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癒しの島・沖縄の深層

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おかどめ やすのり 1972年法政大学卒業後、『マスコミ評論』を創刊し編集長となる。1979年3月、月刊誌『噂の真相』を編集発行人として立ち上げて、スキャンダリズム雑誌として独自の地平を切り開いてメディア界で話題を呼ぶ。数々のスクープを世に問うが、2004年3月の25周年記念を機会に黒字のままに異例の休刊。その後、沖縄に居を移しフリーとなる。主な著書に『「噂の真相」25年戦記』(集英社新書)、『武器としてのスキャンダル』(ちくま文庫)ほか多数。HP「ポスト・噂の真相」

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オカドメノート No.041

沖縄の米軍基地問題は、チェンジするのか?

 沖縄の新聞二紙の夕刊廃止が決まったが、報道ネタだけは事欠かないようだ。綺麗なサンゴ礁の海にヘドロのような土砂を投入する泡瀬干潟の埋め立て工事の強行実施のニュースにも驚いたが、その後、沖縄本島北部の東村高江の米軍ヘリパッド移設建設計画で沖縄防衛局が座り込みを続ける反対派住民を提訴するという裁判まで始まった。沖縄防衛局側の主張は「通行妨害の禁止」と「テント小屋の収去」の仮処分申請である。反対派との対話を不毛と判断した防衛局の権力的ヤリクチは、米軍統治下での有無をいわせぬ土地強制収容時の刀剣とブルトーザー作戦を想起させる。

 嘉手納基地における最新鋭ステルス戦闘機・F22の配備、原子力潜水艦のホワイトビーチへの頻繁な寄港といった沖縄の米軍基地負担増がひそかに進められる一方、沖縄技術大学院計画の早期実施を促すというアメ作戦も巧妙に展開されている。国家財政の危機だというのに、気前のいい話だ。国家プロジェクトである泡瀬埋め立て同様、これも利権絡みと米軍基地対策であることはいうまでもない。だったら、沖縄の雇用対策やセーフティネットの整備が先決だろうといいたくなる。沖縄はどこまで日本政府に翻弄され続けられるのだろうか。

 筆者が沖縄に来て4年が過ぎた。この間、沖縄基地問題がいい方向で変わることはまったくなかった。むしろ基地の持つマイナス面の露呈だけだった。普天間基地の米軍ヘリが沖縄国際大学のキャンパスに墜落した時には、日米地位協定の抜本的見直しの千載一遇のチャンスだと思われた。しかし、この時も日本の警察による捜査権を介入させないという、米国の治外法権や不平等関係性を改める機会にはならなかった。日本政府が米国と本気で交渉することもなく、米軍の言い分を基本的に丸呑みするといういつものパターンでジ・エンド。

 もともと沖縄に住んで米軍統治時代から米国の横暴の歴史を知るウチナンチューにすれば、ヘリ墜落の事後処理を巡る米軍のヤリクチに対しては怒る気力もないくらい慣れっこになっているのかもしれない。何をいっても変わらない日米両政府に対して深い諦念が横たわっていたり、米軍基地と沖縄の経済はもはや不可分の関係というアメとムチによる長年の洗脳の影響も少なからずあるだろうと思う。

 しかし、よそ者であり沖縄新参者の筆者にとっては、政府の見え透いたやり方に対してはひたすら怒りがこみあげる。その筆者の怒りの矛先は、米国というよりも沖縄を生贄として提供することで日米軍事同盟を維持するという外務省や防衛省官僚たちの歴史的な犯罪性にある。官僚の自己保身、事なかれ主義で、すべからく米国の言い分を丸呑みしてきた日本政府の怠慢が何よりも腹立たしい。米軍の信じがたいほどの傲慢さは日本政府がひたすら増長させてきた結果である。思いやり予算から海兵隊のグアム移転費用を日本政府が負担するというのも、そうした主従関係の反映だろう。

 つい数日前に中曽根外相が沖縄にやってきて、基地に関係する自治体や米軍関係者との会談を重ねた。その会談内容を聞くまでもなく、この外相に何の期待も持てない。

 すべての発言と方針は外務官僚の受け売りであり、単なるオウム返しに過ぎないからだ。情けないのは、仲井真知事がこの外相に対し、「辺古野基地は地元の要望を聞き入れてなるべく海側につくって欲しい」と要望していたが、この知事も恥ずかしいくらい政治力も見識もない。先の訪米にしても、オバマの大統領就任直前という最悪のタイミングだった。このマヌケさといい、成果のなさに恥じ入っている風もない鈍感さにも呆れる。日本政府も米国側も要するに沖縄は金さえ出せば、おとなしく引き下がる連中だとなめきっている心根が見え透いているだけに、なおの事腹立たしい。

 まだ、結論を出すのは全然早いが、オバマ大統領になっても、国務省の日本部長に沖縄総領事のケビン・メア氏が就任する可能性があるという。このメア総領事は日本語の方は達者だが、いっていることは戦後のマッカーサー元帥みたいな傲慢不遜さを持っている人物だ。例えば、「日米地位協定は運用改善で十分」、「普天間は辺野古に移設せよ」、「鳥島射撃場は返還できない」といった調子の発言をこれまでも繰り返している。一介の総領事だというのに、である。このメア氏の移動人事が決まったわけではないが、オバマ大統領と国務大臣・ヒラリーの民主党政権コンビになって、これじゃ沖縄の将来はまったくチェンジしないのではないか。オバマ大統領よ、大丈夫か!

冒頭にある、「沖縄防衛局によるヘリパッド反対派住民の提訴」については、
沖縄県外のメディアではほとんど伝えられていないのが現状。
ブログ「やんばる東村 高江の現状」に詳しい情報がありますので、
ぜひお読みください。
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