戻る<<

癒しの島・沖縄の深層:バックナンバーへ

癒しの島・沖縄の深層

080416up

アマゾンにリンクしています

※アマゾンにリンクしてます。

おかどめ やすのり 72年法政大学卒業後、『マスコミ評論』を創刊し編集長となる。1979年3月、月刊誌『噂の真相』を編集発行人として立ち上げて、スキャンダリズム雑誌として独自の地平を切り開いてメディア界で話題を呼ぶ。数々のスクープを世に問うが、2004年3月の25周年記念を機会に黒字のままに異例の休刊。その後、沖縄に居を移しフリーとなる。主な著書に『「噂の真相」25年戦記』(集英社新書)、『武器としてのスキャンダル』(ちくま文庫)ほか多数。HP「ポスト・噂の真相」

オカドメノート No.005

米兵家族万引き事件と日米地位協定

 不定期連載だから、今週はもう書かなくてもいいだろうと思っていたら、やはり書くべき事件が発生してしまった。全国ニュースでも取り上げていたが、沖縄北谷町で日米地位協定の根幹に触れる、沖縄県警と米軍憲兵隊の対立関係が発生した。米国海兵隊員の息子二人が万引き行為で衣料品店に現行犯で逮捕されたものの、その直後に駆けつけた米軍の憲兵隊が身柄を引き取り基地内に連行してしまったのだ。しかも、基地内で二人は釈放されてしまったのだ。店の通報で駆けつけた沖縄県警は一足遅れた形となったわけだが、米軍の憲兵隊に犯人の事情聴取を拒否されたことで捜査に支障が出たとして米軍側に抗議を表明し、経緯の説明を求めている。

 現行の日米地位協定によれば、米軍側が沖縄県警に二人の身柄を引き渡すという譲歩をしてこない限り、事件はこのまま闇に葬られることになる。この手の事件が頻発しているにもかかわらず、日本政府の姿勢は日米地位協定の見直しは必要がなく、運用改善で十分だと繰り返すだけ。この事件ひとつ見ても、どこが十分だというのか、理解不能の政府答弁である。基地外で起きた事件は日本国内の法律で裁くというのが、法治国家としての最低条件ではないのか。植民地じゃあるまいし、こんな不合理なことが許されていいのだろうか。だいたい、基地外にアパートを借りて住んでいる米兵には住民票を提出する必要もなく、いったいどんな人物が民間住宅に住んでいるのか、実態すら掴めていないのだ。しかも、北谷町だけで、米軍の民間住宅は3割も増加しているというのだ。地元住民にしてみれば、恐怖にさらされた日常である。こんな馬鹿げた現実がまかり通っているのも、日米関係絶対化、米国追従政策を不文律としてきた外務省の無策、外交能力の決定的欠如に由来することは明らかである。

 この事件が発覚する前日に、エドワード・ライス在日基地司令官が、思いやり予算に対して、「日本や地域全体の安全保障にとって良い投資だと考えてほしい」と述べ、日米地協定に対しても「どの国のホスト国側にとって最も有利な協定。改定すべきだとは思っていない」という趣旨の講演をやっている。それは米国がいう話ではなく、日本側が判断することではないのか。米国側の僭越かつ傲慢な意識丸出しの講演内容ではないか。

 日本政府の大甘の思いやり予算のおかげで、お隣韓国でも、米軍駐留費の負担を現行の4割から5割への増額を韓国政府に要求しているという。韓国にしてみれば、まったくはた迷惑な日本ということになる。こんな、当たり前の常識が通用しない日本政府なんてもういらない、早く政権交代せよと何回でも言っておきたい。

現行犯逮捕された容疑者が、事情聴取も受けないままにあっさりと釈放される。
そんな状況が、「ホスト国にとって有利な内容」とは!
こんな「ばかげた現実」に、そしてそれを良しとする日本政府に、
もっともっと私たちは怒っていいはずです。
ご意見フォームへ

ご意見募集

マガジン9条