌系全般、フリーランスの一部、東京新聞、北海道新聞☆ でもなぜかね! 当たらないの、なかなか!

 そして、フリーランスの方の質問のとき、大手メディアの方が野次るのです。なんで?
「おまえたちだけの会見じゃないんだ!」
「そんな質問聞きたくないんだよ!」
 いや、私が聞きたいです!! そう大声で返すために、東電会見に乗り込むか! こう考えたのです!
(ちなみに、この頃すでに20日間×1日数回、会見を見続け&書き起こしてたので、すでに記者さんがたの声と名前は聞き分けれるようになってたのでーす☆)
(ちなみにちなみに、ブルームバーグ中山さんとフリーランスの上杉さんの声が好き☆)
(ちなみにちなみにちなみに、主に野次られてらしたのはフリーランスの田中龍作さんや日隅一雄さん。日隅さんが「そんな質問聞きたくないんだよ!」と言われてらして、日隅さんのご質問いつも好きだったし、日隅さんはなんかちっこかったので(^^)加勢にいくか! そんな勢いでした。)
 そして、何もわからず、東京電力の場所を調べたら、なんだ、うちから4駅じゃない!とりあえず行ってみました。
 でも、入り方わかんないよねぇ? ウロウロしてたら怪しまれる怪しまれる!

 今、会見は始まってるの? ネットで調べたら、どうも、フリーランスの方々は別の会見、原子炉の外付け冷却装置を提案された上原春男教授の会見に行ってらっしゃるそうです。あ、こっちはなんか入れそう、行っちゃえ! というわけで行きました。
 そうしたら、やっぱり記者さんや報道の方々ばっかり。でも、なんか派手な和柄の方がいらして、(若作りのIT社長にありがちなイケイケな和柄)へーなんか浮いてらっしゃる! と思っていたら、ご質問されてました。
「大川興業総裁、大川豊ですが…」
 あ、芸人も質問していいんだ!  そこで、いろんな会見や勉強会に出席し始めた私たちは、いろんな記者さんと仲良くなり始め、東電会見の入り方を聞き出していったのです! そんで入って、東電会見に通い始め、質問をしだす、と。このあたりのくだりもまたご説明いたしましょう!

 で!
 4月25日から、東京電力だけの会見ではなくなり、統合本部、保安院などと合同の記者会見に変わるのです。そうしたら、記者会見に入るのに条件がつくようになったのです。 ま、私たちみたいなのを弾くためかしらね、と思ってましたら! 違うの!
 政府統合本部、保安院の認める条件はこう。

1 日本新聞協会会員
2 日本専門新聞協会会員
3 日本地方新聞協会会員
4 日本民間放送連盟会員
5 日本雑誌協会会員
6 日本インターネット報道協会会員
7 日本外国特派員協会(FCCJ)会員及び外国記者登録証保持者

 そして、フリーランスの場合はこれに所属する媒体に半年以内に署名記事を2つ。ふうん、そんな感じの条件なのね、私たちは難しいなー、そう気軽に思ってました。
 でも、フタをあけてみたら! フリーランスの方の条件、半年以内に署名記事2つ、というのは、何年も取材して、まとめて記事を書いたり、本を出すタイプの方ははじかれます。たまたま、半年以内に指定された協会に所属する媒体に書いてない場合もはじかれます。
 あと、インターネットメディアが主な活動場のジャーナリストの方々も、のきなみアウト。調べたら、日本インターネット報道協会というのは2008年にできた新しい団体で5団体しか所属していないのです。この新しい条件はフリーランスの排除だったの!?
 はじかれていったフリーランスの方々は次々と交渉して、会見に入れるよう闘ってらっしゃいました。そうだよ、頑張って! けど、しゃくだな、こんなことされちゃって、私たちも闘ってみるか!

 「半年以内に署名記事2つ」。これが私たちの突破口よね、きっと。で、「失礼なお願いですが、記事を書かせてください!」とメールしまくったのです!
 そしてどこにお願いしたかというと。
 会見で知り合った方々や、質疑応答を書き起こして、「この記者さんはきっと、素晴らしい、良心のある方だよ…」という方々に手当たりしだい送ったのです。全く面識も無いのにね! 声と名前と質問内容しか知らないのにね!

 そうしたら、やはり私が見込んだとおりの方々で! 全部お返事が返ってきました! しかも長文! そして好意的&応援!
「書いていいよ、でもうちは協会入ってないんだー」
「連載する? でもうちで書いても会見は入れないんだけど…」
 え? そうなの?

 実は、政府、保安院の指定する協会、というのは大手メディアのみだったのです。
 例えば、日本証券新聞は新聞協会に入ってないの! 岩波書店の「世界」という雑誌も雑誌協会に入ってないの! そちらの記者さんがたは会見に入れないのです、えぇ!?
 で、メールの返信をくださった記者さんがた、協会に属してない方々も属している方々も、くちぐちに不満をおっしゃってました。統合会見への不満、記者クラブへの不満を!
「統合会見の馬鹿さ加減にはあきれてものも言えない」
「日本のジャーナリズムはクソですよ」
「記者クラブというのはカルテル組織です」
 ええと、みなさん有名どころの記者さんがたですよ! お会いしたこと無いけど、メールで何度もやりとりしていろいろ教えて頂きました。会ったことないのに、親友☆みたいな方もできたりして。

 そして、気付いたのです。
 この、統合本部の合同会見の条件とは、フリーランス排除ではなく、大手メディア限定という意味だったのか! ひどいな!

 おしどりの統合会見の申請の結果だけ言うと、3回却下されて4回目、5月24日に申請登録されました☆ それは、たくさんのご親切な方々のおかげです、ありがとう存じます!!
 ちなみに現在は、自由報道協会の会員で、NPJの原発特別取材班に入れて頂き、週刊金曜日と週刊SPA!に書かせて頂き、マガジン9で連載をさせて頂いてます!
(さきほど書いた、メールの返信の数々はこの方たちではないですよ! 次の方たち。)
 そして、全く誌面を見たこともなく、あとで、あらあらこんな難しい雑誌だったか! と気付いたバカな私に、丁寧にたくさんお返事をくださった、たくさんの記者さんがたもありがとう存じます!!

 そうして、記者クラブ、というか、メディアは国民を守ってくれなくっちゃね! そんなことを考え始めたのでした。

【今週の針金】
華麗な手の動きがテルミン奏者を彷彿とさせると話題。
経済産業省大臣官房審議官 西山英彦氏、通称、西やん。

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連載第2回、まずは「脱記者クラブ」のお話でした。
それにしても、まさに「想像を絶する」記者会見でのやりとり。
「国民を守る」どころか、どこを向いて仕事してるの!? と言いたくなります。

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おしどりプロフィール

マコとケンの夫婦コンビ。横山ホットブラザーズ、横山マコトの弟子。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。2003年結成、芸歴は2005年から。
ケンは大阪生まれ、パントマイムや針金やテルミンをあやつる。パントマイムダンサーとしてヨーロッパの劇場をまわる。マコと出会い、ぞっこんになり、芸人に。
マコは神戸生まれ、鳥取大学医学部生命科学科を中退し、東西屋ちんどん通信社に入門。アコーディオン流しを経て芸人に。

ブログ:
 http://oshidori.laff.jp/
twitter:
 マコ:@makomelo
 ケン:@oshidori_ken
その他、news logでもコラムを連載中。

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