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おかどめ やすのり 1972年法政大学卒業後、『マスコミ評論』を創刊し編集長となる。1979年3月、月刊誌『噂の真相』を編集発行人として立ち上げて、スキャンダリズム雑誌として独自の地平を切り開いてメディア界で話題を呼ぶ。数々のスクープを世に問うが、2004年3月の25周年記念を機会に黒字のままに異例の休刊。その後、沖縄に居を移しフリーとなる。主な著書に『「噂の真相」25年戦記』(集英社新書)、『武器としてのスキャンダル』(ちくま文庫)ほか多数。HP「ポスト・噂の真相」
オカドメノート No.028
那覇市内で開かれたパーティ会場で、かねてよりの知り合いである二人の市民運動家に会ったので、一緒に二次会に流れて話し込む。「泡瀬干潟を守る連絡会」の共同代表の小橋川共男氏(写真家)と辺野古新基地建設に反対する市民運動のリーダーでもある真喜志好一氏(建築士)である。二人は石垣空港建設反対の原点ともいえる白保の海を守る運動以来の付き合いなのだという。沖縄が本土復帰した1972年以降も米軍基地は沖縄にそのままソックリ居残り、かつ米軍の自由使用を認める(核持ち込みも含めて)というのが日米両政府の合意だった。元毎日新聞西山太吉記者がスクープした日米合意の裏には密約もあった。そのかわり、戦後27年にわたり沖縄を切り捨てて米国の統治下において来たことに対する贖罪意識もあって、日本政府が本土との経済格差、地域格差を是正するために多額の沖縄対策振興金を投入してきたことは知られている通りである。
それから66年が経過してみると、沖縄には高速道路やモノレール、国道、県道、橋梁、ダム、港湾整備、護岸工事、箱物などの建設が進められて、何かと近代化され便利になったように見える。しかしながら、米軍の危険物の垂れ流し、自然のビーチの消失、赤土の海への流入による汚染、サンゴ礁の死滅といった環境破壊が沖縄各地で進行しているのも偽らざる現実だ。亜熱帯の美しい島は、あちこちで悲鳴をあげているのだ。国の振興資金が注ぎ込まれたといっても、沖縄の経済的自立に向けた支援策ではなく、手っ取り早い土建業へのバラマキが中心だった。
自然の宝庫・やんばるの森は破壊されてダムとなり、宮古島あたりではサトウキビ畑の中まで舗装道路がつくられ、どこもかしこもコンクリづくめである。それでも、いまだに完全失業率は12・5パーセントと日本一高い、給与所得・時間給の平均も全国最低ランクである。ついでにいえば、学力テストも全国で最下位だった。この学力テストが最低ランクだったという事実の裏側には、沖縄に住む人々の経済的な貧しさや離婚率の高さもある。いろんな点でも本土との格差は依然として埋められることなく、今日も米軍は沖縄の海と空を我が物顔で支配しているという現実の下におかれている。
そんな中での貴重な海の生物が数多く生息する泡瀬干潟を埋め立てる工事が目下進行中である。国と県はともかく、いわゆる革新系の沖縄市までが泡瀬の第一区工期を認可したためだ。埋め立てた後の経済効果の見通しすらたっていないズサンな計画である。反対派は、この泡瀬をラムサール条約に登録する運動を進めている。一方の辺野古野新基地建設に対しては、沖縄でジュゴンが生息する貴重な海だけに、国際保護連合(IUCN)が環境アセスメント(環境影響評価)を強く求めている段階だ。にもかかわらず、県知事も名護市長も相変わらず埋め立て建設推進派である。埋め立てによる滑走路や軍港、弾薬装着場などの工事費は総額で8000億円に達するといわれている。その巨額の投資額に推進派は目がくらんだのだろう。しかし、一度埋め立てた海は永遠に戻ってこないことを忘れてはなるまい。
国を中心とした、こうした沖縄の環境破壊の計画に対して、真剣に地道に反対運動に取り組んでいるのが、冒頭の二人を中心とした市民・環境運動派のメンバーたちである。二人とも自然や環境を守ることこそが沖縄のあるべき姿と説く語り部でもある。
さらに、最近はこうした市民運動を側面援助するような、「つくられた依存経済」というタイトルでシンポジウムが沖縄大学で開催された。結局、政府が沖縄に資金を投下するのは米軍基地があるためだが、その投下された資金の大半を回収していくのは本土のゼネコンと政治家なのである。もう、これ以上はだまされないぞ!というシンポジウムの開催は意義深い。これ以上の無駄な公共事業をストップする方向性に、沖縄自身がストップをかける段階に来ているのではないか。二人の話を聞いてそう思った。癒しの島というのなら、豊かな自然環境の中でお年よりも安心して過ごせる医療施設、介護の充実、ドクターヘリの完備、教育制度、雇用の確保といったことに、資金を投入すべき段階にきているのではないか。
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