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癒しの島・沖縄の深層

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おかどめ やすのり 1972年法政大学卒業後、『マスコミ評論』を創刊し編集長となる。1979年3月、月刊誌『噂の真相』を編集発行人として立ち上げて、スキャンダリズム雑誌として独自の地平を切り開いてメディア界で話題を呼ぶ。数々のスクープを世に問うが、2004年3月の25周年記念を機会に黒字のままに異例の休刊。その後、沖縄に居を移しフリーとなる。主な著書に『「噂の真相」25年戦記』(集英社新書)、『武器としてのスキャンダル』(ちくま文庫)ほか多数。HP「ポスト・噂の真相」

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オカドメノート No.057

慰霊の日に考える沖縄の戦後

 沖縄における敗戦記念日とされる慰霊の日がやってきた。総裁選の前倒しを求める声が強まる中、麻生総理もやってきて追悼の言葉を述べていたが、果たして沖縄県民の心に響いただろうか。最近はNHKが全国中継するようになったので、糸満市の平和記念公園で開催される戦没者慰霊の式典を見た方も多いだろう。戦時中、軍民あわせて20万人以上が戦争の犠牲になったのだ。戦争が終わると同時に、米軍が沖縄を植民地として占領し、極東最大の軍事基地をつくった。今年は薩摩の琉球侵攻1609年から400年。戦前、戦中、戦後を通じて沖縄は常に日本本土の犠牲になり、蹂躙されてきたといっていい。

 72年の沖縄返還によってようやく日本政府からの国家財源が投入されるようになり、沖縄各地は本土並みの空港、道路、港湾、橋梁,箱物などの公共事業ラッシュとなった。しかし、沖縄の人々が豊かになったわけではない。本土資本が儲かっただけだ。いまだに沖縄県民の所得は全国最下位であり、失業率も全国一高い。何かと便利にはなったものの、海が埋め立てられ、自然が破壊され、海も汚れサンゴが死滅する傾向もあちこちで見られる。綺麗な沖縄の海岸はテトラポッドに占有されている。

 その上、カンジンの基地のない平和な島というイメージとは程遠いのが現実だ。最近は米軍、自衛隊とともに、これからも沖縄を軍事基地として最大限利用する方向性も明確に見えてきた。沖縄の基地負担軽減ではなく、強化の姿勢である。日本政府が沖縄については、すべからくアメリカのいいなりで、日米地位協定ひとつにしてもマジメに交渉しない歴史的いきさつがあったためだ。いくら戦争に負けたからといっても、これは日本政府・官僚の怠慢であり、沖縄県民に対する歴史的裏切り行為でしかない。

 そんな沖縄にも政権交代という、黒船に匹敵するような時代の流れがようやく訪れようとしている。少なくとも、民主党を中心とした野党連立政権が実現すれば、対米関係、基地政策は大きく変わる可能性が出てきた。沖縄の米軍基地を永続化・固定化することになる辺野古新基地建設に対しては、民主党幹部の鳩山、岡田、小沢氏は当然としても、自民党寄りといわれる前原元代表までも普天間基地の県外・国外移転を主張している。さらに民主党は対米一辺倒という敗戦以来の外務省の方針を対アジア外交へシフトする方向性も打ち出している。なによりも注目すべきは、日本を植民地扱いしているとしか思えない差別的な日米地位協定の抜本的改革を打ち出していることだ。泡瀬干潟を埋め立てる国家プロジェクトに対しても民主党は異議を唱えている。これなど国費乱費、環境破壊の典型的な愚策だ。沖縄はどうせ変わりっこないと言う締念の中で生きてきた沖縄県民にとって、ようやく希望の光が見えてきたといえるのではないか。

 ところがどっこい!という事実もある。植民地・沖縄の総督きどりの沖縄総領事の発言は相変わらず、沖縄を完全になめきったものだ。現在の総領事・メア氏もひどかったが、次の総領事が内定しているレイモンド・グリーン氏(現在は在日米大使館・安全保障政策課長)もひどいものだ。日本が民主党政権になっても、辺野古新基地建設も、在日米軍再編も、日米地位協定も見直す必要がないと就任前から断言しているのだ。これは、米国と二人三脚で歩んできた外務省もグルなのだ。画期的な核廃絶を訴えたオバマ大統領が就任したものの、沖縄の置かれている現状に対する認識はまだ薄いのだろう。オバマ政権の防衛・外交の側近スタッフはどちらかといえば、ブッシュ・共和党時代からの継続である。

麻生首相は式典でのあいさつで、
「米軍施設の集中は県民の大きな負担。軽減に向けて取り組む」と述べたそう。
その言葉は、沖縄の人たちにどう受け止められたでしょうか?

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