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癒しの島・沖縄の深層

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おかどめ やすのり 1972年法政大学卒業後、『マスコミ評論』を創刊し編集長となる。1979年3月、月刊誌『噂の真相』を編集発行人として立ち上げて、スキャンダリズム雑誌として独自の地平を切り開いてメディア界で話題を呼ぶ。数々のスクープを世に問うが、2004年3月の25周年記念を機会に黒字のままに異例の休刊。その後、沖縄に居を移しフリーとなる。主な著書に『「噂の真相」25年戦記』(集英社新書)、『武器としてのスキャンダル』(ちくま文庫)ほか多数。HP「ポスト・噂の真相」

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オカドメノート No.020

北京五輪と自衛隊の実弾演習

 北京オリンピックが閉幕した。テロや外国人殺害事件は発生したが、五輪会場を狙った大掛かりな事件が発生しなかったことは不幸中の幸いだったというべきだろう。むろん、中国政府が威信をかけて、警備・治安維持活動を徹底した結果であることはいうまでもない。洞爺湖サミットみたいに、警備が厳しすぎて地元・北京への経済効果はほとんどなかったようだが、国内にチベットや新疆ウイグル自治区といった不安定要因をかかえている以上、それも止むを得ない措置だったかもしれない。外国からやってきた選手団や関係者、報道陣に甚大な被害を及ぼす可能性も十分に予想されたからだ。

 中国政府が、このオリンピックを「民族復興の新たな起点」と位置づけ、施設づくりや選手育成に巨額の国費を投入して力を入れた結果、メダル獲得数においても史上最高の成績を残した。19世紀以来、欧米列強国の侵略を受けてきた中国の近代史を超克するために政府が画策した「民族復興」の国家事業としては一応成功したということになるのだろう。

 しかし、同時に中国にはまだまだ問題が山積していることも世界中に向けて知らしめた。中国が、文化・芸術の総意を結集した開幕式においても、ヤラセや過剰な演出もあった。これなどはまだ笑い話ですむが、メディア統制やインターネット検閲においても、一党独裁の国であることを知らしめるやり方だったし、指定された区域で認められるとされたデモは申請しても一件も認められなかった。国際的には各国の来賓を迎え、天安門事件の負のイメージを払拭したかったのかもしれないが、大国・中国の先行きはまだまだ見えない。人権、自由、民主主義、平等、社会保障、福祉、環境といったいずれの概念も発展途上国のレベルだし、バブルを思わせる経済的急成長の裏側では極端な貧富の差が生じており、さらに五輪による物価上昇や株価の下落といったことで国民の不満もかなり鬱積しているのではないか。

 中国に対するこうした批判は当然としても、では日本はどうなのかといえば、また別問題だろう。新聞報道によると、五輪閉会式の日に東富士演習場で陸上自衛隊が国内最大の実弾演習を一般公開して行なったという。この日、実弾演習で使われた総費用は3億6千万円、見学者は約2万人。敵国の上陸を想定した自衛隊の演習は毎年恒例になっているが、北京五輪の閉会式当日にやったというのは、史上最高の選手団を送ったにもかかわらずパッとしなかった日本選手団によるナショナリズムや国威発揚の不足分をカバーするためのデモンストレーションだったのではないかと疑いたくなる。勘繰りすぎといわれるかもしれないが、自衛隊の幹部連中が考えるのは、しょせんその程度のレベルと見て差し支えない。いまどき、どこの国が、日本列島に上陸して攻めてくるというのか。財政難の中、血税を投入してそんな演習が必要なのか。敵が攻めて来るとすれば、ミサイルか、空爆だろうが。

 それはともかく、今やオリンピックがスポーツの祭典などではなく、国威発揚の政治イデオロギーと無縁ではありえない。それは、かつての日本や韓国がそうだったし、中国を笑っている場合ではないのだ。石原慎太郎都知事が、東京オリンピックの招聘に積極的だが、まだ五輪じたいを経験していない国がたくさんあるのだから譲ってやれといいたくなる。中国嫌いで知られる石原都知事だからこそ、逆に中国のナショナリズム・民族主義の昂揚にあこがれて、東京で再現してみたくなったのではないか。

マスコミ報道やデモへの規制など、
中国の人権状況の「おかしさ」に対する批判は当然あってしかるべき。
けれど、それと同時に、自分たちの国の状況に対する問いかけもしておきたい。
首都の長が、五輪誘致をしきりに主張している今だからなお、そう思います。
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