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おかどめ やすのり 1972年法政大学卒業後、『マスコミ評論』を創刊し編集長となる。1979年3月、月刊誌『噂の真相』を編集発行人として立ち上げて、スキャンダリズム雑誌として独自の地平を切り開いてメディア界で話題を呼ぶ。数々のスクープを世に問うが、2004年3月の25周年記念を機会に黒字のままに異例の休刊。その後、沖縄に居を移しフリーとなる。主な著書に『「噂の真相」25年戦記』(集英社新書)、『武器としてのスキャンダル』(ちくま文庫)ほか多数。HP「ポスト・噂の真相」
オカドメノート No.062
政権交代による民主党中心の政権樹立が確定的になるにつれて、霞ヶ関役人たちのドタバタぶりが次々と露呈した。駆け込み天下りはその象徴である。それ以外でも、これまで霞ヶ関が情報をコントロールし封印してきた情報の一部が表面化してきた。これこそ官僚たちを震撼させる政権交代のたまものといえるだろう。それにしても、霞ヶ関の慌てぶり、新政権へすり寄る官僚たちの生存競争と自己保身ぶりは凄まじい限りだ。日本で政権交代なんてあり得ないとタカをくくり、政治家たちの目を盗んで自分たちの権益をあさってきた官僚たちも、これまでの自民党政権と同じやり口では通用しないということだけは漠然と予感しているのだろう。官僚というのはある意味では冷酷なまでのリアリストであり、テクノクラートなのだから、ある意味では当然なのだろう。
民主党が掲げたマニフェストの目玉、高速道路の原則無料化によってもたらされる経済効果は2.7兆円という国土交通省の試算も最近になってようやく報道された。これまでは政権党である自民党に気を使って封印してきたのかもしれないが、官僚が独占する日本の情報は彼ら自身のご都合主義でどうにでもなるという見本だろう。日本への核持込に関する対米密約もようやく外務省の藪中事務次官がその存在を認める発言をしている。そうした中でもっとも驚いたのは、米国政府が今年の4月初旬、米軍三沢基地に配備しているF16戦闘機約40機を早ければ年内から撤収させるとともに、米軍嘉手納基地のF15戦闘機50機余りの一部を削減させる構想を日本側に打診していたものの、日本側は回答を保留し、握りつぶしていたという事実の発覚だ。これは、オバマ大統領の誕生による米国・民主党政権による国防戦略の見直しと予算の削減の一環である。その事実に関しては、政府も当事者である外務省も公式には認めていないのだ。にもかかわらず、こうした情報が出てくるのは、おそらく内部告発のタグイなのだろう。米軍基地をかかえる地元住民にとっては基地負担軽減の重要な情報であるにもかかわらず、相次ぐ密約に手を染めてきた外務省役人にすれば、上から目線で隠すことこそが国益と思い込んできたのだろう。これまでの日本の政治は、官僚に行政を丸投げしてきた。明治政府以来、その歴史の繰り返しだったが、今や霞ヶ関も歴史の過渡期特有の崩壊状況が進行しているということだろう。
もうひとつ驚いたのは、核廃絶への道筋をさぐる賢人会議「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」の報告書草案作成過程において、共同議長をつとめる日本の川口順子元外相、外務省高官らが北朝鮮や中国の脅威を理由に核抑止力堅持にこだわり、オバマ大統領が表明した核の役割を低下させる新宣言の早期実現に難色を示しているというのだ。当然ながら、核の傘にしがみつく日本に対して、「核廃絶への障害」という諸外国の見方が出ている。川口順子氏は、森喜朗の肝いりで外務大臣に抜擢された民間から来た人物だが、在任中は何事も外務省役人まかせの単なるイエスマンだった。はっきりいって無能な大臣の典型。そんな人物が、核廃絶を打ち出したオバマ大統領や非核三原則を提起している日本の民主党政権に敵対するような発言を堂々とやっているのだから、唖然、呆然という他はない。
これも悪あがき外務省の駆け込み作戦のひとつなのかもしれないが、民主党政権はこれまで外務省がひた隠し通してきた密約を情報公開する方針を打ち出している。これまでの自民・公明の反国民的政権に比べれば、革命に匹敵する政治システムの大改革を民主党政権には期待したいし、それが達成されていくかどうか国民目線でしっかりと見守りたいところだ。少なくとも、安倍晋三や麻生太郎のような核武装・改憲タカ派勢力の出番は当分ないだろうから、「マガジン9条」読者も今後4年間は新政権のお手並み拝見といこうではないか。
新政権の「お手並み」は未知数ですが、
まずは変化の大きなきっかけになるのは間違いなさそう。
沖縄をめぐる問題解決に向けて、
いい方向への変化を期待したいところです。
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