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おかどめ やすのり 1972年法政大学卒業後、『マスコミ評論』を創刊し編集長となる。1979年3月、月刊誌『噂の真相』を編集発行人として立ち上げて、スキャンダリズム雑誌として独自の地平を切り開いてメディア界で話題を呼ぶ。数々のスクープを世に問うが、2004年3月の25周年記念を機会に黒字のままに異例の休刊。その後、沖縄に居を移しフリーとなる。主な著書に『「噂の真相」25年戦記』(集英社新書)、『武器としてのスキャンダル』(ちくま文庫)ほか多数。HP「ポスト・噂の真相」
オカドメノート No.040
沖縄の基地問題が今後どう変わるのか、今、筆者の最大の関心事である。その行方は、米国の黒人初の大統領となったオバマ氏が対日、対アジアの外交・軍事戦略をどう展開するかにかかっている。単純かつ感情的なブッシュ前大統領は、イラク、アフガンに戦争を仕掛けるというネオコン戦略をとったので、沖縄の米軍基地は中東への派兵の重要拠点として使われた。現段階でオバマ大統領は、イラクはいずれ撤退、アフガンは逆に軍の増強の方針を打ち出しているが、先行きはまだまだ不透明である。
しかし、はっきりしている事は、オバマ大統領は米国に奴隷として連行され、強制労働させられた歴史を持つ黒人のDNAを持つ人物だということ。奴隷廃止後も黒人差別は凄まじいものがあった。むろん、今でも残っている。どこが、一体「自由と民主主義」の国だよ!といいたくなるような米国のご都合主義的権力行使は遺憾なく発揮されてきた。しかし、その米国に黒人初の大統領が誕生したのだから、差別されてきた黒人やヒスパニック、アジア系だけではなく、何か画期的なことをやってくれるのではないかという期待が高まっているのも頷けるところだ。今、米国経済が100年に一度といわれる未曽有の経済恐慌の様相を呈している中、国民の間に蔓延する閉塞感を打破してくれる新しいリーダーではないかという祈りに似た期待感もあるのだろう。それがケネディ以来という、68パーセントの高支持率に繋がっているはずだ。
そんな出自を持つ大統領の誕生だからこそ、日本と米国から差別され続けた歴史を持つ沖縄に対し、オバマの優しい眼差しが向くことに期待したい。最初から、どうせダメだろうという諦めは封印し、「ネバー・ギブアップ」の精神が必要である。今すぐにでも米国大統領の権限とリーダーシップでやれば、在日米軍再編の見直し、日米地位協定の抜本的改定、普天間基地の代替施設としての辺野古新基地計画の中止は実行できるはずである。国務大臣にヒラリー・クリントン、国防長官にはブッシュ政権時代と同じくロバーツ・ゲーツというのは微妙な人事配置ではあるが、これもオバマが大統領としての威厳、正義、信念、勇気をどこまで発揮できるかにかかっている。
日米の専門家、御用評論家たちは、知ったかぶり風に日米関係は米国にとっての軍事・外交戦略の基軸であり、対日関係は基本的に変わらないという。しかし、米国は大統領が替われば、ホワイトハウスのスタッフも基本的に総入れ替えである。行政の継続とかいいつつ、自分たちの省益や権益漁りを続けて、いつしか腐敗・堕落のシンボルとなった日本の霞ヶ関とはそこが決定的に違う。継続こそが、軍事・外交戦略の基本であるとの言い分は、そうあって欲しいと思っている日本の霞ヶ関のご都合主義の願望と見た方がいい。米国の軍事・外交の方針が変わることで一番困るのは、実は日本の外務省や防衛省だからなのだ。
しかし、チェンジ、変革への強い意志があれば、ホワイトハウスの総意や、大臣、スタッフらの発想をチェンジしていく事は、「イエス ウイ キャン」のはずだ。それでこそ、米国で初の黒人大統領となったオバマの歴史的使命であり、米国の憲政史に名を残せるかどうかも含めて、リーダーシップが試されているのだ。こうなると、日本も一刻も早く政権交代し、足並みをそろえた新政権同士で戦後史をキチンと清算し、21世紀にふさわしい新たな日米関係を再構築すべきである。これは麻生総理と霞ヶ関官僚には絶対できないということだけは断言しておく。
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