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癒しの島・沖縄の深層

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おかどめ やすのり 72年法政大学卒業後、『マスコミ評論』を創刊し編集長となる。1979年3月、月刊誌『噂の真相』を編集発行人として立ち上げて、スキャンダリズム雑誌として独自の地平を切り開いてメディア界で話題を呼ぶ。数々のスクープを世に問うが、2004年3月の25周年記念を機会に黒字のままに異例の休刊。その後、沖縄に居を移しフリーとなる。主な著書に『「噂の真相」25年戦記』(集英社新書)、『武器としてのスキャンダル』(ちくま文庫)ほか多数。HP「ポスト・噂の真相」

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オカドメノート No.008

5・15沖縄本土復帰記念日に思う

 5月15日といえば、沖縄が日本に復帰した記念日である。今年で36年目にあたる。この日から3日間にわたり沖縄では平和行進や県民集会などのさまざまなイベントが開かれた。県民大会では、主催者代表が「復帰36年を迎えたが、米軍再編で沖縄の米軍基地はますます強化され、事件・事故は後を絶たない」という認識を示し、軍事基地の島から平和な島を目指そうと挨拶した。まさに、その通りである。72年の本土復帰そのものは、米軍が施政権を持っていた植民地時代に比べれば、県民の大方が賛意を表明していると見てもいいだろう。

 しかし問題は、この沖縄の本土復帰にまつわる返還協定において国民を欺く密約があっただけではなく、日本政府は沖縄の米軍基地の自由使用を国家レベルで公認してしまったことだ。沖縄への核の持ち込みも復帰前も復帰後も当然というのが米軍の判断であることは間違いない。部分的に米軍が不必要と判断した基地関連施設の返還は進んだが、基地機能自体はより強化されており、普天間基地移設のかわりに名護市辺野古に近代装備を施した新基地をつくろうという計画が進んでいるのは周知の通り。さらに在日米軍再編により、日本の自衛隊との基地の共同使用や共同軍事訓練も進行している。海兵隊をグアムに移すという計画が進む中、海兵隊の沖縄駐留は軍事的に意味がないという専門家も多い。しかし、日米両政府は有無をいわせず計画を強行する方針で、地元の名護市には再編協力ごほうびともいえる交付金約10億円をばら撒くというアメとムチ作戦に出ている。

 考えようによっては、復帰から36年間、日本政府の沖縄に対する姿勢は一貫していたともいえる。復帰後、本土との経済格差を是正するためにさまざまな沖縄振興策が試みられてきた。道路、橋、ダム、港湾、農業基盤といった社会資本の投下である。ガソリンや泡盛に対する減税やサトウキビ農業に対する補助金などの特例も設けられてきた。その代わり、米軍基地により派生する危険性や戦闘機の爆音に関しては我慢しろという、札束で頬を叩くヤリクチである。これだけ米兵による不祥事や事故が多発しても、政府、外務省、防衛省にも地位協定を日米間の議題にする姿勢はまったく見られない。思いやり予算や海兵隊のグアム移転の費用の掴みガネ的な出し方を見ていれば、何事も米国のいいなりでしかないことがよく分かる。しかも、そうした国策の中で、政治家も役人も権益として沖縄を最大限に利用してきたことをみのがしてはなるまい。

 今年二月の中学生暴行事件の海兵隊員は結局、米軍の高等軍法会議において実刑3年の微罪で、ジ・エンド。フィリピン女性を暴行した容疑で逮捕された米兵も不起訴処分となった。神奈川県で起こった米兵によるオーストラリア人女性に対する暴行事件は刑事では不起訴になったが、民事で300万円の勝訴。ところが、この米兵がすでに米国に帰国していたため、支払いを請求できず、防衛省が肩代わりするのだという。馬鹿げた話である。つい最近、地元紙が報じたところによると、復帰後の74年に伊江島で発生した米兵の住民への発砲事件において、米国側の強い要請によって日本側が裁判権を放棄した覚書が非公式に交わされていたという。まるで、植民地並みの扱いではないか。これまたふざけた話だ。

 これは、72年の沖縄返還の密約以降も沖縄県民は政府にだまされ続けてきた証明ともいえる。復帰から36年、そろそろ沖縄も目先の振興資金、補助金で翻弄される現実から本気で「一国二制度」まで見据えるくらいの自立経済を構築していかないと、沖縄の基地依存体質は改善できないし、政府にだまされ続けて半永久的な軍事植民地への途を歩まざるを得ないのではないか。その前段として、やる気のない嘘つきの政府と霞ヶ関に「NO!」という意思をはっきりと突きつけるために、政権交代を実現させることこそが沖縄県民にとって当面の緊急課題ではないのか。5・15を迎えて筆者はそう実感しているのだが・・・。

36年間、一貫して続けられてきたアメとムチの「だまし」政策に、
NOを突きつけることができるのか否か。
それが、沖縄の人々にだけ突きつけられた問いではないことは、言うまでもありません。
皆さんのご意見もお聞かせください。
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