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おかどめ やすのり 72年法政大学卒業後、『マスコミ評論』を創刊し編集長となる。1979年3月、月刊誌『噂の真相』を編集発行人として立ち上げて、スキャンダリズム雑誌として独自の地平を切り開いてメディア界で話題を呼ぶ。数々のスクープを世に問うが、2004年3月の25周年記念を機会に黒字のままに異例の休刊。その後、沖縄に居を移しフリーとなる。主な著書に『「噂の真相」25年戦記』(集英社新書)、『武器としてのスキャンダル』(ちくま文庫)ほか多数。HP「ポスト・噂の真相」
オカドメノート No.014
「週刊SPA!」の知り合いの若手記者が「泡瀬干潟」特集の取材でやってきたので、筆者もコメントを出した。つい最近、この泡瀬の埋め立て工事を巡ってあらたな展開もあったばかりだし、いい機会なのでこのコラムでも泡瀬干潟のことについて触れておきたいと思う。
この泡瀬干潟を埋め立てての海洋施設やホテル建設などのリゾート計画が持ち上がったのが、今から20年以上前のことだ。しかし、その後のバブルの崩壊や経済環境の変化で、この中部東海岸の海浜地帯に国と県が巨額の建設資金を投入してもペイする経済効果はほとんど期待できないことがわかってきた。同時並行的に計画されたうるま市新港の自由貿易構想の方も、分譲率はわずか2.1パーセントにとどまっており、実現性は薄いのだ。それに加えてこの干潟は、トカゲハゼなどの絶滅危惧種の宝庫であることが確認され、「泡瀬干潟を守る会」の市民運動が全国的に広がったのだ。うるま市新港地区の港湾浚渫工事の土砂を沖合に埋めて人工ビーチを作ろうという案そのものが貴重な環境の破壊でしかないのだから当然だろう。にもかかわらず、自民党の大物利権議員のツルの一声で、03年から埋め立て工事が強行されたのだ。
この埋め立て事業に対する賛否を問う意味もあった04年4月の沖縄市長選では、元社民党衆議院議員で埋め立て見直し派の東門美津子氏が当選したため、この干潟埋め立て計画は当然のように見直しか中止になるものと思われた。いくら国が主体の大型プロジェクトとはいえ、このまま計画が進行すれば沖縄市の負担分も300億円近いものがあり、いずれは市がかかえる財政赤字が市民の負担としてのしかかるのは確実だと思われたからだ。東門市長の大英断で、市民だけでなくトカゲハゼや渡り鳥たちも大喜びでメデタシメデタシ、の結果になるはずだった。ところが、当選した東門市長は、国や県、さらに地元市議会などから強い圧力を受けたこともあって、昨年末に現在進行中の第一区域の工事は容認し、米軍の通信施設と共同使用区域になる第二区域の工事の方だけは中止という「苦渋の選択」(本人談)を発表したのだ。埋め立て反対派から激しいブーイングを受けたのはいうまでもない。
そうした反対の声に配慮したのかもしれないが、東門市長は第二区域の米軍との共同使用協定書に関しては署名しない方針を示していた。埋め立てで増えた地域が米軍との共同使用区域になるため、明らかな基地拡大に繋がるからだ。ところが、沖縄市が署名しないという姿勢を示したことで、いつの間にか沖縄県が代理署名することが明らかになったのだ。この埋め立て事業の推進は、国、県、沖縄市の三者である。間違いなく、国のメンツや権益のために沖縄総合事務局が県の首脳に圧力をかけて根回しした結果だろうと思われる。しかし、最終的に尻拭いさせられるのは沖縄市民であることだけは間違いないのだ。
一方、普天間基地の代替施設として辺野古の海を埋め立てて滑走路付の新基地をつくろうという動きに関しては、まったく逆の動きがある。米軍と防衛省が決めた現行案よりもさらに海側に移動させて埋立地を増やせというのが沖縄県と名護市長の言い分。そこで防衛省がとった方針は、沖縄県を蚊帳の外において、名護市と周辺自治体に補助金をばら撒くというアメ作戦である。県がごねるなら地元をお金で懐柔して基地をつくれ!というわけである。泡瀬と逆の国のヤリクチである。この辺野古にも、泡瀬にも言えるのは、巨額の赤字国債をかかえる政府が、相も変らぬ無駄としか言いようのないゼネコン・土建屋政治を強権的に押し付けている事実だ。当然、権益をむさぼる自民党議員とそれに群がる官僚と大企業、そして地元の一部業者の利害も絡んでいるはずだ。
その一方で、国は福祉や医療費を削減し、消費税値上げまで目論んでいる。洞爺湖サミットのホスト国・ニッポンの福田総理が環境問題を本気で考えているはずがないのは、温室効果ガス削減問題でも世界一排出量の多い同盟国・米国に対して数量規制まで踏み込めなかったこと、そして沖縄・泡瀬や辺野古のサンゴの海を埋め立てるという自然破壊の愚挙そのものが、何よりの証明ではないか。
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