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2010-06-23up
時々お散歩日記(鈴木耕)
5思想は顔に出る…
近づいてきましたね、参議院議員選挙。7月11日ですから、もうすぐです。6月24日が告示日でしたよね。
というわけで、街には各党の街宣車が走り、やたらと選挙目当てのポスターが貼り出されています。でも、候補者が載ったポスターは、告示日以降は公営の掲示板以外の場所に貼ってはいけないのです。つまり、壁や塀にベタベタ貼り出されているポスターが、6月24日以降もそのままだったら、それは違反なんですね。
私の家の近所の駐車場の塀にも、ものすごい数のポスターが張り巡らされています。この写真ではよく分かりませんが、塀の幅は写真の5倍ほどもありますから、ポスターの数も半端じゃありません。
我が家のお隣の大きな農家の塀はとても広くて長い。そこの家の方はとても親切で、どの党のポスターでも自由に貼らせてあげています。
「選挙は大事だからねえ。いろんな党のいろんな候補者が分かったほうがいいからねえ」と言うのが、この家のご主人。こういう物分りのいい方はとても珍しい。
それにしても、選挙が近づくと、なんだか穏やかではない発言も飛び出します。
石原慎太郎東京都知事がまたしても妄言です。北海道新聞が6月20日に配信した記事ではこうです。
<石原慎太郎東京都知事は19日、札幌市内で開かれた、たちあがれ日本の集会であいさつし、菅直人首相について「もし、(自衛隊の)観閲式の国旗入場でも立たなかったら、構わないから殴れ。殴られてもしょうがない」と述べた。首相への暴力を容認する発言とも受け取れ、論議を呼びそうだ。(以下略)>
まったくもう、です。この人は2003年、日朝交渉を担当した田中均元外務省審議官の自宅に爆発物のようなものが仕掛けられたときにも、「爆弾を仕掛けられても当たり前だ」と、テロ容認発言をしたことで有名です。つまり、自分の考えと違う人間に対しては、暴力で制裁を加えることを正当化する人間なのです。
これは、ほんとうに危ない。少なくとも、行政のトップにある人間が発していい言葉だとは、私にはとても思えません。それでも、田中均氏の場合は「起きたこと」への放言でした。しかし今回は違う。「これから暴力事件を起せ」と言っているのに等しいではありませんか。
いかに言論の自由とはいえ、人を殴れと示唆することまで言論の自由に含まれていいはずはないのです。
少なくとも、作家を自称している慎太郎氏です。作家が文字を放り出して、直接的に言葉で「人を殴れ」と言うことを、“恥”とは感じないのでしょうか。つまり、この人は作家なんかではない。今でも芥川賞の選考委員を務めていますが、即刻、辞めるべきです。もはや、そんな“恥の感性”さえ失っておいででしょうが。
東京新聞(6月21日付)の「本音のコラム」に、看護師の宮子あずささんが「右翼顔」と題して、鋭い文章を書いていました。
<私は男性に関しては決して面食いではないが、顔の好みははっきりしている。ある傾向の顔がどうにも苦手なのだ。
ここ数年で言えば、石原慎太郎都知事と麻生太郎元首相が嫌いな顔の双へきである。(中略)なんでこんなに嫌いなのかと考えていた折、麻生氏が菅内閣を「左翼政権」と評したというニュースを聞いた。他人を「左翼」と批判する彼はとどのつまりは「右翼」。そーか!私は右翼顔嫌いなのだ。これは非常に腑に落ちた。
差別感を隠さず、力を誇示する。これが私にとっての「右翼」である。麻生氏も石原氏も、人を侮辱し、おとしめるような品のない発言が目立つ。これを繰り返すと、変な顔にもなるだろう。(中略)
はっきり言ってしまおう。思想は顔に出る。(中略)昔反体制で鳴らしたはずのあなた! あなたの顔は大丈夫ですか?>
ほぼ100%、私も同意します。他人を見下し、蔑む。そういう人の口は“への字”に歪む。そうすると、ああいう顔が出来上がる。なるほど、そういうことだったのですね。
「思想は顔に出る」。
宮子さん、ご教示ありがとうございました。長年の私の疑問のひとつが、これで氷解しました。
どうも、選挙や政治の話は生臭くて、それに他人を貶める言葉も飛び交って、あまり楽しいものじゃありません。
沖縄の友人からメールが届きました。沖縄は、梅雨明けしたそうです。沖縄の方たちには申し訳ありませんが、とりあえず今日は、基地の爆音を心からシャットアウトして、青い空と白い雲、澄み切った海を胸に思い浮かべます。
でもやっぱり、あの海と空に、基地は似合わない。
6月23日は、沖縄の「慰霊の日」です。
菅首相は沖縄入りして、戦没者の碑に献花するそうです。そのとき菅首相は、いったい何を語るのでしょうか。青空の中に、沖縄県民の失望の溜め息が吸い込まれていくことだけはないように……。
東京は、なんだか空梅雨模様です。
近所の散歩で、たくさんの花々の写真を撮りました。紫陽花には雨が似合いますが、青空の下の紫陽花も美しいものです。百合の花の豪華さも、青空に素敵です。
これらはみんな、ご近所のお宅の庭に咲いていたものです。軍事基地に花は似合いません。
鈴木耕さんプロフィール
すずき こう1945年、秋田県生まれ。早稲田大学文学部文芸科卒業後、集英社に入社。「月刊明星」「月刊PLAYBOY」を経て、「週刊プレイボーイ」「集英社文庫」「イミダス」などの編集長。1999年「集英社新書」の創刊に参加、新書編集部長を最後に退社、フリー編集者・ライターに。著書に『スクール・クライシス 少年Xたちの反乱』(角川文庫)、『目覚めたら、戦争』(コモンズ)、『沖縄へ 歩く、訊く、創る』(リベルタ出版)など。マガジン9では「お散歩日記」を連載中。ツイッター@kou_1970でも日々発信中。
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